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三浦涼介

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注目の『手紙』インタビューシリーズ第2弾は、主演・三浦涼介が登場!

“ミュージカルは避けてきた”三浦涼介が、ミュージカル『手紙』の出演を決めた理由。

映画化・舞台化もされた東野圭吾の名作『手紙』が、2016年、ミュージカルとなって新たな世界を紡ぎ出す。主人公・武島直貴役には、俳優・ミュージシャンという二つの顔を持つ三浦涼介が挑む。最愛の兄が殺人を犯したことで人生が暗転、“殺人犯の弟”という烙印を押され、差別に打ちのめされる難役と、三浦はこれからどのように向き合っていくのか。「これまでコンプレックスがあった」というミュージカル出演への心境を語る28歳の決断には、クールでミステリアスなルックスとは裏腹に、熱い男としての覚悟があった。

PROFILE

三浦涼介(みらう・りょうすけ)のプロフィール画像

● 三浦涼介(みらう・りょうすけ)
1987年2月16日生まれ。東京都出身。02年、映画『おぎゃあ。』で俳優デビュー。以降、映画『のだめカンタービレ最終楽章』『るろうに剣心京都大火編』、テレビドラマ『仮面ライダーオーズ/OOO』『妻と飛んだ特攻兵』など話題作に多数出演する。舞台での活躍も目覚ましく、『bambino!』『abc★赤坂ボーイズキャバレー』、近年の出演作では『ボクの四谷怪談』『わたしを離さないで』『ショーシャンクの空に』など。また、ミュージシャンとしての顔を持ち、12年7月、『夏だよHONEY!!』でソロデビュー。以来、『君へのX'mas Song』『escape』『PEARL/Get Up』をリリース。歌とダンスのコラボ曲として数多くのライブ活動を行っている。

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転機となった“ミュージカル嫌い”からの脱却。

――― 人気作家・東野圭吾の代表作『手紙』。その出演が決まったとき、三浦の胸に湧き上がったのは、ミュージカルへの抵抗と挑戦心だった。

「僕はこれまでミュージカルにコンプレックスがあったんです。以前観たものが、台詞を喋っているときと歌っているときが別人格のように見えて何だかなじめなかったのもあって、自分から観に行くこともほとんどなくて。ずっとミュージカルを避けて通ってきたんですよ」

――― その概念を変えたのが、兄・剛志役の吉原光夫が主演を務めるミュージカル『レ・ミゼラブル』だった。

「衝撃でしたね。こんなにカッコいいものだったなんて。普通に感動している自分がいました。『レ・ミゼラブル』は台詞もすべて歌なんです。でも歌だけですべてが伝わってくる。ずっと食わず嫌いだった自分のミュージカルに対する考えがコロッと変わって、今はもうどんどん好きになっていけるんじゃないかなって思っているくらいです」

――― 長らく染みついていた“ミュージカル嫌い”からの脱却は、三浦の視界を大きく広げる出来事となった。先日、足を運んだ、父・三浦浩一と母・純アリスも在籍したミュージカル劇団・東京キッドブラザースの公演では、曰く「人生でこんなに泣いたことがないくらい」の大号泣だったという。

「“あの泣いている坊主頭は誰だ!?”って、あとで客席の間で話題になったくらい(笑)、ずっと泣きっぱなし。一生懸命歌って踊って芝居している姿が、みんなキラキラしていて。こんなに人から人に想いが伝わるんだって衝撃を受けたし、僕ももっと二歩も三歩も上に行かなきゃって刺激にもなった。こんなふうに人に何かを与えられる仕事を自分もさせてもらっているんだということに改めて気づくことができました」

――― だからこそ、三浦は自らの情熱のすべてをかけて、『手紙』という作品に臨む。

「僕みたいなミュージカル嫌いの人間がミュージカルをやることで、僕と同じように“ミュージカルはいいや”って思っている人たちに観てもらった時、何かを変えていけるんじゃないか、何かを伝えていけるんじゃないかって思うんです。もう今はとにかく早く台本が読みたいし早く歌を聴いてみたい。上手いとか下手とかじゃない、気持ちが伝わってくるお芝居を、この『手紙』でやりたいです」

