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土田英生

キメ画像1

江戸時代にタイで暮らす日本人達の『フレンズ』!?

どんな環境でも、笑おうとしていることは美しい

前を向けるエンターテインメントを創りたい!という熱烈な思いで、脚本を書き直したという土田。物語は2019年に考えていたが、新型コロナウイルスの蔓延により「こんな終わり方じゃ嫌だ!」と思ったからだ。これまで20年以上、同世代の男5名で、なんだか笑える人達のコミュニティを描いてきたMONO。2019年には結成30年を越え、新メンバーを4人も迎え入れた。新たなコミュニティとして形を変え始めたMONOが、今描きたい芝居とは?

PROFILE

土田英生(つちだ・ひでお)のプロフィール画像

● 土田英生(つちだ・ひでお)
1967年3月26日生まれ、愛知県出身。
劇作家・演出家・俳優/劇団MONO代表。立命館大学在学中に演劇の世界に足を踏み入れ、1989年、MONOの前身となるB級プラクティスを結成。作・演出の多くを手がける。1999年、『その鉄塔に男たちはいるという』で第6回OMS戯曲賞 大賞を受賞。20 01年、文学座に書き下ろした『崩れた石垣、のぼる鮭たち』により第56回芸術祭賞演劇部門にて優秀賞を受賞。2003年には文化庁の新進芸術家留学制度で1年間ロンドンに留学した。劇作と並行してテレビドラマ『斉藤さん』、『崖っぷちホテル!』、映画『約三十の嘘』などの脚本も多数手がけている。2020年には初監督映画『それぞれ、たまゆら』も劇場公開。

インタビュー写真

コロナであらためて「身近な人と仲良くすること」について考えた

―――『アユタヤ』はタイトルからもわかるようにタイの話ですね。なぜその設定にしたんですか?

「前に、弥生時代を舞台にした会話劇をやったんです(2016年『裸に勾玉』)。それがすごく楽しかったんですね。同調圧力に苦しむ人達の話で、今の自分達が置かれている環境にすごく似ているけど、強いフィクションにすることで思い切ったことも書けるので面白い。昨年くらいから毛色の違ったことをやりたかったので、「よし、時代劇をやろう」と江戸時代にしました」

―――時代劇から、なぜ場所を海外に?

「どうしても「いろんな人たちがどうやって集団化するか」みたいなことに興味があるので、それを際立たせるために「外国にいる日本人達を書こう」と。そこで思い出したのが、小さい頃に読んだ山田長政の伝記漫画でした。山田長政は、タイの日本人町の代表になった人で、最期には暗殺されて、日本人町も焼き払われているんです。

 この日本人町は調べれば調べるほど面白いんですよ。ベトナムとか、カンボジアとか、南洋の貿易ルートのいろんなところにあって、アユタヤはそのなかでも最大と言われていたんです。CGで町並みを再現したものがあるんですけど、かなり日本の町並みなんですよね。タイの家と日本の瓦葺(かわらぶき)の家が混ざっている町です。でも資料がとても少なくて、しかも全部古い! 最もまとまった資料集といわれる『南洋日本町の研究』は初版が1966年。『朱印船時代の日本人』という本は1989年。ほかには、遠藤周作さんが書いた小説を読んだりして、調べています。コロナでなければタイまで行きたかったんですけどね……。

 実際に、そこで暮らす人達の話にしようと決めたのが、昨年のことでした。それからコロナ禍になったことで、「焼き払われて終わるとか嫌だ」という気持ちになったんですよ。それでさらに設定を足して、日本人町から逃れて、そのはずれで暮らすコミュニティの話にしました。つまり、最初は暗い話だったんですけど、コロナになったことでハッピーエンディングにしたくなってきたんです」

―――『アユタヤ』は“ユートピア喜劇”と銘打たれていますね。

「造語ですけどね(笑)。僕は、コロナが蔓延してから、自分の身のまわりの小さなコミュニティの中できちんと他人を思い遣るという、そんな素朴なことをもう一回考えないといけないなと思ったんです。東日本大震災の時に、やたら「絆」とか「同じ日本人だから」という言葉が強調されて、ものすごく簡単に人と人を結びつけるようなワードが怖かったんですね。もちろん被災した方達がその言葉に救われることはあると思いますが、人間関係ってきちんと内実をともなっていないといけないと思うんです。

 そんなことを考えながら11月くらいから台本を書こうしているんですが、Netflixばっかり見ちゃうんですよね。なかでもアメリカドラマの『フレンズ』(1994〜2004年放送)にハマってます。今の価値観だと引っかかるところもあるけど、20年くらい前のドラマにしてはいろんなことに取り組んでいて、同性同士の結婚とか代理出産のことが出てきます。それに単純に面白い! 理想郷なんですよ。

6人の友人のドラマなんですが、10年メンバーが変わらず、ギャランティもみんなで揃えているらしい。しかも、今でも6人の俳優は付き合いがあるそうです。僕は『アユタヤ』を、タイを舞台にした江戸時代の日本人達の『フレンズ』みたいな話にしたいんです……と思って台本を書いていたら、江戸時代のセリフなのに『フレンズ』みたいなコメディのお約束シーンがでてきたりするので、今すこしずつMONOらしいセリフに戻しています(笑)」

―――江戸時代の『フレンズ』! どういう物語なんでしょう?

