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朝海ひかる・平埜生成

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朝海ひかると平埜生成が、運命に翻弄される兄と妹/母と息子を演じる

初演から40 年余、新たに生まれ変わる禁忌の愛の物語

こまつ座〈井上ひさしメモリアル10〉第5弾『日の浦姫物語』が、9月に幕を開ける。井上ひさしが初めて文学座と杉村春子のために書き下ろした初期戯曲を、鵜山仁の新演出で届ける今公演。宿命の愛に翻弄される日の浦姫を演じるのは、清廉さと妖艶さを兼ね備えて観客を魅了する朝海ひかる。兄として、そして息子として禁忌を犯す稲若と魚名の2役を若手演技派として注目を集める平埜生成が演じる。

PROFILE

朝海ひかる(あさみ・ひかる)のプロフィール画像

● 朝海ひかる(あさみ・ひかる)
宮城県出身。梅田芸術劇場所属。1991 年宝塚歌劇団に入団。2002 年雪組トップスター就任。2006年退団。近年の主な作品に【舞台】『黒蜥蜴』(演出:デヴィッド・ルヴォー)、『黄昏』(演出:鵜山仁)、『TOP HAT』(演出:マシュー・ホワイト)、新国立劇場2018/2019シーズン演劇『かもめ』(演出:鈴木裕美)など。井上作品には『しみじみ日本・乃木大将』、『國語元年』、『私はだれでしょう』に出演。

平埜生成(ひらの・きなり)のプロフィール画像

● 平埜生成(ひらの・きなり)
東京都出身。アミューズ所属。近年の主な作品に【舞台】『オーファンズ』(演出:宮田慶子)、『DISGRACED』(演出:栗山民也)、『誰もいない国』(演出:寺十吾)など。【映画】『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』、『空母いぶき』など。【TV】『おんな城主直虎』、『正義のセ』、『今日から俺は!!』、『悪党~加害者追跡調査~』など。こまつ座作品には『私はだれでしょう』に出演。

インタビュー写真

“やってはいけない”何かに惹かれることは、誰にでもある

――― 戯曲を読んで、現時点での印象は?

平埜「めちゃくちゃ面白いなと思いました。人間って、やってはいけないことに惹かれるところがあるじゃないですか。今回で言うと近親相姦とか、表に出してはいけないことに対する思いや、それに対する懺悔とか、そういう気持ちが言葉になって台本にされていて、こんなものすごい本があるんだ!って。戯曲が書かれた1978年当時、この作品は杉村春子さんに書き下ろしたという経緯があって、『女の一生』の名台詞が最後に出てくるなどの遊びもあるんです。他にもグレゴリオ一世の話だったり、オイディプスの話だったりが入っていて、読み物として完成されてるなっていう印象ですね。
 あと、井上さんは『せまい国土に大勢の人間、ひとつの言葉、ひとつの文化、ひとつの中央。日本は近親相姦的社会』と仰っていて。メディアのツールのおかげで人間関係は希薄になってるかもしれないけど、無責任にいろんなことを言ったりするような感覚が、『近親相姦』という言葉にすごく集約されているのかな、と思いました」

朝海「近親相姦っていうと、ありえない話に思われるかもしれないですけど、人間だったら誰でも感じたことのある本能と理性の闘いが仰々しくなく書かれていて、すごい勢いで読んでしまいました。読み終わった時、聖書を読み終わった感覚に似ているなと思ったんですよね。私、小さい頃に教会の日曜学校に通っていて、アダムとイブやカインとアベルの物語を読んだのですが、その感覚に似てるというか。教えを説かれているとか、そういう堅苦しいところは一つもなくて、笑ったり泣いたりしながら読んでいるだけなんですけど、最後まで読み終わった後に聖書を読んだような気持ちになって、これはすごいな!って思いました」


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途方もない作品だからこそ、迷った時は戯曲に立ち帰る

――― 平埜さんは、稲若と魚名の2役です。

平埜「最初は、役というよりも、またこまつ座さんに呼んでもらえた喜びが一番大きくて、それから相手役がのりぴーだって聞いて、すごい作品で再会することになってしまったなと……あ、のりぴーって呼んでるんですけど」

