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Bohemianist MasahiRo

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ボヘミアンを地で行く男

自身のボヘミアン哲学を語る

クラシック音楽の中には、その曲が生まれた地域の民族性が色濃く表れているものがある。その中でもハンガリーのロマ(ジプシー)に影響された音楽はよく知られているところだろう。そんなロマ音楽に強く傾倒しているヴァイオリニストがいる。Bohemianist MasahiRo(以下、MasahiRoと表記)とユニークな名前を掲げているだけで無く、その演奏スタイルもハンガリーのロマ音楽からの影響を強く受けたユニークなものだ。そんなMasahiRoがピアニストの斎藤真理恵と共に王子ホールで演奏会を開く。

PROFILE

Bohemianist MasahiRo<br>(ボヘミアニスト マサヒロ)のプロフィール画像

● Bohemianist MasahiRo
(ボヘミアニスト マサヒロ)

社会に媚びずに自由な生活を送る芸術家たちのボヘミアニズムというロマの精神を指標とし、ヴァイオリンを通じてその精神を体現した新しいボヘミアン音楽の確立を目指し日々模索するヴァイオリニスト。カナダで生まれ、帰国後4歳からヴァイオリンを習い始める。2009年東京オペラシティにてコンサートデビュー。2011年ハンガリー首都ブダペストにてブダペスト・ジプシー・シンフォニー・オーケストラメンバー他と共演し国際デビューを果たす。日本・ハンガリー外交関係開設150周年でありデビュー10周年だった2019年には記念コンサートシリーズ全3公演を開催し好評を得る。2020年にはオリジナル作品を収録したアルバム"Ballade"をリリース、同時に楽譜"Ballade for solo violin"(カワイ出版制作)を出版する。

インタビュー写真

―――カナダで生まれたというMasahiRo。だが幼少の頃には帰国し、ヴァイオリンは日本で始めたという。

「でも先生はカナダ人でした。ずっとヴァイオリンは続けていたのですが、大学受験でちょっと躓いちゃったんです。音楽大学じゃ無いですよ。それで浪人するわけでも無く過ごしていたら、仕事で全国を出張していた母が、見かねて地方に連れ歩いてくれました。でもあくまでも“荷物持ち”なんで現場に入れずに、最寄りの駅とかで終わるまで時間を潰すんです。当時のウォークマンで好きな演奏家のテープをひたすら聴きながら、浪人生でもないし学生でも無い自分、つまり身分が無い自分を感じながらいろいろと自問自答をしてました。そんな体験がボヘミアン的な意識につながっていると思います。ヴァイオリニストになりたいという気持ちは持っていましたけれど」

―――ボヘミアン、ジプシー、そしてロマ。様々な呼び名があるがいずれにしても社会からは疎外され、迫害を受けてきた民族。しかし彼らが生み出してきた音楽は、その独特の哀愁が聴く者の心を鷲掴みにする力を持っている。MasahiRoもまた、そういった音楽の虜になったという。

「クラシックの王道より、もっと自由な演奏に惹かれていました。なかでもロマ系の音楽に惹かれ傾倒していきましたね。ひとつのきっかけはヤッシャ・ハイフェッツが弾くツィゴイネルワイゼンでしたけど」

―――その後、やはり大学には通うようになるMasahiRoだが、学生生活に並行して演奏活動も始めていた。

「音大の先生にレッスンも付けて頂いていました。一方で演奏活動はボヘミアンをテーマにしたコンサートを開いたり。若かったせいか狂ったように気持ちをぶつけて弾いてました。ある時、何人かの演奏者が出演するコンサートに出てみたら、主催者に「面白いから、今度オペラシティに出てみないか」と声をかけて貰ったんです。そこから“ボヘミアン”を名乗って活動しています」

―――ところでBohemianistという名称にピンとこない人もいるかも知れない。でもMasahiRo自身はそこに彼の確固たる信念があり、その重みをもって日々闘っているという。

「ヴァイオリニストとボヘミアンの造語ですね。ロマ民族というのは迫害されてきた歴史があり、孤独感や疎外感がつきまといます。でも楽器を奏でている瞬間は自由になれるんだと思います。僕が共感しているのはその部分ですね。現代人も日々何かしらのプレッシャーを受けているじゃないですか。そんな時代だからこそ、音楽を奏で聴いている時間だけは自由な気持ちになって欲しい。そんな気持ちでBohemianistを名乗っています」