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自分だからできる「武島直貴」を見せる。

――― 三浦の演じる直貴は、“殺人犯の弟”というレッテルから逃れるために、兄との関係を切ろうと葛藤する。

「誰だって人のことなんて切りたくないし、ましてや家族のことなんて簡単には切れない。だけど、切っちゃうんですよね。好きでも、大好きでも、切るときは切るし、そこから二度と連絡をとらないことは平気であると思います」

――― 「それでも家族だからこそ切れないものもあるか」という問いに、三浦は何度も反芻するように頭の中で想像を広げて、「でも家族だから切れないでしょうね、実際は」とこぼした。芸能一家に生まれ、二世俳優として注目を集めた時期もあった三浦だからこそ、境遇は違えど家族に対する想いは、決して一言では語り切れないものがあるように思えた。

「この作品はわりと自分に近いところが多くて、“こんなにわかっちゃっていいのかな?”っていうくらいわかるところがたくさんあった。泥みたいところを這いつくばって生きているところ。人に裏切られ差別されるところ。僕はたまたま人を殺していないし、僕の兄も犯罪者ではないけれど、そういうことをしようと思ったらいくらでもできるって気持ちが僕のどこかにあるんです。“こいつを殺してやろうか”って思う気持ちって、わりと人間っぽいしリアルなものだから」

――― 自らの内面を淡々と明かすその口ぶりには、かえって歩んできた道のりの重みがにじみ出る。

「僕はそういうものを作品として人に見せることにすごく意味があると思うんです。汚い石を削ってみれば、キラキラした宝石が出てくるように。外見は綺麗に飾っているけれど、中身は汚い人がいるように。美しいところと汚いところって両極端だけど同じところにあるというのが僕の考え。この『手紙』は、そういうことを改めて感じさせてくれるし、人に対してどうあるべきか、どうありたいか、自分という人間を測ることができる作品だなって思いました」

――― それはつまり観る者の人間観も測る作品だと言える。そんな深いメッセージ性を帯びた物語を、兄・剛志役の吉原とともにつくり上げていく。

「吉原さんとは、『レ・ミゼラブル』の後に、直接お話しさせてもらいました。変な表現かもしれないけれど、もっとミュージカルの世界の人っぽい感じなのかなと思っていたら、まったく違っていて、どちらかと言うと僕みたいなタイプ。すごく気が合って、会ったその日にもう“お兄ちゃん”って呼んでいました。僕はお芝居をするときは、わりと自分ひとりで突っ走っちゃって、周りの方とコミュニケーションをとりながら作品をつくる作業をあまりやったことがないんです。でも、吉原さんとなら“どんなふうにしていこうか”という話をしていけるんじゃないかなって。自分がこれまで足を踏み入れたことのない場所に行けるんじゃないかと期待しています」

――― 多くのファンを持つ作品だけに、既存のイメージも強い。だが、そのプレッシャーにも三浦はあくまで自然体だ。

「プレッシャーに感じることで身動きがとれなくなっちゃうのは嫌だし、原作のイメージを敢えて崩そうとも思っていません。みんなが想像しているキャラクターがあるように、僕の中にも“直貴ってこんなやつかな”っていうものがある。だから、僕がやるのは、“こんなに素晴らしい作品のこんなに素晴らしい役を僕がやらせてもらったら、こんなかたちになりました”っていうものを提案することだけ。いちばん避けたいのは、“あの役、僕じゃなくても良かった”ってなること。錚々たるメンバーで内心はかなり焦ってはいますけど、コケてコケて傷だらけになって、ギリギリくらいの方が僕はちょうどいいんです。しっかりそこから這い上がっていきたいと思います」


(取材・文&撮影:横川良明)

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公演情報

ミュージカル 手紙

2016年1月25日(月)〜31日(日)
新国立劇場 小劇場
HP:公演ホームページ
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