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蓬莱竜太

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中年オタクと愛されない主婦……

セカイの片隅で寄り添うように暮らしていく二人の物語

1999年に旗揚げしたモダンスイマーズは今年20周年を迎える。今回の「ビューティフルワールド」は節目の公演となるわけだが、座付き作家の蓬莱竜太によればお祝い気分はなく、いわゆる1つの通過点だと素っ気ない。20年続けてきた劇団という“装置”を使って、蓬莱が描き出すのはどんな物語になるのだろう。

PROFILE

蓬莱竜太(ほうらい・りゅうた)のプロフィール画像

● 蓬莱竜太(ほうらい・りゅうた)
1976年生まれ、兵庫県出身。
高校時代に担任教師から半ば強制的に演劇部入りを命じられて芝居作りの楽しさに目覚め、上京後の1996年3月舞台芸術学院演劇科本科卒業。舞台芸術学院の同期生・西條義将(主宰)と劇団モダンスイマーズを1999年に旗揚げ。以降、モダンスイマーズ全公演の作・演出を手がけながら舞台版『世界の中心で、愛をさけぶ』や舞台版『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』などの話題作を担当し、骨太な筆致から若手劇作家として各方面から注目を浴びる。「まほろば」で第53回岸田國士戯曲賞。「母と惑星について、および自転する女たちの記録」で第20回鶴屋南北戯曲賞。「消えていくなら朝」で第6回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞を受賞する。

● モダンスイマーズ
舞台芸術学院での同期である西條義将(主宰)と蓬莱竜太(作・演出)の出会いによって発足。劇団メンバーは、同学院の古山憲太郎、津村知与支、小椋毅と生越千晴(新人)の6名で構成されている。人が生きていく中で避けることのできない機微、宿命、時代性を作家の蓬莱竜太が描いていく。作品ごとに全く違うカラーを提示しながらも多くの人々を惹き付けるドラマ性の高さには定評がある。丁寧に創りあげる演技空間は体温を感じさせ、機を衒わない作品はいつも普遍の力を宿している。最近稀になってきた“劇団力”も評価され、その結束力も魅力の一つである。平成24年度(第67回)文化庁芸術祭優秀賞受賞。

インタビュー写真

演劇を1つの現象として考えると、劇場はそれを発生させるための容器だと考えられる。そして装置に当たるのが劇団という事になるだろう。もちろん一公演限りの企画のように、その度パーツを容器=劇場に放り込んで装置とすることもできるが、劇団となると基本的な構造が固まっているので、どんな容器に入れてもその装置=劇団なりの動作特性(クセ)が表れる。これが劇団の個性という事になるだろう。そして劇団という装置が完成すると、今度はそれをどれだけ使い続けるかという問題が生まれてくる。続けるためにはメインテナンスが必要だし、成長してくれば容器を選ぶようにもなってくる。それらのヴァージョンアップを間違えるときっと装置は壊れてしまう。つまり解散ということになる。

舞台芸術学院で出会った西條義将と蓬莱竜太が1999年に旗揚げしたモダンスイマーズ。当初から参加している古山憲太郎、津村知与支と数年遅れて参加した小椋毅。そして唯一の女優であり新人メンバーの生越千晴という6名で構成されるこの劇団は、規模を着実に大きくしてきたものの、内部構造の変化、つまりメンバーチェンジはほぼ無い形で上手にヴァージョンアップを重ね、今年20周年を迎えるまでになった。次回公演「ビューティフルワールド」は節目の公演となるわけだが、座付き作家の蓬莱竜太によればお祝い気分はなく、いわゆる1つの通過点だと素っ気ない。20年続けてきた劇団という“装置”を使って、蓬莱が描き出すのはどんな物語になるのだろう。


――― 今作の「ビューティフルワールド」。この時点でわかっていることと言えば、中心となるのは冴えない中年男性と長年連れ添った亭主から愛されない主婦だということ。そこからいったいどんな物語に進んでいくのか。

