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劇団時間制作『迷子』

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孤独・恐怖・嫉妬で人間を描く、時間制作

ある火事で関係が変わってしまった3人の幼馴染。“迷子”たちが辿り着く先とは……

 人間が直面する弱さや社会問題を題材に、オリジナル脚本を上演する劇団時間制作。観た人が「エグい」「辛い」「苦しい」と口にしつつも、絶賛の口コミが広がり、当日券のキャンセル待ちが列になることも。
 旗揚げ7年目を迎え、第二十二回本公演となる今作『迷子』は、ある火災事故と死の裁判を巡る群像劇だ。被害者家族によって失くしたものの違い、立場の違いが歪な関係を生んでいく。取り返せない過去に決着がつくことはあるのか。正義と正義がぶつかる時、本当の正義とは一体何なのかーー主宰・作・演出の谷碧仁に作品の背景などを聞くとともに、物語の中心となる3人の幼馴染を演じる岡本玲、桑野晃輔、青柳尊哉に、時間制作へ出演することの思いを聞いた。

PROFILE

岡本 玲(おかもと・れい)のプロフィール画像

● 岡本 玲(おかもと・れい)
1991年6月18日生まれ、和歌山県出身。 第7回雑誌『ニコラ』専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、デビュー。以後、ドラマ・映画・CM・舞台と多方面で活躍中。代表作にNHK連続テレビ小説『純と愛』、『わろてんか』、ドラマ『わたし旦那をシェアしてた』、映画『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでる』、『弥生、三月−君を愛した30年−』、舞台『熱帯樹』など。今後の放送予定にNHK BSプレミアム『十三人の刺客』11月28日(土)21:00〜22:59がある。

桑野晃輔(くわの・こうすけ)のプロフィール画像

● 桑野晃輔(くわの・こうすけ)
1990年10月16日生まれ、兵庫県出身。 主な舞台出演作は『人間風車』(サム役)、『文豪ストレイドッグス』(谷崎潤一郎役)、『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE(獄寺隼人役)、『pet』(司役)などがある。TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(青山優雅役)では声優としても活躍。

青柳尊哉(あおやぎ・たかや)のプロフィール画像

● 青柳尊哉(あおやぎ・たかや)
1985年2月6日生まれ、佐賀県出身。 17歳で上京、2003年にドラマデビュー。2016年『ウルトラマンオーブ』の敵役・ジャグラス ジャグラーを好演して人気を博す。現在は『ウルトラマンZ』(TX系)にヘビクラ役でレギュラー出演中。今作『迷子』は『冬の時代』『BETRAYAL/背信』に続き2020年3作目の舞台出演となる。なお、映画『クローゼット』『燃えよ剣』の公開が控えている。

谷 碧仁(たに・あおと)のプロフィール画像

● 谷 碧仁(たに・あおと)
1991年6月13日生まれ、愛知県出身。 2013年、劇団時間制作を旗揚げ。以降全作品の作・演出を務める。生々しい感情と重層的で綿密な構成でリアルな現代を描いている。また、外部公演ではジャンルを問わず幅広く脚本・演出を手掛ける。ワークショップも定期的に開催している。

インタビュー写真

時間制作の作品──孤独・恐怖・嫉妬を描きたい

―――『迷子』は、ある火災事故の裁判をめぐる物語ですね。なぜこの題材にしたのですか?

谷「いくつか気になっていたことが繋がって、この物語が生まれました。ひとつは、あえてコロナと繋げると、自粛警察の影響によって、あるお店の人が自分で店を燃やして亡くなった事件があったんです。それに『事前に予想できたでしょう』と思ったことですね。もうひとつは、2011年の震災で大川小学校の子ども達が津波に流されて亡くなってしまったことで、保護者の方々が学校を訴えたんです。そして裁判は、保護者側が勝ってしまった。その時、僕の心にふっと湧いたのは『勝たせてしまったらこれからどうなるんだ。どこに向かうんだ』という思いでした。そういう疑問を書きたいと思っていましたので、今回とりあげることにしました」

岡本「谷さんは、人間くさくて、本当は善人でいたいのにいられない状況をつくるのがとてもお上手なんですよね。私は今回、プロットを読む前に『やりたいです!』と出演を決めたんですが、そのきっかけは、時間制作さんを観劇していたことでした。Twitterで話題になっていた『ほしい』に衝撃を受けて戯曲を買い、前回の『赤すぎて、黒』でもまたびっくりして戯曲を買いました。戯曲を読むのが楽しいんですよ。いろんな人に読んで欲しくて、たくさん貸したりもしました(笑)。ずっとTwitterで『出たい出たい』って書いていたから、出演できることになってありがたいです。プロットを読んでみて、やっぱり谷さんって“人間として突いてもらいたくないところを突かれているな”という感じがあって、すごく好きです」

