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『ともだちが来た』

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阿佐ヶ谷スパイダース×劇団ヨーロッパ企画が贈る“ふたつの私と友の姿”

OMS戯曲賞・大賞の傑作が17年ぶりの上演! これは静かで長い死者との別れの対話である。

劇作家・演出家の長塚圭史を中心に結成され、2017年5月に劇団化した阿佐ヶ谷スパイダースが1995年第2回OMS戯曲賞を受賞した鈴江敏朗の傑作戯曲をヨーロッパ企画のメンバーを招いて17年ぶりに上演する。 ―蒸し暑いある夏の日。「私」の前に高校時代の同級生「友」が現れた。久しぶりの再会に喜び、じゃれあうように会話を楽しむ二人だが、その間には埋めることのできない大きな溝が横たわっていた……。 プロデューサーの長塚圭史は「孤独を余儀なくされる2020年に『私』と『友』の姿がどう浮かび上がるのか」と2つのバージョンを生み出すことにより、本作の新しい魅力に迫っていく。 取材では演出の中山祐一朗、ヨーロッパ企画の中心メンバー、本多力と土佐和成の二人と共に公演への意気込みを語ってもらった。

PROFILE

本多 力(ほんだ・ちから)のプロフィール画像

● 本多 力(ほんだ・ちから)
1979年生まれ、京都府出身。 1999年、第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。外部の舞台や、テレビ・映画への出演も数多い。劇団活動以外の最近の主な作品は映画『リトル・サブカル・ウォーズ〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』(2020年 後藤庸介監督)『前田建設ファンタジー営業部』(2020年 英勉監督)、ドラマ『ヴィレヴァン!2〜七人のお侍編〜』(2020年 メ〜テレ)、『極主夫道』(2020年 読売テレビ・日本テレビ)、『浦安鉄筋家族』(2020年 テレビ東京)、舞台『森から来たカーニバル』(2018年 劇壇ガルバ)、muro式10『シキ』(2018年)

土佐和成(とさ・かずなり)のプロフィール画像

● 土佐和成(とさ・かずなり)
1977年生まれ、広島県出身。 2004年、第16回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。外部の舞台や、ドラマ・映画への出演も多い。WEBラジオ『週刊!ヨーロッパ2』では、パーソナリティを務める。劇団活動以外の最近の主な作品は、映画『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年・三木孝浩監督)、『パンク侍、斬られて候』(2018年・石井岳龍監督)、テレビドラマ『DIVER-特殊潜入班-』(2020年 関西テレビ)、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年 NHK)、舞台『エーデルワイス』(2019年 ブス会)『続・時をかける少女』(2018年 ニッポン放送・ぴあ・イープラス)等。

中山祐一朗(なかやま・ゆういちろう)のプロフィール画像

● 中山祐一朗(なかやま・ゆういちろう)
1970年生まれ、小学1年までドイツ・デュッセルドルフで生活後、帰国。 1998年「阿佐ヶ谷スパイダース」に参加、以後中心メンバーとして全作品に関わる。蜷川幸雄、野田秀樹、河原雅彦、宮田慶子など個性豊かな演出家作品への出演多数。2019年に出演した『エダニク』(作:横山拓也/演出:鄭義信)では、第1回浅草九劇賞・ベストパフォーマー賞を受賞。その他の最近の主な出演作品は、舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』(2020年)、阿佐ヶ谷スパイダース『桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡〜』(2019年)、『hymns』(2019年)、『二十日鼠と人間』(2018年)、『続・時をかける少女』(2018年 ニッポン放送・ぴあ・イープラス)、また『山岸ですがなにか』(2017年 Hulu)、『深夜食堂』シリーズなど映画・テレビと多方面で活躍。

長塚圭史(ながつか・けいし)のプロフィール画像

● 長塚圭史(ながつか・けいし)
1975年生まれ、東京都出身。 1996年「阿佐ヶ谷スパイダース」を結成。作・演出・出演の三役を担う。2017年より劇団化。近年の主な作品に『かがみのかなたはたなかのなかに』(作・演出・出演)、『ハングマン』(演出・出演)、『セールスマンの死』(演出)、『華氏451度』(上演台本)、『イーハトーボの劇列車』(演出)、『桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡〜』(作・演出・出演)、『常陸坊海尊』(演出)、『イヌビト〜犬人〜』(作・演出・出演)など。21年1月『セールスマンの死』(演出)が再演。2019年度よりKAAT神奈川芸術劇場芸術参与に就任。