朝海「本名がのりこなので、のりぴーって呼ばれてます(笑)」

平埜「ただ、今は不安しかないです。この台詞を僕はちゃんと喋れるだろうか?と。“井上さんの台詞”を喋ることの重さ、責任の大きさを改めて感じています。だって、一字一句間違えちゃいけないじゃないですか」

朝海「うん」

平埜「そういうことも含めて、責任が大きいって勝手に思っちゃって。でものりぴーがいるから大丈夫かな?なんて。今回、僕、のりぴー以外に過去に共演させていただいている方が誰もいないんですよ、鵜山さんも初めてですし、文学座の方がいっぱいで。皆さんすごいキャリアがあって、観客として観ていてすごいと思っていた方たちの中に、僕だけ異物が入る感覚で」

朝海「それは緊張する。ドキドキするよね」

――― 今仰った言葉をそのまま借りれば“異物”な平埜さんが、なぜ今回この役をオファーされたと思いますか?

平埜「井上さんが好きだからじゃないですかね。“井上ひさしの本”が好きで、ずっと読んでいましたし、いつか絶対やりたいなと思っていて。そして、その夢が叶ってこまつ座さんに出演した時も、こまつ座でまたやりたい!という思いも伝えていましたし。それだけじゃないですか。だから、気持ちって伝わるもんなんだなって」

朝海「ね。言霊だよね」

平埜「井上作品は、人間賛歌でもありながら、人間の愚かな部分もすごく客観的に、天からの目というか……どこか人間をバカにしているような視点が、すごく僕は面白いなって思っていて。井上さんは“日本のブレヒト”とも言われてますけど、ブレヒトの作品もそういうのが多いですよね」

――― 朝海さんは、日の浦姫を演じることについてはいかがですか。

平埜「杉村春子ですよ!」

朝海「やめてよ〜! 私世代はやっぱり、杉村春子“先生”っていう感覚があって、杉村先生に書かれた役っていう時点でなんかもう、途方もなさすぎて。ちょっととっかかりが見つからないので、そこはもう除外して、日の浦姫というキャラクターだけにフューチャーして、あとはもう全部、鵜山さんにお任せしようと思っています」


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――― 先ほど平埜さんが「一字一句間違えちゃいけない」と仰っていましたが、井上作品は言葉を大切にすることでも知られていますよね。役者さんの作業としては、大変ではないですか?

朝海「確かにそうですね。でも、井上先生の作品では、稽古の途中であーもう分かんない!となって壁にぶち当たった時、台本をよく読むことで救われたことが何回もあるんです。句読点の位置とか、漢字で書ける字をわざわざ片仮名や平仮名で書いてあるとか、そこに先生のメッセージがすごく詰まってる。だからそこに帰るといろんなことを教えてもらえるし、稽古をやればやるほど奥の深さが分かる。役者のことをきっとすごく愛してくださっているから、こんなに優しく書いてくださったんだろうなと、愛を感じます」 

平埜「でも僕は、逆に残酷だなとも思うんです。どんな役者でもこの通り言えば面白いんだから、っていう脚本にも感じられる。それって、僕じゃなくてもいいのかな、俳優を信じていないのかなと思ってしまう自分もいて。一字一句そのままじゃないといけないのはなぜだろう?とか、そういうことを『私はだれでしょう』の時から考えてたんですけど、辻萬長さん(※)がインタビューで『しっかりと一字一句間違えることのないように台詞を覚えること。これがなかなか大変なんだ。まず、書かれた文字を確実にそのまま覚えるのが基本だ』みたいなことを仰っていたのを読んで、それはちゃんとやろうと思って。今回もその作業から始めなきゃいけないですけど、やっぱり僕の中で、井上ひさしという存在はいろんな意味ですごく面白いです」(※辻の字は一点しんにょうが正式)


石を投げる側、投げられる側。誰もがどちらにも立つ可能性がある

――― お2人で禁断の関係を演じるというのは、どんなお気持ちですか。

平埜「僕はもう、大好きなんで。光栄です」

朝海「私も好きですから」

平埜「『私はだれでしょう』の男性陣、吉田栄作さんとか大鷹明良さんとか尾上寛之さんとかに自慢したい」

朝海「女性陣は、みんな一緒に観に来るって。グループラインで盛り上がって、しばらく生成の話題しかなかったよ」

平埜「えー!」

朝海「私たちが近親相姦で、子供で尚且つ夫にもなりっていう、複雑で入り乱れた役柄を演じるってところで、“きゃー! あの生成と!”みたいな感じで、女子的な会話が盛り上がった(笑)」

平埜「でもこれ、結構そういう話ですよね。女性が結構、“きゃー!”みたいな」


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――― 男性はないですか?