「DV、パワハラ、モラハラ等、女性が男性社会の中で受けるものが、実は理不尽なモノなんだと世界レベルで認識され社会問題化していますが、登場する中年主婦はそういった状況にある女性で、夫は社会的に見ても良くない存在です。一方の男性はといえば引きこもりやニートの傾向がある中年オタクです。こちらも年老いた親がニートの子供を養うという社会問題を反映している。つまり、2つの問題が出会ったようなものですね。そんな恋愛から遠いところにいたこの2人が出会って惹かれ合ってしまったら、どういうことが起きるのかと思いました。

2人は欠けているあるピースを埋めるために惹かれ合うけれど、いざピースを埋めるとそのとたんに歪みが生まれる。つまり大団円のその先があって、そこを書きたいわけです。2人がまとまって、しばらく一緒に暮らしたらどうなるか。しばらく時間が経ったところで元旦那の愛情と、求め合い慈しみ有った2人の愛情をふるいにかけたらどちらが残るかわからなくなるんじゃないか。その時人間は何を持って判断するのか。愛情がずれてきたときにそこにどんな問題がおこるか。そういったことに興味があります。もしかすると、もっと人を傷つけるかもしれない」

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――― 公演資料の最期の一文にはこうある「この二人のセカイには何が残るのか」。まさにこの言葉の通り、そこに残るものを蓬莱はのぞき込もうとしている。

「恋愛って面白いですね。ものすごくかけがえのないものに出会ったという感覚が、その後の2人を苦しめていくこともあるんじゃないかと。出会うべくして出会い、お互いの尊厳を護り合ったという形が、ひっくり返ると怖いことになる。そんなドラマにしたいと思います。怖いですね。男女って結構ホラーだと思います。そこにどんな言葉が生まれて、どんな闘いがあるかが大事です。そして闘った後には結果はどうあれなにかがあるわけですから」

――― 蓬莱曰くモダンスイマーズは「生々しい舞台を目指す劇団」だという。確かに現実からしばし離れて、非日常の世界に思考を飛ばすような演劇とは対極の、人間の本質を意地悪なくらいに掘り下げて、そこにアイデンティティを見いだすような演劇。蓬莱はそんな演劇を観客にぶつけていく。

「僕は人間がある状況になった時、もがく中に人間のエネルギーや美しさがあると思っています。誰もが家族、夫婦、会社、学校、地域、そのほか色々な場所で闘っているわけで、そういった人々が舞台を見に来るわけです。だからそれらの闘う人を肯定したいし、苦しむことが生きている証だという肯定もしたい。そしてその先に違った朝が来るかもしれないという祈りも込めたい。さらに僕自身、そんな風に自分自身を激励したいんです。

単なるドラマやフィクション。役者を良く見せるために都合よく書かれたドラマではなくて、人間がそこに立ち、話して闘う姿を演じきることに演劇の可能性を見いだしたいです。そのなかでお客さんに色々なモノが刺さっていくわけです。『そう都合良くないドラマ』をつくることで、僕達の日常を肯定したいですね」

――― 言うまでも無いかも知れないが蓬莱竜太は現在もっとも注目される若手作家の一人だが、彼の周辺に起こっている環境の変化は、自身の成長も促すが、現状への疑問も大きくするはずだ。その意識は刷り上がったフライヤーの「10周年の際に20周年はないと思っていた」という一文に現れている。

「えぇ、10周年で劇団員と呑んでいるときに、僕自身が劇団はもういいかなと思っているという話をしたことがあります。いつ辞めてもいいかな、とね。外部の仕事の影響もありましたが、劇団員が僕の中で素材として面白くなくなってきて、無理に続ける必要があるのかと思った時期だったんです。モチベーションが上がらないなら、そこに創作の時間を費やす意味は無いのかなと。そういったことは早めに劇団員に話しておかないと、という思いもありました」

