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加藤健一・山崎銀之丞

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ノルマンディー上陸作戦、成功の鍵は、当日の空模様にあった!?

役者生活半世紀を迎えた加藤健一が送る、記念すべき作品

ノルマンディー上陸作戦といえば、第二次世界大戦中に起きた主要な戦闘のひとつとして知られ、そのストーリーは後に「史上最大の作戦」として映画化されて世界的な大ヒット作品になった。連合軍がドイツ占領下にあったフランス、コタンタン半島のノルマンディー海岸に上陸する日程、いわゆる「D−デイ」を決定するにあたり当日の天候が大きく影響したというのだが、そこに関わった二人の気象予報士を主人公にした作品が、英国の劇作家・俳優のディヴィッド・ヘイグが自ら主演して2014年に初演した本作『プレッシャー』だ。4年後には英国ツアーも実現した作品だが、その日本初演に役者・加藤健一が挑む。翻訳に小田島恒志、小田島則子。演出に鵜山仁を迎え、主役であるイギリス人の気象学者、スタッグ博士を加藤が、相手役であるアメリカ人の気象予報士、クリック大佐を山崎銀之丞が演じる。加藤の役者生活50年、事務所立ち上げから40年という節目に送るこの作品について、加藤、山崎の2人に話を聞いた。

PROFILE

加藤健一(かとう・けんいち)のプロフィール画像

● 加藤健一(かとう・けんいち)
静岡県出身。1968年に劇団俳優小劇場の養成所に入所。卒業後は、つかこうへい事務所の作品に多数客演。1980年、一人芝居『審判』上演のため加藤健一事務所を創立。その後は、英米の翻訳戯曲を中心に次々と作品を発表。紀伊國屋演劇賞個人賞(82、94年)、文化庁芸術祭賞(88、90、94、01年)、第9回読売演劇大賞優秀演出家賞(02年)、第11回読売演劇大賞優秀男優賞(04年)、第38回菊田一夫演劇賞(13年)、他演劇賞多数受賞。2007年、紫綬褒章受章。2016年、映画『母と暮せば』で第70回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。

山崎銀之丞(やまざき・ぎんのじょう)のプロフィール画像

● 山崎銀之丞(やまざき・ぎんのじょう)
福岡県出身。高校の頃には劇団に参加し、アングラ演劇に傾倒するも、福岡公演でのつかこうへい作品『熱海殺人事件』に衝撃を受ける。大学入学のために上京、演劇活動を展開するも挫折し帰郷。一般企業に就職するが、かつての芝居仲間に誘われ舞台に出演。それをきっかけにラジオパーソナリティーとなる。人気番組として知られている最中、つかこうへいとの接点が生まれ、再び上京。つかこうへい事務所の主要な俳優として活躍。さらに舞台だけでなく、テレビドラマや映画でも幅広く出演し活躍している。

インタビュー写真

――― まずこの作品に出会い、上演を決めたきっかけを伺います

加藤「イギリスで観てきた友人が面白いよというので、脚本を取り寄せて読んで上演してみようと。それで小田島さんに翻訳をお願いしました。この話(ノルマンディー上陸作戦)は子どもの頃に観た映画『史上最大の作戦』で印象が深かったのですが、そこに2人のお天気お兄さんがこれほどの活躍をしていたとはね(笑)」

山崎「僕も映画は観ました。出来事としては教科書や本で知ってますが、バックステージというか、そこに気象予報士が参加して、緻密な調査で支えていたということは興味深いですね」

――― 加藤さんも山崎さんもつかこうへいさんの舞台で活躍されたという共通点はありますが、世代は違うので重なってはいませんね。今回の相手役に山崎さんを選んだ理由はありますか。

加藤「台本ではどちらが年上とかそういった指定はなくて、イギリス人とアメリカ人という設定だけです。実は山崎さんとは初共演なんですよ。つかさんを通しても出会っていない。いつかは一緒にやってみたい役者さんだったので今回お願いしたんです」

山崎「僕は加藤さんを前にして凄く緊張しています。なにしろ僕が役者を続けてきたのはつかこうへいという人の存在はもちろんですが、加藤さん達の責任が大きいんです(笑)。17歳の時に故郷の福岡で加藤さんが大山金太郎役だった『熱海殺人事件』を観て凄い衝撃を受けました。あれがなければ役者にはなっていなかったかも知れないくらいです。そこに参加していた加藤さんと一緒に芝居をするなんて、もう光栄この上ない話です。僕にとっては『蒲田行進曲』倉岡銀四郎は風間(杜夫)さんではなくて加藤さん。僕の人生を変えたというかズタズタにされたというか(笑)。そんな先輩が横にいるのは嬉しいですね」

加藤「その福岡公演はもちろん覚えてます。そこに山崎さんが居たのは知らないけど(笑)」

山崎「正直いうと翻訳物は2回目で、日本人が外国人を演じる事に違和感があるんです。でも相手が加藤さんですし、加藤さんの現場を体験できるチャンスだと思って受けました。この先輩はどんな風に稽古場で狂っていくんだろうかと思って(笑)」

――― 今年はご自身の役者生活50年、事務所立ち上げから40年の節目でもありますが、そこにこの『プレッシャー』をあえて持ってきたのでしょうか。

加藤「記念になる作品になる予感がしたもので。それに節目に持ってくるのは、うちの事務所としての初演であるべきだとは思いました。過去にやった作品の再演ではなくてね。結果的に日本初演ということになりましたが。キャスティングについては節目を意識してはいませんね。そもそも僕は他の劇団がやろうがやるまいがあまり気にしないんです。やってみたい作品で上演権が取れればやりますから。事務所立ち上げのきっかけとなった『審判』にしても僕より先に江守(徹)さんがやっていますから」

