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TOKYOハンバーグ

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TOKYOハンバーグの代表作を5年ぶりに再演

気を遣うというのは、隠すという事ですか?

大西弘記 主宰・TOKYOハンバーグの今作は、劇団の代表作を座・高円寺と劇作家協会のプログラムとして5年ぶりに再演する。2011年、原発事故で経済産業大臣が福島原発付近を「死の街」と発言した日。福島から離れる事を迷いながらもある街に疎開してきた親子の姿を描く。故郷を失ってしまうという事はどういうことなのか。作品を代表して大西と主演の清水直子、前回から続投の藤原啓児、団員の吉本穂果に話を聞いた。

PROFILE

大西弘記(おおにし・ひろき)のプロフィール画像

● 大西弘記(おおにし・ひろき)
6月29日生まれ、三重県出身。 1999年〜2004年伊藤正次演劇研究所に入所し演劇を始める。2006年に自らの作品を上演するため企画・制作の母体となるTOKYOハンバーグを設立。社会問題を取り扱い、強い普遍性と現代リアルのバランスを保つ丁寧な劇作・演出スタイルでファンを魅了している。外部への書下ろし、演出も数多くこなす。2015年『最後に歩く道。』(サンモールスタジオ選定賞最優秀演出賞を受賞)、2018年『へたくそな字たち』(第24回劇作家協会新人戯曲賞最終候補)、2019年『宮城1973-のぞまれずさずかれずあるもの』(第25回劇作家協会新人戯曲賞最終候補)。『東京2012-のぞまれずさずかれずあるもの』テアトロ新人戯曲賞を受賞。2020年『風の奪うとき』第7回せんだい短編戯曲賞最終候補。

吉本穂果(よしもと・ほのか)のプロフィール画像

● 吉本穂果(よしもと・ほのか)
2000年3月29日生まれ、福岡県出身。 2009年福岡の市民劇にて演劇をはじめる。2020年3月桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻卒業後、6月にTOKYOハンバーグワークショップオーディションを受講して入団。舞台を中心に活動中。近作に『最後に歩く道。』、『Don’t say you can’t〜できないなんて言わないで〜』などがある。

清水直子(しみず・なおこ)のプロフィール画像

● 清水直子(しみず・なおこ)
5月27日生まれ、三重県出身。 劇団俳優座1992年入団後、多くの舞台や映画・ドラマなどで活躍中。2012年度「第20回読売演劇大賞・女優賞」受賞。近作に映画『つぐない』、WOWOWドラマ『悪党〜加害者追跡調査〜』、舞台『雉はじめて鳴く』、舞台『七人の墓友』など。

藤原啓児(ふじわら・けいじ)のプロフィール画像

● 藤原啓児(ふじわら・けいじ)
5月27日生まれ、三重県出身 劇団スタジオライフ所属34年目を迎えた。劇団活動に加え外部の舞台や映画、CMなど幅広く活躍中。近作に映画『国民の選択』、朗読劇『言葉の奥ゆき』、イベント『60-60の会』などがある。

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故郷を失ってしまう事はどういうことなんだろう

―――2012年の初演から2014年、2016年と4度目の再演になります。劇団の代表作でもあり大西さんの原点のような作品ですね。

大西「僕の故郷・伊勢を舞台に2011年の震災を取り扱っていますが、現在進行形の問題でもあります。“故郷を失ってしまう事はどういうことなんだろう”、観に来てくださるお客様と共有できればと思っています。震災から10年という区切りもあり、実は今回の再演でしばらく上演はないかもしれません」

―――節目の再演なのですね。作品としては少ずつ変化しているそうですが、再度本に向き合って改めて気が付いたことは?

大西「震災から10年が経ち、まだそこに帰れない人たちがいるということ、まだ前に進めないということ、その“まだ”がいつまで続くのだろうか……という部分が、10年前に僕が想像した10年後と同じ状況のままになっています。今回はもっと深く伝えたいですし、紡いでいければと思っています」

伊勢弁が飛び交うステージ

―――物語は伊勢にある喫茶ホットラインを舞台に、地方ならではのコミュニケーションや人との距離感が描かれる。
主演・海咲信子役を演じるは、読売演劇大賞 女優賞など受賞歴がある劇団俳優座で活躍中の清水直子。劇団TOKYOハンバーグは初出演、2016年の再演を観劇していたという。


清水「母が伊勢の人間で、伊勢弁が飛び交う伊勢の作品は初めて観たので、何とも言えない懐かしいような気持ちになりました。震災の時のこともすごく覚えていますし、すごく心に残る作品でした。今回台本を読んで、強く背中を押すのではなくて寄り添っている感じがあり、それがすごくいいなと思っています。ホットラインの方々のやさしさに家族がどう向き合うのか、震災や原発のことを描いていますが普遍的なメッセージを感じますね。
 私が演じる信子は、伊勢に疎開してくる親子で娘が2人いるお母さん。最近母親役が多くなってきました(笑)。愛する存在である子供がいるありがたさを感じる役で幸せだなと思います」

