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劇団BDP

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嶽本あゆ美 脚本/演出によるミュージカルを10代後半〜20代前半の若者たちが熱演!

虚構と現実の中で浮き彫りになる女子高生のリアル

 年間50本以上のミュージカルを制作している劇団BDP。その養成機関であるBDPアカデミーでは、高校生〜大学生の団員たちが、各々の夢に向かって演技の腕を磨いている。
 そんなBDPアカデミーの次回公演は、アメリカの劇作家アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』に取り組む高校演劇部を描いた『彼女たち』。魔女裁判を題材にした『るつぼ』と、ネットを使った生徒同士のいじめが交錯する内容で、これまでに2回ストレートプレイで上演されているが、今回はそれをミュージカルに改作。登場人物と同世代のキャストならではのリアルさと、子どもミュージカルから積み重ねてきた経験値が生み出す化学反応は必見だ。物語の核となるキャラクターを演じる5人が、厳しい稽古の合い間に意気込みを話してくれた。

PROFILE

山川ひなの(やまかわ・ひなの)のプロフィール画像

● 山川ひなの(やまかわ・ひなの)
2000年1月25日生まれ、現在大学1年。小学6年生のときに児童劇団「大きな夢」へ入団。高校3年からBDPアカデミーに所属。出演した主な作品は『魔女バンバ』『しあわせの青い鳥』『パパからもらった宝もの』『KAGUYA〜月の娘たち〜』など。

上原咲季(うえはら・さき)のプロフィール画像

● 上原咲季(うえはら・さき)
2000年7月30日生まれ、現在高校3年。小学2年生のときに児童劇団「大きな夢」へ入団。高校1年からBDPアカデミーに所属。出演した主な作品は『ロビンソン*ロビンソン』『ピエロ人形の詩』『パパからもらった宝もの』『緑の村の物語』など。

本吉南美(もとよし・みなみ)のプロフィール画像

● 本吉南美(もとよし・みなみ)
1998年8月10日生まれ、現在大学2年。小学3年生のときに児童劇団「大きな夢」へ入団。高校1年からBDPアカデミーに所属。出演した主な作品は『ピエロ人形の詩』『ロビンソン*ロビンソン』『しあわせの青い鳥』『飴屋の夜に』『姫神楽』など。

渡来美友(わたらい・みゆう)のプロフィール画像

● 渡来美友(わたらい・みゆう)
2001年4月1日生まれ、現在高校3年。小学5年生のときに児童劇団「大きな夢」へ入団。高校2年からBDPアカデミーに所属。出演した主な作品は『ピエロ人形の詩』『魔女バンバ』『しあわせの青い鳥』『パパからもらった宝もの』『KAGUYA〜月の娘たち〜;』など。

石井美優(いしい・みゆ)のプロフィール画像

● 石井美優(いしい・みゆ)
1998年7月24日生まれ、現在大学2年。小学1年生のときに児童劇団「大きな夢」へ入団。高校3年からBDPアカデミーに所属。出演した主な作品は『ロンの花園』『桃太郎!』『夜空の虹』『ピエロ人形の詩』『パパからもらった宝もの』など。

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ミュージカルに改作され、よりわかりやすくなった

――― まず、それぞれが演じるキャラクターについて教えてください。

山川ひなの(主人公・須崎藍羅役/ダブルキャストA組)「新しく演劇部に入ってくる転校生で、とても大切に思っていた兄を亡くして心に深い傷を負っている子です。さらにクラスメイトからも嫌なことをされたりして、周りの子とは違うんだなというのを彼女に感じます。私も、自分の経験の中からそれに近いものを思い出しながら彼女に少しでも近づいて、一緒に成長していけたらいいなと思います」

上原咲季(須崎藍羅役/ダブルキャストB組)「藍羅は誰にも心を開かない、ちょっと冷たい雰囲気を持った子ですね。でも本当はすごく純粋で、演劇をやっていたお兄ちゃんに憧れて自分も演劇部を目指したんです。だから冷たいだけじゃなくて、そういうちょっとした愛らしさみたいなものを表現できたらいいなと思っています。今までやったことのない感じのキャラクターなので、とても新鮮です」

