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2010年に旗揚げされた演劇集団イヌッコロ。初の戌年となる今年、人気作品を様々なかたちで上演する「イヌフェス」を開催している。その第三弾では、Twitterでファンから上演してほしい演目をアンケート募集。1位に輝いたのが、旗揚げ公演で上演された『オタッカーズ・ハイ』だった。イヌッコロで演出・脚本を手がける羽仁修が「これだけはもう演じることはないと思っていた」と語る一作だけに、最近のイヌッコロとはひと味違う一面が見られそうだ。
● 星乃勇太(ほしの・ゆうた)
94年3月9日生まれ。神奈川県出身。主に舞台で活躍中。代表作に『CHaCK-UP』シリーズ、『狐島の鬼—咲きにほふ花は炎のやうに—』、『モブサイコ100』など。
● 森 訓久(もり・のりひさ)
72年10月10日生まれ。愛知県出身。声優、俳優。演劇集団イヌッコロのメンバーとして活動中。『まわれ!無敵のマーダーケース』、『となりのホールスター』など多数のイヌッコロ作品に出演。
● 長谷川哲朗(はせがわ・てつろう)
演劇集団イヌッコロのメンバーとして活躍中。『恋するアンチヒーロー』、『ご町内デュエル』など多数のイヌッコロ作品に出演。
● 羽仁 修(はに・しゅう)
演劇集団イヌッコロの作・演出家。イヌッコロ全作品のほか、トライフルエンターテインメントプロデュース『双牙〜ソウガ〜』(2014年/脚本)、『ドラゴンクエスト]特別ステージ「冒険者たちのホテル」』(2017年/脚本&演出)などを手掛ける。
ストーリーもセットもチケット代までもあえて同じに
――― 旗揚げ公演作でもある『オタッカーズハイ』。ストーリーはどのようなものですか?
羽仁「ストーリーは旗揚げ公演時とまったく同じです。とある大学のサークルに、いろんな趣味をもったオタクたちがいる。そして大学の生徒会長は、そのサークルを潰したいと考えている。そこで『アイドル公演を成功させたら存続させてやる』という無理難題を突きつけられるわけですが、準備に奮闘して何とか成功させられそうだ、というところまでこぎ着けた。が、当日になってアイドルにドタキャンをされる! そこで急遽、部員の一人をニセのアイドルに仕立て上げ、それぞれが自分のオタク能力を生かしながら何とか乗り切ろうと奮闘する……というものです」
――― イヌフェス第三弾で、この演目を上演することになった理由は?
羽仁「Twitterでファンに、上演してほしい演目の人気投票をおこなったんですよ。そうしたら、意外にもこの旗揚げ公演の演目が選ばれた。だからあえて、ストーリーもセットもまったく同じにしました。それだけでなく、チケット代金も初公演時に近い価格にしています」
いろんなオタクが登場するのがみどころ
――― それではキャストの皆さん、演じられるキャラクターについて教えていただけますか?
