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春陽漁介・窪田道聡・及川詩乃

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日常を5454(ゴシゴシ)洗濯する。そんな物語を創りたい

一人の女性の人生を、「涙」をキーワードに掘り下げる

劇団5454と書いてランドリー。名前にシャレを効かせたこの劇団は演劇をベースに映像作品や各種の執筆活動などで活躍する春陽漁介を主宰として2012年に旗揚げ。第二回公演『ト音』は第19回日本劇作家協会新人戯曲賞において最終候補作に選ばれるなど、早くから注目を集めてきた。コロナ禍の影響で2020年の公演活動を全て中止することとなったものの、「劇団5454 部屋干し中」と称して映像配信を続けている。さて、ようやく少しずつ雲の切れ目から陽光が差し込んできた昨今、晴れて外干しとばかりに新作を発表する。及川詩乃、窪田道聡の二人を主役に据えた新作『溢れる』について話を聞いた。

PROFILE

春陽漁介(しゅんよう・りょうすけ)のプロフィール画像

● 春陽漁介(しゅんよう・りょうすけ)
埼玉県出身。日本大学芸術学部演劇学科に在籍中にプロデュースユニットを立ち上げる。俳優としても活動した後、イキウメ主宰の前川知大に師事し劇作を学ぶ。2012年に劇団5454を旗揚げ。脚本演出としてコンスタントに作品を発表し続けている。劇団作品以外にも商業演劇他や映画、アプリゲーム、WebCMの脚本など様々な作品を手がける。Every Little Thingの20周年アルバム豪華版では、持田香織の歌詞を物語にする「リリックストーリーブック」を執筆した。その他、芸能事務所の養成所や高校演劇部の講師、ラジオ構成作家、DJなど活動は多岐にわたる。

窪田道聡(くぼた・みちあき)のプロフィール画像

● 窪田道聡(くぼた・みちあき)
三重県出身。いくつかの俳優や声優養成所をへて2005年のオムニバス作品への出演を機に演劇界へ。俳優として色々な作品へ参加しイキウメでも主要キャストとして活躍。2011年末に俳優業を休業するが、昨年末、約8年ぶりに活動再開。2020年に劇団5454に正式加入

及川詩乃(おいかわ・しの)のプロフィール画像

● 及川詩乃(おいかわ・しの)
東京都生まれ。小学生の頃より児童劇団に所属し映像作品を中心に出演を重ねる。高校卒業後、文学座附属演劇研究所に入所し、アトリエ公演などの舞台に立つ。劇団5454には第13回公演『ト音』にオーディションを経て参加。その後客演を重ねて2020年に劇団5454に正式加入

インタビュー写真

春陽「実はこの作品。及川と窪田が劇団員として加入して初の本公演になるんです」

―――冒頭から意外な話から始まった。一瞬新人が主役に?とも思ったが、プロフィールをみれば及川は児童劇団からキャリアを積み上げてきているし、この数年俳優業を休んでいたとはいえ、それまではイキウメの主要キャストとして活躍していた窪田。むしろ劇団がまた力強いメンバーを迎えたと考えるのが良さそうだ。

窪田「気持ちは新人なんですけどね(笑)」

春陽「窪田とは結構昔のワークショップで知り合って、その後、僕が師事していたイキウメの前川知大さんのところに居たのでお互い見知っていました。でもその時期に同じ現場で芝居したことはなかったです」

窪田「去年の12月公演(『カタロゴス〜「青」についての短編集』)がなんだかんだいって初めてだったよね」

春陽「そうだね。そして及川はうちのオーディションに参加してくれて、それから客演で数回出演してもらいました」

―――そんな二人を新たに迎えたとはいえ、春陽が書く作品の方向性はいつもと変わらないという。

春陽「うちの劇団は常に身近なものを題材に、それを掘り下げていくという作風で、最近は特に『サイコロジカル・フィクション=心理的な物語』をテーマにしています。まだ採り上げていない身近なものはなにかと劇団員に聞いたら、及川が“涙”にコンプレックスがあると話してくれて、それがきっかけとなりました。“涙”について掘り下げていく過程を作品にしたようなものですね。そして僕は基本的に当て書きをするんです。だから二人のパーソナルな話を聞いて、それをキャラクターに乗せたらドラマになるなと思いました」