―――箕田定役を務めるのは劇団スタジオライフの藤原啓児。前回と同様、畳屋のおっちゃんを演じる。伊勢出身でもある藤原はとても思い入れがある作品と明かす。

藤原「本作は10年に渡る原発事故の物語ですが、人間ドラマがベースになっていて一切原発に対して賛成とか反対とか言っていないんです。人が寄り添い求め合い許し合う人間ドラマの中で、その背景に押し付けがましくなくふわっとメッセージが浮かび上がってくるような物語。
 僕はこの作品を筆頭に大西ワールドのそういうところがすごく好きなんです。前回と同じく畳屋のオジサンを演じますが、箕田なりに原発事故後を受け止めて一生懸命いろんなことを考え、人として寄り添おうという想いが溢れている役柄です。
 そして喫茶店に登場する人物は伊勢の人間の特質をちょっと捉えていると思うところがあって(笑)、地元の人間であればわかるような、実は伊勢の人間ってちょっとクセがあるんです。伊勢には伊勢神宮があり、おもてなしの精神が800年近く続いている地域。その地域性みたいなものを上手くドラマの中に取り込んでいるなと、そこがまた惹かれる部分でもあります」

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―――その箕田役を再度演じるあたり、今作で進化させるなど考えていることはありますか?

藤原「あまりそれを考えすぎると僕は糸の切れた凧みたいになってしまう(笑)。僕は伊勢出身ですからこの本は母国語なんですよ。母国語で芝居ができるということは嬉しくて。ニュアンスから何から自分の中で考えてなくても言葉がどんどん溢れたりするんです。今回もそんなところを素直に楽しめたら。その結果、5年前の自分とはまた違った感覚で“みのやん”という役を楽しむことができるか、生きることができるかな、なんて考えています」

―――稽古場では芝居以外でも伊勢の言葉が飛び交いそうですね。

大西「そうですね、14人の登場人物がいて3人が福島弁で、1人が標準語、あと10人は伊勢弁です。ちょっとでも方言指導の一環になればと、ダメ出しやチェック出しも全部伊勢弁でやっていますね。藤原さんともう1人伊勢出身の俳優・俳優座の脇田さんがいるので、そういう面では方言が飛び交う稽古場になると思っています」

―――残りの方々は圧倒的な人数の伊勢弁に引きずられそうですね。

清水「その前に私たちは福島弁を攻略しなければいけないのよね(笑)」

―――その信子の娘で次女を演じるのは劇団のフレッシュメンバー吉本穂果。ハンバーグ本公演としては2作目となる。

吉本「大西さんの本としては3作目になります。大西さんの作品は、お2人が仰ったように人の温かさとかがとても沁みるお話が特徴的で、すごく安心できます。
 このお話は震災のことを扱いますが、自分は当時小学生で福岡に住んでいたのでとても遠くて揺れも無かったので実感がなくて。当時のことをリアルに思い出せないので1から色々集めていって、その中から南相馬出身の女の子を作り上げていけたら。方言もあるのでこれも頑張らないと! 大先輩がお母さん役なのですごく嬉しいです、よろしくお願いいたします! 」

清水「よろしくお願いいたします!」

大西「ホットラインという喫茶店が出てきますが、実際にある喫茶店で故郷に帰ると必ず行く場所なんです。おしゃれな喫茶店ではなくて個人経営のこじんまりしたところ。藤原さんが演じる畳屋の箕田さんのモデルの方が実在したり、他にもモデルの方が何人かいて、知っている人がこの物語を観るとなんとなくわかるかもしれません」

タイトルの裏側にある意味とは

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―――今回も魅力的なキャストが揃いました。

大西「清水さんはずっと前から素敵な女優さんだなと思っていまして、主演として作品のど真ん中に立たなければいけない役なので来て欲しかったんです。ダメ元で声をかけたら快くOKいただきました。2016年上演版を観ていますと聞き、すごく嬉しかったですね。
 藤原さんは前回出演してくださって、伊勢出身の方ですし大先輩ですけど僕と接している時は何か近所のおっちゃんみたいで(笑)、仲良くさせて頂いていて。今作ではバイプレーヤー的なすごく重要な役どころを演じていただきます。藤原さんのザ・伊勢は見どころだと思います。
 そして吉本はハンバーグメンバーとして1年目。色々な現場に連れてくることによって、彼女の中で色々学ぶことがあるだろうし、それを表現することに活かしてくれればなと。劇団と言っても今は2人きりで大なり小なり一緒に責任を背負う事が仕事だと思うんです。僕が抱えている責任を全部彼女に背負わせることはしませんが、ここに来ることも責任だし、ここに来ることによって作品に向き合っていくことも責任。このパスを彼女がどうキャッチをするか、どこにいても成長していくんだろうなって思っています」