星乃「僕は主人公の柳井を演じさせていただきます。一見好青年に見えて、実は一番オタク、という役どころ。羽仁さんの脚本が本当に面白くて、自分の役ながらニヤニヤ笑いながら読んでいました。あと、今回初めて座長を務めさせていただくのですが、そこはかなり緊張していますね……。でも今までにない自分を見せられたらなと気合いは入っています」
羽仁「星乃くん演じる柳井だけは、最後まで何のオタクか明かされないんですよ。それは実に意外なものなのですが、物語の最後に暴かれますのでお楽しみに!」
森「僕は旗揚げ公演時と同じ、アイドルオタクの毒島です。サークルの部長なのですが、自分勝手でやりたいように振る舞う男。それで生徒会長とやり合っているうちに『アイドル公演を成功させる』という無理難題に乗ってしまう。さらにそのアイドルにドタキャンされると、無理矢理代役を仕立てて乗り切ろうとするなど、みんなを振り回す役どころです」
長谷川「僕はガンダムオタクです。……」
羽仁「終わりかよ!(笑) 長谷川が演じる山内は、物静かだけど意外と観察眼があるという不気味な男ですね」
長谷川「そうですね。でも実は僕は、ガンダムのことはまったく知らないんです。初演のときもガンダムにまつわる台詞をなかなか覚えられなくて苦労したんですが、今回も不安いっぱいです。実は初演のとき、ガンダムの声優さんの一人が観に来てくださったんですけど、僕がシャアの台詞を言ったシーンに関して『シャアというよりアムロっぽかった』と言われたんですよ。でも僕はそもそもシャアとアムロの違いがよく分からなかったので、そう指摘されてもピンとこなかったのですが……」
回し役にもとことんこだわった羽仁演出を堪能してほしい
――― イヌッコロの作品はすべて羽仁さんが脚本・演出を手がけています。羽仁さんに対する印象も教えてください。
森「僕とてっちゃん(長谷川さんのこと)は旗揚げ公演時からずっと羽仁さんと一緒にやってきているので、気心が知れてますね。ただ今回演じるのは8年前に演じた作品なので、何かしら培ってきたものを見せられないと怒られるかな、と気合いが入っています。あとは、大学生を演じるわけですけど、実際はオーバー40ですから、どれだけ大学生に見えるか……。その点は、『やるじゃないか』と羽仁さんの予想を覆したい。大学生といっても何浪かして何回か留年している人もいると思うので、何とか27、8歳くらいに見えるところまで持っていければと……」
星乃「僕は、羽仁さん脚本の作品を演じたことが過去にあるんですけど、演出作品でもご一緒するのは初めて。一体どういうスタイルでこられるのか、ワクワクしています。しかも大先輩たちとの共演なので、何とか食らいついていけたらと思っています」
長谷川「羽仁さんは、普段は大雑把なんですけど演出は細かいんですよ。それはいい意味でも、『こまけーな』という意味でも(笑)。だから僕たちのような回し役も、すごいこだわりを持って描いてくれています。それがつながって生まれるワンシチュエーションコメディを楽しんでもらえると嬉しいですね」
ルールがない作品だけに役者の幅が問われる
――― 最後に、見どころを教えていただけますか?
羽仁「イヌッコロの特色であるシチュエーションコメディの面白さは、今作もしっかり出ていると思います。あと今回は学園ものなので、お祭り騒ぎ的なテンションも楽しんでいただければと。とにかくいろんなオタクが登場するので、ちょっと違った楽しさがあると思うんですよ。バカバカしさとか、ムチャクチャぶりとか、仲間意識とか、そんなところを押し出したいと思っています!」
――― 今日の取材でも皆さんとても仲が良くて、この空気感が舞台からも伝わってきそうですね。
羽仁「いやー、実はこの演目だけは再演はないかなと思っていたんですよ。何せ大学生の役ですからね。8年前の旗揚げ公演時ですら、僕らもう30代後半でキツイと思っていましたから。実年齢が近いのは主役の星乃くんぐらい。ほとんどのキャストが40歳を超えた今、みんながどこまで演じきることができるかも見どころですね。まあ、森さんだけはやたら前向きですが(笑)」
――― でも最近イヌッコロのファンになったという人にとっては、嬉しい上演ですよね。
長谷川「僕、再演が決まって、前回の公演をDVDで観たんですけど、今観てもやっぱり面白かった。なのできっと、新しくファンになった方にも楽しんでもらえると思います」
羽仁「最近のイヌッコロ作品はどちらかというと無駄がなくてシャープなものが多かったんですね。でも『オタッカーズハイ』は旗揚げ公演用に作った演目ですから甘いところがいっぱいあるし、ルールもほとんどありません。それだけに役者さんの幅が問われる作品でもある。アドリブもいっぱい入れられるでしょうから、皆がどれだけ楽しみながら演じられるかが鍵になってくるでしょうね」
――― ということは、ますます座長の役割が大事になってきますね?
星乃「うわー! ただでさえ初めての座長で緊張してるのに、困ります!!」
(取材・文:山本奈緒子/撮影:友澤綾乃)