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金森穣

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東洋と西洋の狭間、舞踊のルーツ。金森穣が今あらためて追及する身体表現とは。

10年を経てNoismが踏み出す新たな一歩。舞踊の根源へと立ち返る『ASU〜不可視への献身』

日本初の劇場専属舞踊団として設立して10年。Noismが迎えた11年目の新シーズン、その幕開けを飾るのは新作『ASU〜不可視への献身』。10年間の集大成となった劇的舞踊『カルメン』が大きな反響を呼んだ後、芸術監督・演出振付家の金森穣が新たに提示する身体表現に注目が集まる。(取材・文:田中晶江 撮影:佐藤雄哉)

PROFILE

金森穣(かなもり・じょう)のプロフィール画像

● 金森穣(かなもり・じょう)
演出振付家。舞踊家。りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督、Noism芸術監督。ルードラ・ベジャール・ローザンヌにて、モーリス・ベジャールらに師事。ネザーランド・ダンス・シアターU、リヨン・オペラ座バレエ、ヨーテボリ・バレエを経て2002年帰国。2003年、初のセルフ・プロデュース公演『no・mad・ic project 〜 7 fragments in memory』で朝日舞台芸術賞を受賞し、一躍注目を集める。2004年4月、りゅーとぴあ舞踊部門芸術監督に就任し、日本初の劇場専属舞踊団Noismを立ち上げる。海外での豊富な経験を活かし次々に打ち出す作品と革新的な創造性に満ちたカンパニー活動は高い評価を得ており、近年ではサイトウ・キネン・フェスティバル松本での小澤征爾指揮によるオペラの演出振付を行う等、幅広く活動している。2014年6月より新潟市文化創造アドバイザーに就任。平成19年度芸術選奨文部科学大臣賞、平成20年度新潟日報文化賞など受賞歴多数。

● Noism1(ノイズムワン)
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館が舞踊部門の芸術監督に金森穣を迎えたことにより、日本初の劇場専属舞踊団として2004年4月設立。新潟を拠点として、日本国内をはじめ海外8カ国11都市でも公演を行う。2009年モスクワ・チェーホフ国際演劇祭との共同制作、2011年サイトウ・キネン・フェスティバル松本制作のオペラ&バレエにカンパニーとして参加。設立から10年を経た今なお国内唯一の公共劇場専属舞踊団として、21世紀日本の劇場文化発展の一翼を担うべく、常にクリエイティブな活動を続けている。第8回朝日舞台芸術賞舞踊賞受賞。 Noism Web Site

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新作は以前から公開を望む声のあったNoism独自の訓練法に基づく作品『Training Piece』と、アルタイ共和国に2千年以上前から伝わるカイ(喉歌)を音楽に用いた『ASU』の2部構成。

「実は前作『カルメン』に取り組んでいた時から、もっと抽象的なもの、言語化できないものに強烈に飢えていたんです。『カルメン』では演劇と舞踊の垣根なく総合芸術としての舞台作品を作りたいということで、役者の方にも出演して頂いて物語性のあるものを創作しました。一方で、舞踊としての可能性、非言語表現の可能性も信じています。そこにもう一度フォーカスを当てて舞踊作品を作りたい、それが一番の動機です」

――― Noismの身体性の秘密が明かされる 『Training Piece』

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「Noismのトレーニングは我々がさらに発展、飛躍していくための大切な道具みたいなもの。基礎はバレエにあるけれど、東洋と西洋の身体文化の狭間で我々なりのバレエを見出そうとしているんです。西洋の模倣ではなく東洋の文化としての要素や考え方、身体感覚を盛り込んでいくことが重要。10年間かけて築き上げてきたのがNoismメソッドでありNoismバレエ。これを見てもらうと、このトレーニングをしていれば鍛えられるよねっていうのがわかると思います(笑)」

――― 舞踊の根源へと立ち返る 『ASU〜不可視への献身』

「“舞踊とは”と問うと、舞踊はどのようなところから生まれたんだろうとか、その精神性はどこにあるんだろうとか、すごく根源的なところに帰結していくんです。Noismのこれからを考える時、西洋発信の12音階やクラシック・バレエの型のような法則に則らない、形式化や言語化ができないもっと野性的な、根源的なところに降りて行くことも必要なのではないか。そう考えると、アルタイ共和国の喉声がすごくアンテナに触れたんです。感覚的で野性的な何かが東洋の文化の根源にはあるのではないか、そんな気がします。あらゆるものが視覚化される情報社会に対する我々なりの表現、あるいは反抗としての“不可視への献身”。『カルメン』で初めてNoismをご覧になって、こういうの好きかもと思って頂いた方は衝撃を受けると思います。でもそこが重要。『カルメン』とは違うけれど、この作品にも感じるものがあるなって思って頂けることが、我々が一番目指していること。みなさんに飽きられないように必死なんです(笑)」

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“本番の舞台でしか見えないものがある”

「新作を作る過程は、最初は自分の妄想の世界。それを具現化する作業は他者と向き合わなきゃいけない大変なプロセス。でも自分の妄想が人と関わることで飛躍した時が一番楽しい。本番も、舞台上の彼らが観客の前で、稽古場では見られなかったような表現をする瞬間が一番興奮します。舞台は本当に一期一会。いろいろな条件が重なって、時々あるんですよね、今日のはすごかった!っていうのが。その一瞬を求めて日々鍛錬を重ねています。」

“目指しているのは100年後も続いていくもの”
 
「今までの10年は我々Noismの可能性を指し示すための10年。次はいよいよその価値、真価が問われる10年だと思っています。100年続いて欲しいと思ってやっていることですから、10年で一喜一憂してはいられない。11年目の新シーズン、初心に戻って、根源に立ち返ってやっていきたいなと思っています」

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