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関谷美香子・奥村洋治

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元新聞記者が描くジャーナリスティック視点の壮絶な会話劇

「問い詰める者」と「追及される者」、緊迫のディスカッション・ドラマ

PROFILE

関谷美香子(せきや・みかこ)のプロフィール画像

● 関谷美香子(せきや・みかこ)
1973年7月13日生まれ。千葉県出身。古城十忍が立ち上げた劇団「一跡二跳」に1999年から参加。『ガッコー設立委員会!』『醜形恐怖。』を皮切りに全作品に出演、2009年に現在の「ワンツーワークス」に変わってからも中心的女優として舞台に立ち続けている。

奥村洋治(おくむら・ようじ)のプロフィール画像

● 奥村洋治(おくむら・ようじ)
1957年6月11日生まれ。熊本県出身。熊本大学を卒業後、同期の古城十忍らと共に劇団「一跡二跳」を旗揚げ。以降は古城作品に欠かせない存在として中心に立ち、古城と共に発信を続けている。

インタビュー写真

福島の第一原発がテーマに描かれる

―――お二人には5年ぶりとなる本作への出演ですが、どの様な印象を作品にお持ちですか?

奥村「3つのシーンがあって、それぞれが取り調べのような形で進むのですが、調べる側も調べられる側もそれぞれ思いがあって、熱を持っているわけです。お互い事情は似通っているけども戦わないといけない背景があってそのやり取りを会話劇として成立させたものです。演じる側としても緊張感が続くというかずっと気が抜けない作品です」

関谷「取り調べがおこなわれている3つの部屋には、ゲーム理論の“囚人のジレンマ”の法則と同じく、それぞれ第3の人物が別の部屋で取り調べがおこなわれているという設定で、その3つの部屋は交わることはないけれども、話が進んでいくと1つの共通したテーマが分かってくるわけです。

 そのテーマというのが、福島の第一原発なんですね。本作は2011年の東日本大震災に着想を得た作品で、取り調べを受ける3人の被疑者も国家公務員や地元の精米店の女主人、男子大学生と福島の第一原発の事故があった事で、それぞれの理由があって運命の糸が絡んだ人々です。私はある疑いをかけられた精米店の女主人を演じます。この女主人は地元産の米を売らず、ヨソから仕入れた米を販売していて、なぜ地元の米を売らないのかと地元の農協から問い詰められ、その理由を取り調べ室の中で語っていくところから始まります」

奥村「初演は2012年の3月11日で、15年の再演の時も『1F(イチエフ)プレイズ』という福島第一原発に関わった作品の同時上演で、今回は震災からちょうど10年という節目もあって上演する意義も大きいと感じました。私は事故直後に現場を放棄した原発の保安検査官事務所の副所長を追及する経産省の役人を演じるのですが、身内の人間でもありながら、国民にも納得する形での報告書を作成する役目を持っているいわば板挟みの立場を演じます。作者の古城十忍が、事実をベースとしながらも『実際にこういう話があったかもしれない』というフィクションを入れています」


絶対に噛んではいけない

―――壮絶な会話劇を演じる上で心掛けたことはありますか?

関谷「初演ではもう絶対に噛んではいけないと必死でした。1対1の会話劇なので、テンポや間が非常に大切になる作品なので、1つでもつまずくと、全てに影響してしまうという緊張感がありましたね。特に私の役は最初から最後まで一度も舞台からはけないので、一切気が抜けなかった記憶があります。でもその緊張感が心地良いというかやりがいにも感じていました」

奥村「取り調べる側の追及の仕方がいやらしいんですよ。ネチネチ、脅したりすかしたりなだめたり。私の役も最終的にはこういう方向に持っていきたいという意図があるので、頭の中にある程度のシナリオがあるわけですよね。でも取り調べられる副所長が生真面目でなかなか思うような方向にいかないので、あの手この手を使って言質を取ろうとするのですが、最後には予期せぬ展開も待っていてと。そんな振れ幅の大きい役なので、厳しく責めたり優しくほだしたりと、力の加減には気を使いました」


インタビュー写真

セットの3階層にも意味が込められている

―――登場人物は少ないですが、熱量のある言葉の応酬に加えて、伏線が張り巡らされていて見どころは多そうです。

関谷「そうですね。国や原発の言い分と、それを知らされずに被害を受けた地元の人間の怒りも話が進むに連れて如実に描かれていくのでそこも1つの見どころだと思います。また舞台装置も工夫されていて、初演では3つの取り調べ室がピラミッドの3階層に分けて設置されています」

