柳家三三×読売日本交響楽団

僕をオトナにしたクラシック

柳家三三のプロフィール写真 (C)Renji Tachibana

●柳家三三(やなぎや・さんざ)/1993年柳家小三治に入門。2006年、真打昇進。落語界の次世代を担うエース。常に進化し続ける本格派の落語家。

更新日:2019年5月7日(火)

今月の名曲:
シューベルト 交響曲 第7番『未完成』

最終回! ご愛読ありがとうございました!

 約二年間お付き合いいただいた連載は今回で最終回です。はたして私は、ちょっとは大人になれたのでしょうか。
 クラシック音楽との出会いは十三、四年前だと思います。それ以前はハッキリ申し上げて興味ゼロでした。ある日、映像で拝見したチェリスト・徳澤青弦さんの、バッハ作曲『無伴奏チェロ組曲 第1番』に「おおお……!」と思ったんです。何だかわからないけれど、音楽でこの感情が湧いたのは中学三年生でザ・ブルーハーツに出会ったとき以来でした。この時点ではまだ子供の感想だな、うん。
 その後、さまざまな実演や録音でふれた演奏は、私の心を潤してくれました。堅苦しく退屈という先入観ばかり抱いていたクラシック音楽にこんなに夢中になるなんて、自分でも信じられませんでした。さらに驚いたのは、演奏家や指揮者、ときには作曲家など音楽にたずさわるかたの姿勢や言葉が、高座でおしゃべりする落語家としての私に、とても多くの教え、ヒント、勇気や共感を与えてくれたのです。私が現在、高座を務めるときにお客さまが「今日の〇〇という噺は本当に面白かったなあ……ところで、演者は誰だったっけ?」くらいの感想をもってくださったらと思うのは、あるヴァイオリニストのエピソードに心打たれたからです。高名なかたですが、自分が称賛されるための演奏ではなく、その曲が最高に輝くことに奉仕する演奏でありたい……。ね、素敵じゃありませんか?
 大人になるかならないかではなく、クラシック音楽を通じた出会いや経験はこれまでも、そしてこれからも、私を育ててくれるはずです。皆さんも長いおつき合いをいただき、ありがとうございました!  ではまたいつか。


柳家三三のこの2年間、そしてこれからをクラシックの名曲に例えると…
シューベルト 交響曲 第7番『未完成』

そのココロは!

 ――完全にタイトルだけですけど。今までも、これからもずっと「不完全だけれど魅力的」な芸人でいられたら楽しいだろうなぁ。

シカゴ響などで活躍! レーニンガ―が振る 〈未完成〉〈運命〉〈新世界〉
読響サマーフェスティバル2019
《三大交響曲》
2019年8月18日(日)14:00
東京芸術劇場 コンサートホール


料:
S席7,500円
A席5,500円
B席4,500円
C席4,000円(税込)

問:読響チケットセンター
  tel.0570-00-4390
 (10:00〜18:00)

〈出演〉
マルチェロ・レーニンガー
(指揮)


〈曲目〉
シューベルト:
 交響曲 第7番「 未完成」
ベートーヴェン:
 交響曲 第5番「 運命」
ドヴォルザーク:
 交響曲 第9番「 新世界から」