インタビュー写真

―――阿佐ヶ谷スパイダースとして17年ぶりとなる上演は役者が異なる2バージョンでの公演になります。

中山「2003年の長塚圭史、伊達暁出演の『ともだちが来た』を観た方から、『もう一度やらないのか?』と聞かれる機会が多くて、やはり何か人を惹きつける魅力がある作品だなとずっと思っていました。
 2003年の時は、実際の同級生でもある二人が、作品の設定よりも高い年齢で演じていました。本作は18歳前後の若者を想定した舞台なので次回やるならば、その年齢に近い若い役者でやるのが一番じゃないかと思っていました。しかし、ふとその前にもう一度変な負荷がかかった状態でこの本に取り組んでみたいといたずら心が浮かびました。スパイダースの中でも比較的若い坂本慶介くんや森一生くんらにやってもらいつつも、相手役は年齢関係なくキャスティングしてみたらどんな感じになるんだろうかと……。おじさんが高校生の制服を着て汗かきながら演じるというのもエネルギッシュで面白いですが、そうではないおじさんが若者を演じているのか、はたまたおじさんのままでやっているんじゃないかという判断が分からなくなる、錯覚させるような魅力があるんじゃないかなと。ただそれを過信すると、誤読する恐れもあるので、慎重になる必要はありますが、ちょっと面白そうだったので挑戦してみます」

ヨーロッパ企画への絶大な信頼

―――親交のあるヨーロッパ企画のお二人を招こうと思った理由については

中山「ヨーロッパ企画の皆さんの演技体は他の劇団さんとは違う特殊なものがあって、そういったものが他の劇団の芝居と混ざれば面白いなと思いました。舞台が完全にさらされているので、小道具の出し捌けも難しいし、当然演じる側も難しいとは思いますが、お二人ならではの味も生かした舞台になるはずです」

長塚「中山さんの中にある、ヨーロッパ企画さんへの絶大な信頼と期待が物凄い大きいんですよね。いつも嬉しそうに京都に行くし、あまりに思い入れが強すぎて一時期は嫉妬すら覚えました(笑)。
 その信頼を目の当たりにするのが、物凄い楽しみだし、坂本や森からしてみても、二人芝居で年齢が一回り違う先輩と組めることはかなり貴重な経験にもなると思います。彼らの可能性もまだまだ未知数なので、大いなる刺激になるはず。間違いなく2003年の舞台とは全く違ったアプローチになることは明らかなので、期待しかないですね。」

インタビュー写真

客席から観たかった

―――長塚さんは今回、プロデューサーとして公演に携わりますが、これまでの経緯をどの様に見つめていましたか?

長塚「前回、私は出演していたので、シンプルに一度、中山祐一朗が演出する『ともだちが来た』を客席から観てみたい。これが全ての発端です。中山さんの『ともだちが来た』に対する思いが非常に強くて、公演後も作品に対する熱意が消えていない様子を感じていましたし、本人も『若い俳優を使ってやってみたい』と耳にしたこともありました。
 阿佐ヶ谷スパイダースが2017年に劇団化して、若手も入れましたが、僕らはだいたい年に一度の公演ペースだったので、意外と風通しが悪くなる可能性もあると感じていました。もっと多様な劇団でありたいという思いもあって、中山さんと親交のあるヨーロッパ企画さんとやってみては?と提案しました。今回、この作品に登場する『私』と『友』は設定年齢よりも上の役者が演じますが、役者は年齢に囚われる必要はないと思っていて、20歳前後の役を40代が演じたっていい。『俳優は演じられる範囲を自分の年齢とするべきだ』とは、大林宣彦監督からの言葉で、僕自身、大林さんの映画で15歳ぐらいの役を40代で演じました。本多さん、土佐さんの様に経験を積んだ上で演じる事が作品にまた違う“匂い”をもたらすと思うのでかなり楽しみにしています」

これは大変な事になるぞ

―――この傑作戯曲への出演を受けた時はいかがでしたか?

本多「単純に嬉しかったですね。中山さんとは役者として共演したことはありましたが、その中山さんが演出をされる舞台に呼んで頂けるということが尚更嬉しかったです。どんな演出をされるんだろうという興味も凄くあります」

土佐「僕も中山さんと一緒にやれるのが一番嬉しかったですね。作品の事は知っていましたが、本は読んだ事がなくて、初めて読んでから『これは大変な事になるぞ』と気が付きました。思い返したら僕は二人芝居をやったことがなくて。自分としても大きなチャレンジとなる機会だと思っています」

インタビュー写真

長塚「中山さんは一度、『友』を演じているので、『友』の演技に関してはかなり厳しいですよ。17年前に伊達暁と稽古している時は『もっとこうやってやってと』と細かく指示してきて、『芝居じゃない、俺のオーラを観てほしいんだ』と言って舞台に上がってくる(笑)」

土佐「中山さんは役者として一緒にやらせてもらっていますけど、演出家の姿はちょっと想像できないので、今の話を聞いて一段と怖くなりましたよ!」

長塚「大丈夫! あれから17年経っているから、中山さんもだいぶ大人になっているはずだから」(一同笑)

本多「でも実際、本を読んでいても難しいです。まだイメージでしか作品の魅力を受け取れていないです……」

土佐「でも脚本から放たれる“匂い”みたいなものが凄いよね」

本多「確かに。あと僕はこんなにト書きが多い台本を読んだことがないです。台詞よりもト書きの方が多いシーンあるよね?」

土佐「僕らヨーロッパ企画の台本はト書きがほぼ無いので、かなり戸惑っています。これホントにひとつひとつやるのかな?」

本多「やるんちゃう? ちゃんと書いてあるし」

長塚「でもト書きはやった方がいいですよ。今回読み返してみると、意外とト書きを飛ばそうとしていた事を思い出して、きちんと踏まえて演じたらきっともっとずっと面白くなると思う」