青柳「僕も『ほしい』を観て、えぐいし、しんどいけど、谷さんは人間が好きなんだろうなと思った。人間に希望を持っている人なんだろうなと。だから、人間の上辺じゃないところをまっすぐ勇気を持って描いていけるのかな。自分も上辺のことや、嫌なことは言いたくない。でも、お芝居だから言えることってある。今回もプロットを読んで、『そうだよね、言いたくないよね』と思うこともあるけれど、台詞だから言えることがあるし、お芝居だから伝わることがきっとあると思います。谷さんの書く登場人物を見ていると、自分に出会っちゃう気がするんですよ。
 自分の嫌な面や、弱い面にたくさん出会っちゃう。でもそれによって『頑張ろう』と思えたり、劇場を出たあとに行動する勇気に繋がったり、人とどう向き合おうかと考えられる。お客さんにもぜひそんな体験をして欲しいですね。その世界に飛び込むのは楽しみだし、勇気がいるけど、絶対に自分の財産になるなと期待しています」

桑野「僕は谷くんの作品は3回目ですが、人間の深いところを突く言葉が書かれていて、すごく面白い。お客さんからはよく『えぐい!』と言われますね。観終わったあと、衝撃で放心状態になる。物語が生き物のように動いていくのが時間制作の魅力だし、今回もそんな作品になるんじゃないかな」

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―――人間くさい、人間が好き、人間の深いところを突く、など"人間”を描いている印象が強いですね。人間のどういうところを書きたいですか?

谷「ずっと、孤独を書きたいなと思っているんです。演出家・鈴木裕美さんもよく言われますけれど『良質な戯曲には孤独が入っている』というのが、すごくしっくりくる。孤独があるから、寂しいから、人は変な行動をしだす。それは僕が小さな頃から追求しようとしている部分ですね。もうひとつ大事なのが、恐怖心。あと、海外戯曲の話で『一番伝わりやすいのが嫉妬』って聞いてから、嫉妬も意識しています。孤独・恐怖・嫉妬の3つで人物を描くことは多いですね」

役者を「制限」することで、芝居ができる

―――岡本さん、桑野さん、青柳さんは幼馴染役ですね。3人の関係性や役どころは?

谷「『迷子』は、この3人が軸になっている会話劇です。まず、シアターウエストで上演するのは劇団にとって初めてのことで、どんな作品にするのかかなり葛藤したんです。劇場が大きいので、『遠くの人にも届けなきゃ』という臆病さがどんどん出てきて、書き進められませんでした。一ヶ月くらい悩んでその迷いが払拭できた時に『やっぱり人だよなぁ』と思って、ひたすら会話とリアクションのみを続ける群像劇にすることにしました。
 物語の中心となる3人は、同じ旅行先で火事が起きたという過去があります。両親が亡くなった人、妹さんが亡くなった人、誰も亡くなっていない人……。違う方向を向いた3人がどう歩んでいくかという話。配役するにあたっては、みなさんのお芝居を拝見し『ここを制限されると嫌がるだろうな』と思えた役にしました」

―――制限とは?

谷「その役者さんが演じやすい配役にはしないようにしているんです。なにか制限があると、役者さんが『ここから出たい!」』ともがくところに、良い芝居があると思う。制限されるってすごく大変だから、そこで生まれる摩擦で演じてほしい。あとは『この人のここが素晴らしいな』と思うところが顔を出すかなというお芝居ができたらいいですね。全部出しちゃうとすごくつまらない。それが叶うだろうという配役をしたつもりです」

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桑野「自分のやりたいことだけやっても演劇として成立しないというのは、彼の言う通りかな。演出家の感覚や価値観にいかに寄り添えるかが役者としての勝負だと思うので。だから稽古は苦しいですよ……逃げ出したくなります……でも充実した時間です。気づいたら稽古が終わっている。家に帰った時には、全身からアドレナリンがでているような満たされた疲れがあります。稽古を重ねて、役に血が通っていく瞬間が心地いい。それに、彼はたぶんこれからの演劇界を背負っていく存在だと思うので、そこに僕は寄り添って作品をつくっていきたいですね」

谷「プレッシャーが強い(笑)」

―――岡本さんと青柳さんは時間制作に初出演ですが、楽しみは?