――― 10周年を迎えた2009年は蓬莱が「まほろば」で岸田国士戯曲賞を獲った年。大きな環境の変化があったであろうことは想像に難くない。


インタビュー写真

「丁度30歳過ぎたあたりで、メンバーもほぼ同世代でした。20代に夢を見て演劇を初めたものの、30代に入ってくると続けているのがちょっと惰性になっている、そんな雰囲気があったんです。演劇論は全うに話すし、真面目なんだけれども、なんだか窮屈な感じが僕にはありました。だからその当時、お客さんから「20周年も楽しみにしています」なんて言われても、そんなことわからないよと(笑)。だからこそ20周年が実際にやってくるとは、想像していなかった」

――― 劇団にとって○○周年は営業的な意味も込めて派手に騒ぐところが、蓬莱にとっては冒頭に書いたように1つの通過点にすぎないというのはそんな想いによるところが大きいのだろう。

「特別感はないですが、よく続いたなという想いはあります。だからお客さんにはモダンスイマーズが20年続けてきた軌跡の中でこの作品があると捉えてもらえると、ある意味付加価値が付くのかなと思います。そしてここまで定期的に公演を打っては来ましたが、そのスタイルも今後は変わるかも知れない。そういったことの節目にはなるかもしれません。

ただ劇団って作家にとって実験的に、前のめりに書ける場所でもあるので、ある方がいいと思います。商業演劇に書く時は誰に焦点を当てて書かくべきかが明確なんです。その役者を中心に経済が回るわけだから、主役を素敵に見せるのが使命なわけです。でも劇団だとそうはいかないし、そもそもホームがあるというのは強みになりますね。やりたいことにも挑戦しやすいですし。

まあ商業演劇を書き続けるのも劇団の作品を書き続けるのもしんどいわけで、両方することでコントラストが生まれるし、同じ創作でも質が違うモノに触手を伸ばすと、劇団で得たものを商業に、商業で得たものを劇団に還元するという循環がうまれます。もっとも最近はその境界がなくなってきたかな、という気もしています」

――― モダンスイマーズであれ外部であれ、きっと蓬莱はこれからも精力的に作品を発表し続けるだろう。それを追いかけることは一人の劇作家の成長をリアルタイムで追いかけることに他ならない。そしてそんな体験は同時代に生きるものにしか与えられない特権。だからこそ是非劇場に足を運びたい。チケット代も安く抑えられていることだし。

「高校生なんか1000円ですから! やっぱり若い人にも観てもらえるようにという意識はあります。だってそうしないと(演劇を)やりたい人も増えないですから。今のチケット代って若い人に優しくないと思います。もちろん高くてもみんなが払えるような経済状況なら良いですが、今はそんなこといっていられない。こちらも良いものをつくるから、それを見てもらうことで演劇を愛して欲しいですし、今この時期にそういった人を増やさないと、今後誰も演劇なんかやらなくなりますよ。それはつまり才能が集まらないと言うことだしね。だから頑張らざるを得ないことなんです」

――― その心意気に応えて、是非劇場に足を運んでもらいたい。

(取材・文&撮影:渡部晋也)

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公演情報

「ビューティフルワールド」のチラシ画像
ヨルノハテ
ビューティフルワールド


2019年6月7日 (金) 〜2019年6月23日 (日)
東京芸術劇場 シアターイースト
HP:公演ホームページ

30名限定!3,000円(全席指定・税込)→ 【指定席引換券】2,500円さらに500Pゲット!(5/23 17時35分更新)
詳細はこちら
「ビューティフルワールド」のチラシ画像
ヨルノハテ
ビューティフルワールド


2019年6月7日 (金) 〜2019年6月23日 (日)
東京芸術劇場シアターイースト
HP:公演ホームページ

全席指定(前売):3,000円(税込)
※張り出し舞台になりますので、B列が最前列席扱いとなります。
 A列はございませんので購入の際はご注意くださいませ。

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