奥村「そうなんです。その3階層の一番上に僕ら国側の人間、その次に刑事と泥棒に入った大学生、そして一番下に米屋と言った感じで、それもヒエラルキーの象徴として描かれています。それぞれの部屋で扱われるのは犯罪案件ですが、でもその善悪だけを追及するのではなくて、なぜそうなってしまったか。せざるを得なかったか。それぞれの言い分に誰もがハッとさせられるはずです」

関谷「当時はお客さんもその状況下にいたので、すごく共有できたんですよね。それが10年経った今、どういう風になるんだろうという心配と期待があります。あの時の胸がざわざわする感覚が今のお客さんにはないと思うので、私たちが当時のままやるべきか、それとも新しい気持ちでやるべきかを演出家と話しているところですが、私としては5年前の再演の時よりも当時の怒りや困惑、熱い気持ちを入れて演じた方がいいのかもと思っています」

奥村「僕も同じです。当時のあのザワザワした感じの中で伝わっていたものが、この10年でなくなってしまった。ならばあのザワザワ感をそのままぶつけた方が良いのではと感じています。強さを持ってやらないと伝わらないんじゃないかと。怖いところは精一杯怖くしてやろうと」

古城の圧倒的な知見

―――お二人は前身となる「一跡二跳」から古城先生の作品に出演されていますが、古城イズムみたいなものをどう感じていらっしゃいますか?

関谷「構成や演出が面白いなと思っていて、台本はサラッと読めても実際に舞台に立って演じてみると物凄く感情の起伏が多い事に驚かされることは多々ありました。演出によって想像していた以上のシーンになるという印象があるので演じていても面白いですね。古城さんのやりたい事、見せたいものが明確なので、自分が違う読み方をしていてもそれが融合していくというか、意見を取り入れて表現するものを創っていく作業がやっていても勉強になります」

奥村「古城とは大学の同期なので、もう43年の付き合いになります。彼は演劇に圧倒的な知見があって、自分が作りたい芝居をずっとやってきた男なんですね。私の中での古城に対する好き嫌いの波が激しかったのですが、最近は良い方に針がふれていて、やっぱりすげえなと。この前の裁判員裁判の芝居も仕上がってみると面白いわけですよ。台本だけ読むとそうでもないなと感じても、実際に台詞を読み上げていくと、熱いものが入ってくるんです。この劇団は彼のエネルギーで持っているところもあって、とりあえず私達も引きずられていきましょうと。言う事は聞きますよと思っているわけですが、でも俺はこうしたい、遊びたいというのを小出しにツンツンするのが面白い。古城がまとめあげたものは間違いなく面白いです。でもその中に俺のツンツンが残っているのを見た時に小さくガッツポーズをしています(笑)」


―――最後に読者にメッセージをお願いします。

関谷「何度読み返しても良くできた本ですし、その先をドキドキしながら楽しんでもらえると思います。そしてそこに何を感じ、自分はどうしたいのか?といった感情も芽生えてくるはずです。今回の公演は2チームあるので、シングルの私達は部屋での相手が変わって自分の気持ちにどんな変化が起こるかも大変ですけども楽しみです。あとアフターイベントの公開ダメ出しも毎回人気があります。終演後に古城本人によるダメ出しがおこなわれるのですが、その日の本番でなぜ失敗したのかとか、どんな観点で演出していたのかが分かって面白いと思います。あとスペシャルトークで福島の今を取材している現役新聞記者の方との対談も楽しみにしていてください」

奥村「感情をガーっと刺激する作品ではなくて、理詰めの中に込めた緊張感、迫力に是非注目してください。この言葉をこのトーンで言うか?と驚くような刺さり方や緊張感をライブでお見せいたしますので、是非それを体感しにいらしてください。字で見るよりも面白いはずですから」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

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公演情報

「「ジレンマジレンマ」」のチラシ画像
「ジレンマジレンマ」

2021年3月4日 (木) 〜2021年3月14日 (日)
赤坂レッドシアター
HP:公演ホームページ

全席指定(一般):4,800円
初日割:4,000円 ※3月4日(木)19時、3月5日(金)19時のみ
(税込)


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