インタビュー写真

  ―――さて、オペラシティでデビューを飾ってから数年後。MasahiRoは初めてハンガリーの地を踏むことになる。

「Bohemianistを名乗って活動する自分の感覚がどれだけ本場で通用するのかを確かめたかったこともあり、ハンガリーを訪れました。ヨーロッパ五カ国を巡るツアーでしたが、その時のツアーガイドさんが ハンガリー・ジプシー音楽家の場所に詳しい人で「ハンガリーに入ったらライブでもしますか?」なんてニコニコしながら言うんです。旅先の冗談だと思っていたら、ハンガリーに入ると、なんと演奏場所がセッティングしてあって(笑)。一曲即興で演奏したら思いのほか盛り上がって、2日目にはブダペスト・ジプシー・シンフォニー・オーケストラのメンバーがやっている酒場に行き1時間ほど演奏しました。すごく反応は良かったです。その時の動画を見た日本の関係者が、また声をかけてくれました。巡り合わせがいいんですね。その後のコンサートも結構評判が良かったですし」

  ―――アーチストや演奏家にとって技術も大切だが、巡り合わせも同じくらいに重要だ。彼の場合は現在共演しているピアニストであり、プロデューサーでもある斎藤真理恵との出会いがそれに当たるだろう。出会った当時、斎藤はピアニストとして活動する傍ら、横浜市からの依頼でホールのコンサートなどをプロデュースしていた。

「しばらくは色々なオーディションを受けたり、路上ライブをしていましたが、横浜市の関内ホールで開かれたオーディションに行ったら、その審査員に斎藤さんがいらっしゃって、それが最初の出会いです。斎藤さんは、横浜市からの依頼で新進演奏家を発掘するような企画を進めていたんです。彼女は、クラシック奏者ではありますが、“完璧に演奏をこなすよりも、未完成であってもなにかここだけは他に負けない部分を持っている演奏家を見つけたい”と考えている方で。情熱があって想いの強い人に共感する部分があり、そういった意味で僕とピッタリ合ったんですね。そこからまたしばらくして、最初のCDを制作してお世話になった方に送ったのですが、そのなかに斎藤さんもいらっしゃり、ちょうど次の音楽祭企画のゲスト演奏者を探しているのですがと声をかけてくれました」

  ―――そんな斎藤のプロデュースした音楽祭出演がきっかけでBohemianist MasahiRoの演奏活動も軌道に乗っていく。そしていよいよ王子ホールでの演奏会を迎えるまでになった。

「今度のコンサートはPrivate Note Live PREMIUMとなってますが、以前、僕と斎藤さんが音楽祭のプレコンサートとして開催したPrivate Note Liveというコンサートがありまして、最初で最後のはずだったんです。ところが音楽祭よりこっちの方がうけてしまって。これが今では活動の主軸となって続いており、今回はその豪華版ですね。お馴染みの『チャルダッシュ』や『ツィゴイネルワイゼン』『ハンガリー舞曲』はもちろんですが、その他いろいろなジャンルも取り混ぜてお送りする予定です。
それと今回ハンガリー大使館から後援もいただいているのですが、僕にとってこれも大きな意味を持っているんです。得意とするロマ音楽の普及も自分の出来る社会貢献のひとつとして取り組んできており、その中で僕も色々な事を学んできましたが、今回それらの集大成でもあるんです。色々なものを背負って生きている人々の心に、限りなく“自由な風”を吹かせたい!」

  ―――そう語るMasahiRoが音楽に、さらにはロマ民族の音楽に注ぐ情熱は、やはり生で聴かないことには伝わらないだろう。自由闊達に駆け回るヴァイオリンを、自身の耳で感じ取って欲しい。

(注記:ボヘミアン、ジプシー、ロマは同様の民族を指しますが、本文中では固有名詞を除いてロマまたはロマ民族で統一しています)


(取材・文&撮影:渡部晋也)

公演情報

「Private Note Live PREMIUM 〜ハンガリアンチャルダッシュ〜」のチラシ画像
Private Note Live PREMIUM 〜ハンガリアンチャルダッシュ〜

2021年1月23日 (土)
銀座・王子ホール
HP:公演ホームページ

18名限定!5,000円(全席自由・税込) → 3,600円さらに2800Pゲット!(1/21 18時5分更新)
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