渡来美友(芳沢 黎役/ダブルキャストA組)「私が演じる芳沢は演劇部の部長です。責任感が強い優等生なんですけど、心の中には良いこと悪いこといろんな感情があって、でもそれを表に出さないで隠している。その良い部分を認めてくれる後輩もいれば、同級生には悪く思われていたりして、可哀想な女の子です。私はまだ部長らしい強さを表現できていないので、これからもっとそこを出せたらいいなと思います」

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本吉南美(芳沢 黎役/ダブルキャストB組)「根は真面目なんですけど、心の中に孤独を抱いているというか、誰にも悩みを打ち明けられず一人で必死にもがきながら、部長だから頑張らなきゃいけないって思ってる。でもそれが空回りしちゃうところもあって……JKのリアルな悩みが一番よくわかる役なので、そういうところを表現していけたらなと思います」

石井美優(田辺雛子役/B組)「私が演じる田辺は、決して悪い子じゃないんですけど、きつい子。言葉を選ばないというか、思ったことをすぐ言っちゃうんです。仲の良い友達もいるけど、自分が興味のあること以外はどうでもいいと思ってる。須崎のことも芳沢のこともどうでもよくて、でも干渉してくるから気に入らない……というキャラクターです。ただ、演劇は好きなので、練習とかはちゃんとやる子なんですよ」

―――人間関係がギクシャクしている演劇部なんですね。実際はBDPアカデミーで一緒に頑張っている皆さんにとって、それを演じるのはなかなかきついのでは?

石井「だから、普段は極端に仲良くするようにしています(笑)。休憩時間も芝居の延長で過ごすと、本当に空気が悪くなってしまうから。仲が悪い演技って仲良くないとできないと思うので、積極的に喋るように心がけています(笑)」

―――本吉さんは2014年の再演にも別の役で出演していたそうですが、そのときはストレートプレイでした。ミュージカルに改作された『彼女たち』の印象は?

本吉「ものすごく豪華になりました。こんなに豪華になった『彼女たち』に出演できるみんなは幸せ者ですよ……私もですけど(笑)。劇中劇の『るつぼ』と現実がミックスされていて、ちょっと難しい内容でもあるんですけど、歌が加わったことによって、よりわかりやすくなったと思います。普通の歌だけじゃなくラップもあって、私たち自身すごく楽しいし、きっとお客さんも“わあ!すごい!”って思ってくれる作品になると思います」

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今までの積み重ねだけではない、新しい引き出しを

―――『彼女たち』は、劇作家の嶽本あゆ美さんがBDPアカデミーに書き下ろした作品で、嶽本さん自身が演出にも参加しています。稽古はどんな感じですか?

山川「嶽本先生はけっこうズバズバと言ってくださるので、こちらも引き締まりながら指導を受けています。とても面白い視点を持っていらっしゃる方で、私が今まで出会ったことがないような人です。刺激をたくさんいただいています」

上原「表現の仕方をとても細かいところまで丁寧に導いてくださるんですけど、そこで求められているものが私はなかなかできなくて、苦戦しています。でも“そんなところまで見てくださってるんだな”という緊張感があるし、自分で見えていなかった部分がしっかり見えてきているのを感じます」

渡来「脚本家の先生が演出してくださることで、自分も“あっ、そういうことか”と気づけることが多いです。今まで別に気をつけていなかったわけではないけど、ストーリーの中で特別何かをしていないときの立ち姿とか表情、感情まで気を配りながら、ちゃんと芳沢として生きようと思いました」

本吉「嶽本先生の演出は、ガッツがすごいんです。先生の方からパワーを出してくださるから、私たちもそれに応えなきゃいけない。“やらなきゃ!”って思いますね。普段はプロの役者さんも演出されている先生の言葉はやっぱり重みが違いますし、こちらも言われて気づくことも多くて、“やっぱりそうだな”とか“これも大事だな”ってなります」

石井「今まで言われたことのなかったような指摘が飛んできて悩んだりもしますけど、そこで自分は何をすればいいのかを考えさせてくださるのが嶽本先生の演出です。自分たちが今まで頑張って積み重ねてきたものが一度壊されるというか、新しいものに変えてくださるんです。過去にやってきた役の中で、“あのシーンのこれが使えるな”と思ってやってみても、全然通用しなかったり。自分の引き出しを広げてくださるところがある先生です」

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キャラの濃いみんなが、作品の中でぶつかり合う面白さ

―――今は皆さん学業の傍ら演劇活動をしていますが、将来の目標は?