及川「私にとって“涙”は生理現象に近いもので、場所や状況にかかわらず、嬉しくても悲しくても出てしまうんですね。もう最近はそんな“涙”を受け入れつつある自分がいますね。泣くことで得をすることもあるし(笑)。でも一方で、泣いても何の解決にならないのも事実。ともかくそんな“涙”や“泣く”ことをきっかけにした作品ですから、この役を通して自分自身がそれについて深く考えることが出来れば良いなと思っています」

インタビュー写真

春陽「及川からは人の優しさに触れて涙が出るという話を聞きました。嬉しいとか悲しいとかで涙が出るのはありますが、日常生活にある優しさに触れて涙が出るというのは“優しい人”だなと思う反面、常に溢れそうになっている心はどんな状態なんだろうとも思うんです。そこに興味がありましたね」

及川「こんな風に春陽さんがそんなパーソナルな部分に興味を持って、そして物語が生まれるのはこの劇団の素敵なところだと思います」

―――そして相手役となる窪田。こちらは“泣かない”側のキャラクターだという。もちろん、当て書きなのだから、そこには窪田のパーソナルが映し出されているはずだ。

窪田「僕は泣く前に考えてしまうタイプで、こらえきれなくて泣くことはないですね。映画やドラマを観ていて涙することはありますが、日常の中で涙が溢れることはない。邪念がある訳ですよ(笑)。これは笑いのツボが浅い人にも通じる者があるんじゃないですかね」

春陽「あと“涙”には奪われる感覚もつきまとうと思うんです。例えば親しい人が死んだのだけれど、自分が涙する前に自分よりも遠い人が先に涙してしまうと、一足乗り遅れてしまった感覚が生まれるんです。真っ先に泣ければ良いのに、それが出来ない。結果として泣かない選択肢を取ってしまうんでしょう。達観しているというか、醒めがちだというか」

―――取材の時点ではまだ固まっていないという物語だが、おおよその骨組みは出来ているという。

春陽「主人公が色々な人と関わっていく、ロードムービーのような物語を考えています。群像劇でもありますが、彼女を中心にした物語になるでしょう」

―――さて、春陽が主宰し、かつ座付き作家でもある劇団5454。まだ8年目という若い劇団でもあるが、そこで春陽はどんな世界を観客にみせていこうというのか。さらに昨今は劇団という形を取らずにプロデュース形式を取ることが多い中、劇団という形を選んだ理由はどこにあるのだろう。

インタビュー写真

春陽「『5454』と書いて『ランドリー』。そんな劇団名は『日常を洗濯する』というイメージの表れです。青空になびいているTシャツって気持ちが良いじゃないですか。それも新品ではなく、着込んだシャツが洗われてなびいている。そんな瞬間が日常にももっとあるべきだと思うし、普段見慣れてしまって見過ごしているものをもう一度見つめ直す、そんなことが出来るように僕達は物語を作りたいと思っています。日常をテーマにして隣り合わせにファンタジーを置いておく。そんな作品が多いですね。劇団を作ったのはやはりイキウメと前川さんの影響が大きいです。前川さんが作家として作品を積み上げて向上していくなら、同じメンバーと創り上げる方がその度に一からスタートにならないと言うのを聞いてその通りだと思いました。だから僕の書いたものをみんなが演るのではなく、みんなで一緒に創り上げていく感じです。僕自身、作家性が強い方ではなくて、書きたいものが湧き上がるようなタイプではありません。でも、週一でやっている基礎稽古で劇団員を観察していると、色々なことに気づいたり感じたりする。そこに物語を乗せてお客さんに届けたい。それが自分の創作意欲ですね。だから僕は劇団がないと作品が創れないと思っています。」