「時代は、日本人町が各地に活発にできていた17世紀頭くらい。当時は鎖国の影響で、“朱印船”という御朱印をもらった船だけが正式に行き来することで、日本人町が栄えていたんです。でも、御朱印を発行しなくなってだんだん廃れていく……ちょうどその頃の物語です。

 日本人町の多くは、キリシタンや、日本ではうだつの上がらない武士が流れてきて作ったんです。だからそこの人たちは、日本という共同体にうまく同化できずに出てきた人達。でも、そこでもやっぱり差別がおきたりする。その日本人町になじめない人達のコミュニティが、町の外れにあるんです。そこには、父親が日本人町のいさかいで殺されちゃった兄と妹が住んでいて、2人は困った人達を受け入れるので、家にいろんな人達が出入りしています。盗賊、タイ人……これは僕が演じます、ミックスの子、日本人町でみんなから嫌われていた人、「自分はスゴイ侍だ」という虚言壁のある武士。そこに、すごく重大な罪を犯した罪人が駆け込んでくる、というところから物語が始まります。みんなもさすがにそんな人を抱えたら自分達が狙われるんじゃないかと嫌がるんですけど、兄妹は「なにを言ってるんだ」と受け入れて……『フレンズ』みたいに楽しく暮らす(笑)」

―――やっぱり日本人町の『フレンズ』なんですね!

「そうです(笑)。大変な状況だけど、明るい。僕はそのふたつは同時に存在していると思っていて、たとえば戦争でも、防空壕のなかでギャグを言った人はきっといるでしょう。そういうふうに、人がちょっとしたことで笑おうとしていることに美しさを感じるんです。どんな物語でも、そこは失いたくないですね」

劇団結成30周年を迎え、「成長途中です!」

―――土田さんが『アユタヤ』の上演によせたコメントで、「皆が前を向けるエンターテインメントを創りたいという猛烈な思いにかられています」とありました。

「そう。やっぱりこの1年で、「自分はどうやって生きるか」みたいな心の中の問題が、だいぶ据え置かれちゃったんです。世界的に先がどうなるかわからなくて、想像もしていなかった世界に僕らは放り込まれている。それへの対処で精一杯で、「自分は何者だろう」みたいな青臭い悩みはどっかいっちゃってるんですね。

 それと、コミュニティの話にも繋がるんですが、学生の時に鴻上尚史さんの戯曲のあとがきに、「劇団とは各々の関係が安定したら終わり」みたいなことが書いてあったんですよ。そこで「仲良くしちゃいけない」みたいなものが僕の中に刷り込まれた(笑)。結局、僕らは仲良く30年やってきています。だから、コロナで「仲が良いのがなにが悪いんだ」っていう気が強くなってきちゃったんです(笑)。

 最近はハラスメントの問題も多く取り上げられるし、自分が劇団の外で言っていることを、自分の小さな集団のなかできちんと実践できているか、ということがすごく大事だなと。家族でも、劇団でも、身近なコミュニティをみんながきちんとしていかないと、幸せになれない気がする。なのでMONOも、今までいろんなことがありながらも、わりと仲良くやってきたということをもう一回肯定して、そこから前を向きたい。そうして輪を大きくしていくんだ、という気持ちです」

―――とくに2019年には旗揚げ30周年を迎えましたし、20代4名が新しく劇団に入ったので、コミュニティの作り方に変化があったのではないでしょうか?

「そうなんです。今は成長途中で、「9人で一団体だね!」みたいなところまではまだなれていません。もともとおじさん5人がずっと固まっていたところに4人のメンバーが入ってきましたから、4対5になるのでなく、“9”にするにはどうしたらいいかというところです。

 でも、幸せなことに、上の人が下の人に命令するなんてことは一切ありません。前回の『その鉄塔に男たちはいるという+』で、おじさん5人が歌うシーンでは4人が「音がはずれてます」と指摘してくれる。そういえばその時、奥村君が楽器を忘れてしまい、稽古を見ていた若いメンバーに「ちょっと取ってきてくれない?」と言ったら、他のメンバーが「なんで頼むんだ」と。「自分でとってこいよ」「使いっぱしりみたいなことはさせるなよ」とみんなが言い合っていました。まだ成長過程ではありますけど、こうして続けていけば、MONOは良いコミュニティになるんじゃないかなと思っています」

(取材・文&撮影:河野桃子)

公演情報

「アユタヤ(東京公演/ペアチケット)」のチラシ画像
MONO
アユタヤ(東京公演/ペアチケット)


2021年3月2日 (火) 〜2021年3月7日 (日)
あうるすぽっと
HP:公演ホームページ

ペアチケット(前売):7,600円(前売のみ/座席指定引換券/2名分の料金です)
(税込)

詳細はこちら
「アユタヤ(東京公演)」のチラシ画像
MONO
アユタヤ(東京公演)


2021年3月2日 (火) 〜2021年3月7日 (日)
あうるすぽっと
HP:公演ホームページ

全席指定(前売):4,200円
全席指定(25歳以下):2,000円(前売のみ/対象25歳以下/入場時証明書を確認します)
(税込)

詳細はこちら
「アユタヤ(広島公演)」のチラシ画像
MONO
アユタヤ(広島公演)


2021年2月26日 (金) 〜2021年2月27日 (土)
アステールプラザ 多目的スタジオ
HP:公演ホームページ

全席自由(一般):3,000円
全席自由(U-25):2,000円
(税込)

詳細はこちら
「アユタヤ(大阪公演/ペアチケット)」のチラシ画像
MONO
アユタヤ(大阪公演/ペアチケット)


2021年2月17日 (水) 〜2021年2月21日 (日)
ABCホール
HP:公演ホームページ

ペアチケット(前売):7,200円(前売のみ/座席指定引換券/2名分の料金です)
(税込)

詳細はこちら
「アユタヤ(大阪公演)」のチラシ画像
MONO
アユタヤ(大阪公演)


2021年2月17日 (水) 〜2021年2月21日 (日)
ABCホール
HP:公演ホームページ

全席指定(一般):4,000円
全席指定(25歳以下):2,000円(前売のみ/対象25歳以下/入場時証明書を確認します)
(税込)

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