home  >  WEBインタビュー一覧  >  徳尾浩司

PICKUP
徳尾浩司

キメ画像1

やっぱり地球が一番! 火星に派遣された調査隊員のミッションは?

6年ぶりに集結、とくお組新作舞台はSFコメディ

6年前から新作公演をおこなっていなかったとくお組が、ついに劇場に集まる。主宰の徳尾浩司はこの6年の間に、ドラマ『おっさんずラブ』や『私の家政夫ナギサさん』などで大活躍。ほかのメンバー達はそれぞれの時間をすごし、ほぼ会っていなかったそうだ。それでも稽古場にそろうと6年前と変わらない空気が流れるというのが、とくお組らしい。仲の良い劇団員たちによる非日常のなかの日常的な笑いは、きっと6年ぶりの観客にも、初めての観客にも、どこか居心地の良さを感じさせるだろう。このたび脚本・演出の徳尾に、劇団にて新作『林檎の軌道』を上演する心情や、劇団という場所、劇団員との関係など、演劇のルーツについて聞いた。

PROFILE

徳尾浩司(とくお・こうじ)のプロフィール画像

● 徳尾浩司(とくお・こうじ)
1979年4月2日生まれ、大阪府出身。 とくお組主宰。高校の文化祭で演劇の脚本を書いたことをきっかけに脚本作りの楽しさと演劇の面白さに気づき、大学では演劇研究会に所属。卒業後に「とくお組」を結成。2013年、NHK連続ドラマ『ハードナッツ!』以降、さまざまな映像脚本を手掛ける。近年は『おっさんずラブ』(テレビ朝日)、『私の家政夫ナギサさん』(TBS)、『恋はDeepに』(日本テレビ)などがある。『おっさんずラブ』は第97回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞を受賞。最近の劇団以外の舞台は『オレたち応援屋!! On Stage』、『GACHI〜全力entertainment 4U』、『3人のプリンシパル』ほか。

ドラマでの活躍を経て、6年ぶりの劇団公演!

―――とくお組の本公演は6年ぶりですね。この6年でみなさんの変化はありますか?

「まったく変化してないです! いや、びっくり! 見た目も変わってないんですよね。年を取ったぶんテンションが上がりきらないとか、動きが鈍いとかはあるかもしれないですけど(笑)。でも前向きに『やろうやろう』という感じだったので、ずいぶん気持ちが楽になりました。やっぱり毎年一本絶対やるとなると、仕事をしているメンバーも多いので苦しかった。でも時間的には今の方が計画を立てやすいので、離れていたメンバーも出ることになって、楽しみです」

―――6年の間に劇団員のみなさまそれぞれ変化があると思いますが、作品に影響しそうでしょうか?

「ちょっと大人になっている部分はありますね。会ってしゃべると全く変わらないんですけど、6年も休むと、30代の半分ぐらい、演劇をしてない時間としてすごしているんですよね。そのぶんを社会人として生活してたりする。年齢というのは大きいかな。この年齢でやれるお芝居ってなんだろうと考えましたね。特にメンバーの堀田君はサラリーマンなんですけど、この6年で会社での地位が上がって、チームを管理したり、部下に頼られる先輩になってきていたりする。だからお芝居でもそういう立ち位置にしてみたりしようかなとか。劇団というものは年齢に合わせて成長していいし、社会的な立ち位置が変わった役どころもできるかなと思います。お客さんも年齢を重ねて観てくださっているので」

―――久々の劇団公演ということで、初めてとくお組を観る方もいると思います。とくお組の特徴は?

「今回は火星が舞台ですが、ちょっと変な世界に生きている、身近な人たちを描いています。私たちの生きている世界と地続きだなと思って、笑って元気になってスッキリして帰っていただけたらいいですね。
 あと、ドラマと近いところで言うと、少しだけ未来の理想を取り入れるようにしています。たとえば『おっさんずラブ』だと同性が同性を好きになることがもう当たり前の世の中になっているところで起きる恋愛の話だし、『私の家政夫ナギサさん』だとおじさんが家政夫をすることが当たり前にある前提で仕事の悩みがある。そんなふうに、ほんの少し近い将来がこうだったらいいよねと、当たり前に描くことで観ている人の気持ちが楽になればいいと思っています。劇団でもSFチックな未来の話をやることが多いんですけれど、そこには『未来なのにここは全然変わってないじゃん』という皮肉もあれば、『やっぱりこの辺はアップデートされてすごくいい世の中になっているんだな』という理想もある。あったらいいなと目指すちょっと先の世界を、ドラマでも劇団でも描こうとしています」

火星を舞台にした、普通の人たちのおはなし

―――なぜこの設定なんでしょう!?