窪田「役者としても、外部で客演して戻る場所があるっているのは大きいよね」

春陽「帰る場所があるのは凄く大きいと思うよ。特にこのご時世だと(笑)」

―――では、劇団であることは必要なこと。そんな春陽の想いに、及川、窪田はどう応えるのだろう。

及川「昨年12月の公演の時に、つい最近嫌なことや悲しいことがあったけど、芝居の間はそれを忘れることが出来た、と言ってくれた人がいるんです。それは私が演劇を通して為し得たいことで、そういった力をこの劇団は持っていると思います。それに他の劇団員の皆が大好きなので、一緒に芝居を創れるのが嬉しいです」

春陽「束の間現実を忘れさせるなら、コメディ劇団でも良かったかもね。そういった笑いに特化した劇団って結構あるじゃない。うちは笑いは大切にするけどコメディではないから」

及川「うーん(笑)。ただ笑えるだけのも好きだし、演劇は娯楽であるべきだというのも納得できるけど、知らなかったことに出会えるとか、見過ごした何かに気づくとか。一種の気づき、観た後に持ち帰るものがあるのが私のやりたい演劇なんですね」

窪田「5454の作品は旗揚げの頃からずっと観ていたんです。そして一時期役者をお休みしていて、昨年再開と決めてここのオーディションを受けて参加しました。現場が楽しかったことや、それ以前にこの劇団が大好きだったので劇団員としてやっていくにはここだと。それと、春陽の書く作品には全部出たいと思ったのが一番大きかったですね」

―――さりげない日常を見つめ直し、さっぱりと洗い上げて送り出す。汚れで見えにくかった何かもよく見えるだろうし、それ以前に洗いざらしの日常は観客に新たな感情を引き起こすだろう。そんな舞台を期待したい。


(取材・文&撮影:渡部晋也 撮影協力: フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー)

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公演情報

「溢れる」のチラシ画像
劇団5454
溢れる


2021年1月14日 (木) 〜2021年1月24日 (日)
赤坂 RED/THEATER
HP:公演ホームページ

26名限定!一般4,500円(全席指定・税込) → 3,500円さらに400Pゲット!(12/29 19時20分更新)
詳細はこちら
「溢れる」のチラシ画像
劇団5454
溢れる


2021年1月14日 (木) 〜2021年1月24日 (日)
赤坂レッドシアター
HP:公演ホームページ

【Go Toイベント対象】
通常価格から20%OFF!

一般(前売):4,500円3,600円
(税込)
※C列(最前列)に着席のお客様は【フェイスシールド着用】が必須となります。

※【Go Toイベント対象】公演はGo Toイベント参加規約(https://gotoevent.go.jp/terms/)に同意の上、チケットをご購入いただきます。必ずお申込前に規約をご確認ください。
※本公演チケットの受付はWEB予約のみとなります。
 お電話でのご予約はいただけませんので、予めご了承ください。

詳細はこちら
「劇団5454 第15回公演「溢れる」☆配信チケット」のチラシ画像
劇団5454 第15回公演「溢れる」☆配信チケット

2021年1月20日 (水) 〜2021年1月31日 (日)
Confetti Streaming Theater
HP:公演ホームページ

【Go Toイベント対象】
通常価格から20%OFF!
※WEB予約のみでの受付となります。
 カンフェティチケットセンターでの電話受付はございません。


【劇団5454 第15回公演「溢れる」本編ライブ配信】
視聴券:3,000円 2,400円

【劇団5454 第15回公演千秋楽1日定点配信チケット(終演後限定アフタートーク有!)】
視聴券:2,500円 2,000円

(価格はすべて税込)

※【Go Toイベント対象】公演はGo Toイベント参加規約(https://gotoevent.go.jp/terms/)に同意の上、チケットをご購入いただきます。必ずご購入前に規約をご確認ください。

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