――― そういえば加藤健一事務所としては、つか作品をほとんど取り上げていませんね。

加藤「亡くなった演出家・俳優の松本きょうじさんがどうしてもというのでやった1本だけです(『松ヶ浦ゴドー戒』)。もう卒業したから良いかなと思って(笑)。つかさん自身が上演する分にはどんどん書き換えてリニューアルするけれど、僕達がやるとなると活字から起こすので、どうしても再演というイメージになりますからね」

――― ところで、タイトルの「プレッシャー」は天候を左右する「気圧」という意味の他、重要な日程、つまり「D−デイ」の決定に関わる「重圧」という意味も含まれます。お二人にとっての「プレッシャー」と転機となった「D−デイ」を教えてもらえますか。

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加藤「転機はたくさんあります。俳優小劇場の養成所に入った時、つかさんと出会った時、つかこうへい事務所が解散してしまって自分でやらざるを得なくて事務所を立ち上げた時。もちろん作品ごとに転機があります。プレッシャーだったのは、つかさんの稽古場に行ったら平田満さんや亡くなった三浦洋一さん達がいて、シチュエーションを与えられると勝手にしゃべり出すんですよ。僕のいた俳優小劇場は台本主体でしたから、台本がないとしゃべれなくて、何かやってみなさいと言われても何もできなかった。その時は凄いプレッシャーでした。何をしゃべればいいのか分からないんですから。その後はつかさんの独特な口立て芝居で稽古が進みますが、つかさんも詰まると『後は家で考えてこい』なんてね。お陰でそういった技術も覚えました」

山崎「僕はやはり最初に度肝を抜かれた『熱海殺人事件』ですね。高校に通いながら地元のセミプロ劇団に参加していたころでした。その後大学で上京して自分たちで芝居を作り、にっちもさっちもいかなくなって、解散して一度福岡に帰って就職したんです。ところが営業先で再会した、福岡時代に一緒に芝居をしていた仲間がつかさんのコピー劇団をやっていて、一本だけと頼まれて『寝盗られ宗介』に出たんです。芝居を辞めて帰郷したのにという葛藤はありましたが根が好きですからね。それがきっかけで地元ラジオ局から声をかけていただきパーソナリティをやることになりました。実は福岡に帰ったのはつかさんが劇団を解散したこともきっかけでした。一番近くに行きたかった相手だったのに辞めてしまったので、挫折感を背負って帰ったのですが、その後につかさんが芝居の世界に復帰したものだから、番組のゲストとしてつかさんへのロングインタビューを録って放送しました。それがきっかけで『引退屋リリー』のヒロインオーディションを手伝うのですが、受かったのは福岡県内の女子高生2人と僕(笑)。『おまえも合格だ』『女子どもがするような仕事は辞めて、東京に出てこい』と言われまして。結構人気の番組だったので辞めるのに半年かかりました。でもその間は毎日のように上京を促す電話があったのだけど、いざ上京したら今度は『本当に来たのか』って言われて(笑)。稽古場では『なんのために生きているんだ』『クニに帰れ』『生きている価値がない』『おまえの優しさが人を傷つけていることになぜ気づかない』なんてぼろくそに言われまして、10日間で7キロくらい痩せました。番組を辞めて意気揚々と出てきたけれど、もう帰ろうと思いました。その時稽古場には20人くらいの役者がいたんです。そんなある日、飯食いに行こうと言われ行った先で『こんどの熱海、おまえで行くから』って(笑)。もう、はぁ?って感じですよ。『この人、ちょっとおかしい』と。その翌日、稽古場に行ったらそこには4人しかいなかったんです。それは凄い体験でした。上京をせがまれている時は『おまえは10年に一1人』とか『横綱だ』とか言われるんだから、この人を嫌いになるわけがないじゃないですか。『一生ついていく』と思って上京したら徹底的に突き落とされたんですから。もう泣きながら焼肉食ってました」

――― それはまた壮絶な転換とプレッシャーのミクスチャーですね(笑)。ではお2人から観客へ向けてのメッセージを頂きたいのですが。

加藤「僕自身とても期待している内容の芝居なので、ぜひお客さんにも期待して欲しいです。ただ(コロナ感染症の影響で)劇場の定員が制限されるかも知れません。そうなるともちろん収入は減るんですけど、でも一度ちゃんと作っておかないと、再演もできませんし、お客さんを入れられなくても予算を削るわけにもいきませんから、いつも通りにきっちり準備します。たくさんの人に観てほしいです。劇場は安全ですよ、天井は高いし、換気もシッカリできてますからね」

山崎「こんな時期に限られた環境での上演になりますが、今まで加藤さんが積み上げてこられたキャリアや、参加される役者さんに魅せられた皆さんが来てくださることを切望します。楽しんで貰うためには自分自身も楽しんで取り組みたいですね。最近はどの現場でも最年長になることが多いのですが、今回は先輩がいるので(笑)そこには甘えつつ、楽しんで創り上げたいと思います」

――― ありがとうございました。


(取材・文&撮影:渡部晋也)

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公演情報

「プレッシャー -ノルマンディーの空-」のチラシ画像
加藤健一事務所 vol.108
プレッシャー -ノルマンディーの空-


2020年11月11日 (水) 〜2020年11月23日 (月・祝)
下北沢 本多劇場
HP:公演ホームページ

12名限定!5,500円(全席指定・税込) → 4,800円さらに300Pゲット!


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