「何年も前から宇宙エレベーターに興味があって。かといってSFを真正面からやるというよりは、エレベーター感覚で気軽に宇宙に行けるような時代に地道に働く人たちの話にしたかった。なので、火星にある調査基地を舞台にしました。その基地が不要になり、解体するために火星に行った第2次調査隊の話です」

―――火星の基地を壊すんですか? もう少しあらすじを詳しく教えてください!

「まず、先に火星に行った第1調査隊から『地球人が住めるようにはできません』という報告があったので、ではもう用済みの基地を壊そうという目的で第2次調査隊がやってくるんです。けれども、到着してみたら第1次調査隊が姿を消している。基地にはいっぱいヒントが隠されていたり、メッセージが残されていたりしていて、何かよからぬことが起きてるんじゃないか? いったい1次隊のメンバーはどこに行ってしまったんだろう?という物語です。火星調査隊といっても特殊な人達ではなく、未来のサラリーマンですね。設定は火星だけれど、そこに普通の人がいたらどんな感じなんだっけ、というギャップが面白いかなと思っています」

―――稽古はいかがでしょう。徳尾さん自身、6年の間にさまざまなドラマを手掛けられて、作品の作り方も変わってきたのではないでしょうか。

「6年前からはかなり変化がありますね。前は、どんな話をやるのかを自分の中に溜め込んで、メンバーにもあまり言いませんでした。しかもすごく台本が遅い。だから稽古が始まっても物語の先がどうなるか僕自身もわからないままだったんです。それは作品の完成度に関わるよね、とはずっと言われながらも『しょうがないんだ』みたいにやってきていました。でも、本格的に映画やドラマの仕事をするようになって、変わりましたね。映像はきっちりチームで作っていくし、期限も決まっている。だから僕も〆切に遅れたりしないんですが、なぜ劇団だとこんなに〆切が遅れちゃうのかと自分で見つめ直して、『やっぱり情報が開かれてないと駄目だ』と思い至ったんです。なので今回は、公演を始めるにあたって役者を集めて何回も脚本会議をしました。『こういうことをやりたいんだけど、どういう人が面白い?』とか『何が起きたら面白いかな?』と話したので、役者たちも物語の結末までもうわかっているんですよ。だからみんなの顔色がずいぶん違う。僕も不安感がなくて、『書けなくなったとしても“これはこういう予定だったじゃない?”とみんながわかってくれてる』という強さがあります。書くのは僕だけど、みんなで考えながら大きな船を動かしています。とはいえ、正直、台本はまだ1ページもないんですけど……(笑)」

―――それは大きな変化ですね。

「もう一つは、劇団公演ってやっぱり好きなようにやってきた良さがある。その一方で、お客さんがさほど観たいわけではない題材でもやってたんですよね。つまり、今の時代のトレンドや生き方をテーマにするといったことは考えずに、僕がその時に興味のある好きなことをやってきた。そうすると当然、お客さんに喜んでもらえる時もあれば、まったく誰にも刺さらないこともあるわけです。ドラマや映画の場合は、プロデューサー達が今やるべきものはなにかをすごく考えてテーマに選んでいるので、独りよがり感がグッと減るのです。劇団でも、まったく時代を無視するのではなく、2021年コロナ禍という特殊な情勢を踏まえてどういうことを考えているかをみんなと話しました。ウイルスという見えないものと戦っているなかで、誰も悪くないのに誰かを攻撃しないと気が済まなくなっているよね、なんで自分たちは争ってしまうんだろう?ということは考えましたね。べつにそれを物語に直接的に反映させるわけではないのですが、今この時の不満や願望を雑談することから自然にうまれた空気の中で、僕たちはお芝居をやっている。それをほんの最低限でも意識するのとしないのでは違うんじゃないかなと。もちろん、最終的には僕たちが好きなことをやるんですけど(笑)」

―――6年前までは、作品について出演者と話すことはなかったんですか?