―――撮影中に藤原さんが作品のことを『愛、哀、相(あいあいあい)』と呼んでいまして新鮮でした。色んなアイが描かれるということですね。

大西「そうですね、愛情の愛も、哀愁の哀も、相手があった上で芽生える感情で、その対象がその人にとって誰なのか、どういう境遇にいるのかとか。タイトルはぱっと思い浮かんで、これを書いたらみんなが僕のことをロマンチストだと言い始めるという(笑)。そんなつもりはなかったんですけどね。
 タイトルはけっこう重要で、なかなか聞かないタイトルだけど心に残るような。このタイトルからこの作品の内容は想像できませんが、観終わった後このタイトルの裏側にある意味を感じてくださるんじゃないかなと思います」

―――再演ですが新たな作品になりそうですね。

大西「たくさんの本を書いてきましたが、何度でも向き合いたいという想いもあります。でも再演する時って全部同じようにはいかなくて、初演が悪かったというわけではなく、同じ作品をやるからこそ新しいものを作っていきたいという想いもあります。その中でも1人2人は藤原さんのような代りが効かない方もいらっしゃいます。今回も素敵なキャストが揃い嬉しいですね」

伊勢の伝統行事を東京の小劇場で再現しているのはたぶんTOKYOハンバーグだけ

―――そしてこの物語には欠かせない、ある伝統行事が描かれます。

大西「伊勢神宮には天照大御神という神様が祀られていまして、20年に1回お宮を建て替えるんですよ。敷地内に2つお宮があって神様が引っ越しをします。空いたお宮を取り壊してまた20年かけて新しいお宮を建てるのですが、そのお宮を作るにあたって木材や岩を運ぶ色んな行事があるんです。その街によって違う半被を着て“木遣り唄(きやりうた)”を歌いますがそういう部分を取り入れています。ただ単にお祭りを見て欲しいではなくて、物語の中で重要なシーンになります。このお祭は僕のアイデンティティであり、それが失われていくことがどういうことなのか、毎回考えます。どこの地域でも大なり小なりご先祖様が大事にしてきた文化や歴史があって、原発の影響でそこに踏み込めなくなってしまった、行けるけど住めないことがどういうことなのか。被災だけであれば人間はもう一度立ち上がって復興していくことをずっとやってきているんです。だけど原発がああなってしまった事と被災はまったく別のこと。
 それをしっかり見つめないとまた同じことを繰り返すのではないか。10年たって僕らは何が変わったのか。何が変わらなければいけないのか。演劇というフィルターを通して訴えることで観た人の中で向き合える作品になれば。だから演劇って良いなって思うんです」

―――2021年版としてご自身のテーマや楽しみにしていることは?

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清水「今稽古に入る前の段階で台本を読んで色々想像しています。夫が亡くなってから3人でどう生活してきたのか、この家族の中で子供たちはお母さんの手料理で何が好きなんだろうとか、書かれていない背景を想像するのが楽しくて。さらに稽古でみんなで作りあげることが楽しみです。なのでテーマは『楽しみたい!』ですね。
 最初の場面で自分の家が流されている景色を見て、その日の夜はどんな会話をしたのか、何も話せなかったのか、どんな時間を3人で過ごしたのだろうとか、辛いことも多いですがそこに至った時間ももっと深く掘り下げたいと思います」

吉本「私自身のテーマとしてはやはり作品を楽しむことです。実際経験していないことなので不安ではありますが、ちゃんと自分がそこに存在したいなと思っています」

藤原「テーマというほどではないですが、いい意味で前回の『愛・哀・相』を忘れるところから始めようかと。もう懐かしくて大好きな作品だったので結構覚えていまして、台本を読んでいると前回の声や言い回しが聞こえてくるんですよ。
 だけど今回僕以外は皆さん新しく入れられる方ばかりなので、聞こえてくるものは全然違うはず。どこまで丁寧に聞いて箕田という役を自分の中で想像していけるのか、それが今回の僕の中での課題になると思います。みなさんから聞こえてくる想念が変えてくれると思うのでそこに素直に乗っかれるようにしたいですね」

大西「今年、TOKYOハンバーグは15周年。このタイミングで座高円寺のプログラムとしてこの作品を選んでいただいて、作品を世に出していくには良い準備ができていると思っていますし、面白いものが作れる自信はあります。15年本を書いてきて、心の栄養になるようなことをやりたいという気持ちでやってきましたが、特に今作に関しては僕っぽい、TOKYOハンバーグにしかできない本だと思っています。人の心に寄り添っていく物語です。作品のテーマに何かを感じていただき、お客様と一緒に共有できたらと思います。

(取材・文&撮影:谷中理音)

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公演情報

「『愛、あるいは哀、それは相。』」のチラシ画像
TOKYOハンバーグProduce Vol,30
『愛、あるいは哀、それは相。』


2021年6月13日 (日) 〜2021年6月20日 (日)
座・高円寺1
HP:公演ホームページ

前売・当日:4,200円
ハンバーグ割引 前売・当日:3,800円 ※公演スケジュール欄、◎の部
(全席指定・税込)

【ご注意】
※公演により一部出演者が異なります。【公式HP】を必ずご確認の上、ご購入いただきますようお願いいたします。


こちらのチケットは、[電話予約]もご利用いただけます。
カンフェティチケットセンター
0120-240-540
(平日 10:00〜18:00)
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