平埜「どうでしょう……。禁断の愛、出してはいけないとこに手を出してしまう、そういうのはありますよね。でもやっぱり、女性の方が精神年齢が高いっていう印象があって、例えば学校でも教育実習の先生に恋をしてたりとか、あったと思うんですよ。なんで人間って、駄目っていうのに憧れたり惹かれてしまうんだろうなっていうのは感じる。そういうのはなかったですか?」

朝海「ありがちだけど、私は全然なかった。あんなおじさん嫌だ、みたいな(笑)」

――― 逆に今回の役のように、すごい年下はどうですか?

朝海「なくはないですかね(笑)」

平埜「僕もすごい年上、ゼロではないです。重度のマザコンですし。でも、日本の映画とかドラマとか、結構そういう禁断の関係って描かれるじゃないですか、不倫とか。なんで皆そういうのを見たがるんだろう?って考えちゃいます。スキャンダルって大好きじゃないですか、日本人って」

朝海「私自身は人のものって欲しくならないんだよね。彼女とか好きな人がいると知ったら、そこで戦おうとは思わない。ただ、他人事として見るのは好きなの。“うわ、不倫してるー!”みたいな。で、このお話の最後、説教聖と三味線弾きの女に群衆が石を投げるシーンがあるんですけど、そういう意味では、私も群衆の1人なんだよね」

平埜「そういうことなんですね」

朝海「これ、今のSNS社会と何一つ変わってないんですよね。人間の性というか、群衆として一かたまりになってしまうと、恐ろしい力を向けてしまう、罪を犯した人間を罰してしまう。人間はきっと、何千年も昔から変わらずこういうことをやってきていて、今もそれが問題になってるけど、改めようとしない。井上先生の作品は毎回そうですけど、戯曲の世界が最後は放たれて観客のところにわーっといく感じが、今回もすごくありました。だから、観客の方達がどれだけのものを持って帰ってくださるのかっていうのも、私たちに課せられている一つなのかなと思いますね」

――― お互いに「なくはない」と仰っていたということは、当事者になる可能性もゼロではないということですよね。群衆側・当事者側、どちらもあり得る。

朝海「そうですね。だから、皆さん誰もが、石を投げる側にも投げられる側にもなり得るってことです。観終わった後、そんな風に思っていただけたらいいですよね」

平埜「高校生とか、若い子にも観て欲しいなあ。どう思うんですかね」

朝海「R指定かな? でも本当は観て欲しいよね」

平埜「こまつ座さんと出会って、令和になり、僕にとって一番最初の舞台が『日の浦姫物語』だっていうのが、すごく意味があって。こういう作品を演じられることが本当にありがたいし、嬉しいし、楽しみなので、是非皆さん、この舞台を観に来てください」

朝海「演出が鵜山さんになり、演じる者も違うので、前回の蜷川さん演出の舞台(2012年)とは大分印象が変わると思います。全身全霊で演じるのは当たり前ですが、そのための体力作りをして、アンテナも磨いて、鵜山さん独特の演出、表現方法を残らずキャッチして、日の浦姫に注ぎたいと思います」


取材・文:土屋美緒 撮影:間野真由美
ヘアメイク:安海督曜 スタイリスト:渡辺慎也[コア ホール]


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公演情報

「日の浦姫物語」のチラシ画像
井上ひさしメモリアル10 こまつ座第129回公演
日の浦姫物語


2019年9月6日 (金) 〜2019年9月23日 (月・祝)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
HP:公演ホームページ

一般:8,500円
◎一般割引:8,500円 → 6,200円!
U-30:5,000円(※観劇時30歳以下・要身分証)
(全席指定・税込)

※一般割引対象公演は、「公演スケジュール」をご参照ください。
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