「僕が困ってから話していたんでしょうね。本番一週間前くらいになって突然『書けない』と言い出す(笑)。もっと早めにわかれば、とよく言われました。劇団のみんなは相談すればちゃんと返ってくる人達なのに、相談する余裕もなかったんです。でも今回は早めに相談して、いろんなアイデアをもらいました」

”劇団”という場所

―――劇団を6年休止するというのは大きなことでなかったかと思います。とくお組とはどういう劇団ですか?

「役者のみんなはこの6年間、本気で休んでいたんですよね(笑)。ほぼ客演することもなく、演劇とはべつの仕事やプライベートを充実させていた。というのもみんな、お芝居は好きだけど、自分達の劇団が好きだという人達で、他の舞台に出たいということはあまりないみたいです。ものすごく仲が良くて、20年近く一緒にいてケンカをしているのも見たことがない。ムダな熱さは一切ないのが良いことでもあるし、『なんでこんなに野心がないんだろう?』と焦ったこともありました。仲は良いけどベタベタしていないので、6年間はほとんど会いませんでしたね。お互いの家も知らないし、いつの間にか結婚していたメンバーもいました」

―――不思議な関係ですね。
「あっさりしてるんですよね。最初はずっと『劇団として売れるんだ』とか『劇団としてもっと動員数を増やして頑張っていくんだ』という感覚があったけれど、2008年を境に考え方を少し変えたんです。やりたい時に集まってお芝居をやるという人たちがいてもいいよな、と思って、劇団を引っ張っていく力を弱めました。それから劇団との向き合い方が変わりましたね」

―――劇団はこれからも続けていくんですよね?

「そうですね。休止や解散をしてしまったらもう戻れない感じがするので、このままの形で、そんなに間をあけずに劇団を続けていきたいです。ほかのみんなもそう思ってるんじゃないかな。劇団自体はずっと続けばいいなと思っています」

―――徳尾さんが俳優をされている場所も、ここしかないのでは。

「いや、僕、出演したいわけではまったくないんですよ(笑)。嫌いなわけじゃないんですけど、どちらかというとしょうがなく出ているところはあります。というのも、ちょっとした役が物語に必要な時に、舞台はエキストラさんにお願いするわけにはいかない。かといってレギュラーメンバーにやらせるわけにもいかない。自分が出るのが一番便利なんです。目立ちたがり屋にも見られるから葛藤はあるんですけどね。しかも僕は自分で台本を書いてるのにセリフを覚えないので、みんなに迷惑だなと思われてるみたいです。『人には緻密なことを要求するのに、なぜ自分は大雑把なんだ』という不評が結構あるので、そこはわきまえています(笑)」

―――徳尾さんにとって、舞台の魅力はなんでしょうか?

「ドラマや映画はたくさんの人に届くので楽しいです。一方で、舞台は届く人数は少ないけど、自分がその時に一番表現したいこと、見てほしいことができる。コメディひとつにしても、ドラマだと、監督さんやプロデューサーや現場スタッフといった何人ものフィルターを通して最後に画面に出てくるんですが、舞台は気心の知れた人たちと『ああだよね、こうだよね』と言いながらお客さんの前にポンと出てくるので、よりダイレクトに伝わっている気がします。自分の感覚を研ぎ澄ませるためにも、今一番面白いと思うものを舞台にぶつけているので、是非観て欲しいなという思いは強くあります」


(取材・文&撮影:河野桃子)

公演情報

「林檎の軌道」のチラシ画像
林檎の軌道

2021年3月12日 (金) 〜2021年3月21日 (日)
下北沢 駅前劇場
HP:公演ホームページ

24名限定!一般4,500円(全席自由・税込) → 3,800円さらに2500Pゲット!(3/18 17時50分更新)

TKTS渋谷店では、3/12〜特別価格!さらに3000Pゲットで発売!
詳細はこちら
「林檎の軌道」のチラシ画像
とくお組
林檎の軌道


2021年3月12日 (金) 〜2021年3月21日 (日)
駅前劇場
HP:公演ホームページ

一般(全席自由):¥4,500
(税込)

詳細はこちら