本多「確かにト書きで役者が試されている感じはあります。自分一人では黙読していても分かりませんが、きっと共演者と一緒に合わせた時にト書きの意味が発揮されると思います」

土佐「ちゃんとひとつひとつに意味があるわけやもんな……。なんか演劇初めてやる人間みたいですみません! 21年やっていますけども」(一同笑)

本多「今の時代はすごく分かりやすいものが多いじゃないですか。コンテンツも短くなっているし。でもこの作品は凄く“間”を大事にしていて、その“間”が考えたり想像したりする時間になればいいなと思います。芝居を始めた頃の新鮮な感覚を台本を通して思い出しました」

鈴江さんの死と友情に対する考察である

―――演出面で2バージョンの違いを意識して出そうと思いますか?

インタビュー写真

中山「Bバージョンの土佐くんと森くんの方は『私』を年上が演じるので、もしかしたらおじさんが青春に置いてきてしまった何か。ずっと引きずってきているように見える“錯覚”を台本に反映する取り組みもできるのではと思っています。特におっさんという色を際立たせる意味で、物が散乱した部屋をセットすることで、すさんだ気持ちを表そうとも思いましたが、お客さんに感じ取ってもらう意味でもそこまで物質で表現せずに敢えてシンプルなセットにしようと考えています。
 Aバージョンは『友』を演じる本多くんが年齢不詳の妖精みたいな役者さんなので、特別に色付けをせずに普通に取り組んでも面白いと思います。この舞台は漠然とした死や別れといったものを具現化していく演出が可能ですし、敢えて具現化しないまま、お客さんに感じ取ってもらう事もできる作品だとも言えます。どっちにしても孤独がテーマになっていると思いますが」

長塚「この作品では劇が始まってわりとすぐに、『友』は死者であることが分かります。
コロナ禍を受けて孤独感が増している中で、ずっと『私』と『友』の関係性について考えを巡らせていました。死者が何を思っているかは残された者たちには知りえることができない。でもこの劇では死者が出てきてくれて、対話する事ができる。ある種、原作の鈴江俊郎さんの死の考察でもある。それが非常に演劇的で、この孤独感が広がる今だからこそ、思いがけず現在を映す作品になると思います。
 『友』の死の原因が明かされるかどうかではなく、何が二人をそうさせたのかという想像をお客さんに持ってもらう事もひとつ大きな意味を持つと思います」

―――最後に読者にメッセージをお願いします。

土佐「個人的には1年ぶりの舞台ですし、初の二人芝居もあって緊張するとは思いますが、役者としての色んな側面を知ることが出来る機会になるのかなと。観て頂く方にも色んな発見がある舞台にしたいと思っているので、シンプルに楽しみにしていてください!」
本多「ヨーロッパ企画も色んな事をやってきましたが、わりと劇団内だけで完結出来てしまう事も多かったので、今回の様に外部団体さんと一緒に作品を創れることは非常にいい機会ですし、僕自身も年下の役者さんとここまでがっつり一緒に芝居をする事はなかなかないので、互いに刺激を与え合えるように頑張ります。
 この前、久しぶりに映画館に行ってきたのですが、やっぱり家で観るのとでは全然違う。このような時期ですが、是非劇場で、空間と時間を共有する面白さを楽しんでいただけたらと思います」

長塚「2020年という年がとても特殊で、皆が自分の仕事や生活について色んな事を考えさせられたと思うんですね。僕も公演自体を中止にすることも当然考えました。でもこの劇は今だからこそ、多くの人に届くと思うんです。別々の集団が絡み合うことで戯曲本来の魅力が出てくるんじゃないかと期待しています。是非ご期待ください」

中山「おじさん達を使ってこの戯曲をやるからには、なるべく大真面目にやりたくないなという思いもあります。(長塚)圭史と伊達くんと作った時には肩に力が入りすぎて真面目に作りすぎたなという思いもあるので。折角、劇場に来てもらったからには楽しんで帰ってもらいたい。本多くんみたいな怪優を連れてきているので、ふざけすぎない範囲で楽しい作品に出来たらと思います。是非、A・B 両バージョン観て頂ければ嬉しいです」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

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公演情報

「ともだちが来た」のチラシ画像
阿佐ヶ谷スパイダース vol.28
ともだちが来た


2020年12月3日 (木) 〜2020年12月13日 (日)
下北沢 小劇場B1
HP:公演ホームページ

24名限定!4,500円(全席自由・整理番号付・税込) → 3,900円さらに300Pゲット!

詳細はこちら
「ともだちが来た」のチラシ画像
阿佐ヶ谷スパイダース vol.28
ともだちが来た


2020年12月3日 (木) 〜2020年12月13日 (日)
下北沢小劇場B1
HP:公演ホームページ

全席自由:4,500円(税込・整理番号付)

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