渡来「私はまだアカデミーに入って1年の未熟者ですけど、舞台作りの裏側にも参加するようになって、その大変さを知ってびっくりしました。小さい頃からずっとミュージカルが好きなので、まずは演劇系のミュージカル科がある専門学校に進学したいと思っています」

上原「小さい頃の私は引っ込み思案でしたけど、舞台に立つようになってからは積極的になれました。そんなふうに、ミュージカルをやることで人間的にもいろんなことを吸収できるということを、もっとたくさんの人に知ってほしいです。だから具体的な形はわかりませんが、ずっと演劇には関わっていきたいですね」

本吉「私もアカデミーに入ってから、舞台は本当にたくさんの人に支えられて作られているんだということを実感しました。目指しているのは女優ですけど、常に周りに対する感謝の心を持ち続けていたいし、謙虚でありたい。それに、アカデミーでいろんな先輩方の後ろ姿を見て頑張ってきたので、自分も後輩たちにとってそういう大きな存在になりたいです」

石井「私は舞台を支える側の人間、できれば制作の仕事につきたいなと思っています。やっぱりミュージカルって、まだまだ日本ではそんなに浸透していなくて、いきなり歌い始めたりするのが苦手だという人もいらっしゃいます。でも私たちはそれを素晴らしいと思ってやっているので、その素晴らしさをもっと広めたいです!」

山川「やっぱり女優で食べていけるようになるのが夢です。それともう1つ、劇団BDPの代表である青砥 洋先生の名前をもっと世の中に広めたい、残したいと思っています。私が一番尊敬している方なので、この劇団をもっと大きくするのに役立てる人間になりたいです」


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―――では最後に、お客様に向けて一言ずつお願いします。

石井「BDPアカデミーの作品は割とファンタジー系が多くて、今回のように現代社会を描いた演目って私はやったことがなかったんです。アーサー・ミラーの戯曲と、いじめなどの社会問題がうまくミックスされているところが一番の魅力だし、特に同世代の子は共感できるところが多い作品じゃないかと思います」

本吉「チラシとかのビジュアルを見ると、若い子向けの作品なのかなと思う方もいらっしゃるかもしれませんけど、誰もが学生時代の悩みや不安、リアルな感情を思い出すような作品になると思います。もちろん現代社会の問題とかもありますけど、それもありつつ、懐かしさのようなものもきっと感じてもらえる作品だと思うので、ぜひ劇場に足を運んで、全身で感じていただきたいです」

上原「アカデミーのメンバーはほとんど子どもミュージカルからずっとやってきて、さらにお芝居が好きで続けたいから入ったという人がすごく多いから、お芝居も上手だし、私自身、稽古ではいつもみんなに刺激をもらっています。まだ若いけど、こんなパワーのある劇団があるんだよっていうのが伝わる舞台を作りたいし、みんなの迫真の演技をぜひ観てほしいです」

渡来「キャストの中には現役の高校生もいるし、学校の良いことも悪いことも経験してきた私たちだからこそ、リアルな作品になると思います。さらにダブルキャストなので、同じ作品でもA組とB組では大きく違います。だから、できれば両方観てほしいです。歌も音楽もダンスも全部素晴らしいので、ぜひ観に来てください」

山川「周りからは、たかが学生って思われがちですけど、自分のことはさておき、どうしてこんなにすごい人たちが集まってるんだろうって思うくらいレベルの高い劇団だと思うんです。メンバーのキャラもすごく濃くて、いろんな子が集まってる。そういう子たちが『彼女たち』の中でぶつかり合う様子は、きっと楽しんでいただけると思います。そして歌もダンスも本当にカッコいい。全部今回のために新しく作られたものなので、私たちも覚えるのに必死ですけど(笑)、ぜひいろんな人に観ていただきたいです」

(取材・文&撮影:西本 勲)


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