更新日:2017年4月3日(月)
はじめまして、柳家三三と申します。いつもは舞台(われわれは“高座”と呼びますが)で落語をおしゃべりしていますが、ときどき客席で楽しむ立場、といっても落語じゃありませんよ。クラシック音楽のコンサートに足をはこぶ機会が多いのです。
そんなワケで、今月から私がクラシックの名曲をご紹介…したいところですが、何の楽器もできないばかりか、楽譜すら読めない素人です。仕方ありません、少しでも音楽に関わりのある話題でお楽しみいただければ幸いです。
落語会の開場時間のBGMはたいてい“寄席囃子”と呼ばれる三味線音楽ですが、私が好きだとご存知でクラシックを流してくれる主催者がおいでです。最近でこそ私に相談しつつ常識的な選曲をしてくれるようになりましたが、忘れもしない最初の試みでかけてくれたのがブラームス《交響曲第一番》。腹の底に響くティンパニの連打で始まる、苦悩に満ちたような重厚な序奏が、これから“楽しい落語会が始まりますよ”という雰囲気にこれっぱかりもしてくれません。音響室に飛んでいって別の曲に変えてもらったのは言うまでもありません。
美しい旋律が次々に現れる希望に満ちた最終楽章まで聴き終えると、きっと大きな満足感を味わえますが、この曲が落語会場に流れたかと思うと……ちょっと笑ってしまいますよ。
――どだいムリのある設定ですけどね(笑)。交響曲の本格派、直球ど真ン中というイメージがあるので、落語界のスタンダードな演者の十八番ということで「三代目 三遊亭金馬の『藪入り』」とさせていただきましょう。