岡本「今の話を聞いてすごく楽しみになりました。時間制作さんとご一緒したかった理由のひとつは、役者さんが輝いているからなんです! 『こんなに魅力的な役者さんだったんだ!』と驚くので、谷さんはどんな稽古をされているんだろう?と気になっていました。制限されている、というのはすごく腑に落ちますね。
 それに、今、20代の才能ある演出家さんはたくさんいると思うんですけれど、ちょっと奇抜な演出が目立っている作品が多いなと感じていたんです。もちろんそういう作品も面白いですが、谷さんのように、役者力があがっている作品はそんなにないと思うので、稽古が楽しみです」

谷「(顔がこわばって)頑張らなきゃ……」

青柳「制限することでイキイキするものや、自分らしさが出てくるのはよくわかります。やっぱり役者が追い込まれないといけないことはある。苦しめる場所があるってすごく素敵なこと。苦しむ覚悟はあるので、まあ、苦しみましょう(笑)。そして舞台上で俳優たちがすごくイキイキとして見えたら最高だし、そういうステージを届けたい。生命力の溢れるステージになったらいいな」

「劇場でお待ちしています!」と言える喜び

―――舞台の公演が少しずつ戻りつつある今、この作品に向けて臨む意気込みや、メッセージをお願いします。

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桑野「やっと『劇場でお待ちしています』と言えることが嬉しい。今年は悲しいニュースがたくさんあったけれど、そのなかでもエンターテイメントにはたくさん助けられたので、ぜひ演劇を観てほしいです。『迷子』はきっと、生きる力や命の大切さを感じてもらえる作品になると思う。みなさんの背中を押してくれるような作品になるんじゃないかな。ぜひ、目で観て、肌で感じてもらえたら幸いです。劇場でお待ちしています!」

青柳「そうですね。僕は3月末のシアターウエストでの舞台で、最後の3公演が中止になったんです。その時すごく憚られる思いで『劇場に来てください』と言いながら、それでも徐々に人が減っていった。でも、9月末の公演では、だんだんお客さんが増えていったんですよ。劇場に人が戻っていく瞬間を体験しました。
 その時に痛烈に感じたのが、やっぱり舞台はお客さんが入ったことで完成するんだな!ってこと。俳優が台詞を言ったり一歩踏み出すところに、お客さんが乗っかっていくと『一緒に呼吸をしている!』と感じられる美しい瞬間がある。それだけで僕らは一緒に生きていけるし、エンターテイメントを続けていける。劇場は、楽しいから! どんな苦しい作品でも『あぁ、辛かったね』という時間を一緒に体験できた喜びを持って帰ってほしい。ぜひ一緒に舞台をつくってもらえたら嬉しいな」

岡本「今、色々な事を不安に感じている人は多いと思うけれど、そんな時だからこそ出会いたいです。私もコロナ禍では、自分の考えを発するのも、お芝居をするのも、怖くなったりしました。でもそれは、人となかなか会えない状況が増えたからこそ起こった怖さだと思うんです。谷さんが言っていたように、孤独とか、恐怖とか、この時期に遊んでることへの嫉妬とかが目に見えて出てきた。今もまだ不安な人はたくさんいるだろうし、自分の殻に閉じ籠もって平和だと思っている人もいると思います。
 でも、寂しい心は、新しいものに出会ったり、他人と触れ合ったりしないと、温まらないような気がします。だから私たちは演劇によって、誰かの縮こまっちゃっているところを擦ったり、つんつんと刺激したりして、愛情を行き渡らせることができたらいいなと思います。心から温まりに来ていただきたいです」

谷「舞台の見どころはやっぱり『役者さん』です!! 足の指先まで、魅力も汚さも良さも人間の全部が観られるのは舞台だけです。今回、自分でも驚いているくらい、魅力的な方々に出演して頂いているので、そんな方々が観られるのは僕も楽しみです。
 『迷子』という作品については、僕は昔から『自殺者をなくしたい』という思いなんです。幸せな人はそのまま幸せでいられると思うので、そうではなく、今のままではちょっと生きていけない人が『あぁ、今日は一日寝てみるかな」と思えたら財産だなと思って、やります」

(取材・文&撮影:河野桃子)

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公演情報

「劇団時間制作第二十二回本公演 「迷子」」のチラシ画像
劇団時間制作第二十二回本公演 「迷子」

2020年11月21日 (土) 〜2020年11月29日 (日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
HP:公演ホームページ

全席指定:6,500円(税込)

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