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劇団天動虫

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「健気に持ちつづけるその情熱にお客様の心を揺さぶるものが絶対にあると思っています」

劇団天動虫流冒険活劇再び! 六と仲間達が京の都を縦横無尽に駆け巡る!

帆足知子主宰、劇団天動虫の第7回本公演『THE SHOW MUST GO ON !!』が上演される。 本作は劇団旗揚げの初期、2013年に第2弾公演として上演され、およそ5年ぶりに実力派俳優を迎え再演する。物語は江戸時代、京の都の阿国一座を舞台に、主人公・六(ろく)と仲間たちの心の葛藤と成長を描く。前回に引き続き主演・六を務めるジョニーは、思い入れのある本作をどうブラッシュアップするのか。主宰の帆足とジョニー、前回作から続投する浅倉洋介、今回初参加の山丸りな(流山児★事務所)に話を聞いた。

PROFILE

帆足知子(ほあし・ともこ)のプロフィール画像

● 帆足知子(ほあし・ともこ)
10月3日生まれ、東京都出身。
流山児★事務所出身を経て2012年、劇団天動虫旗揚げ、主宰。すべての作品の演出・美術・音楽・衣裳などを担う。2010年より演劇ワークショップを開催し若手の育成に力を注ぐ。近年の作品に、舞台『飛び火』、『Salvation-救済-』、『JUKEBOX2018』など。

ジョニー(じょにー)のプロフィール画像

● ジョニー(じょにー)
9月8日生まれ。
劇団天動虫・劇団員。旗揚げから参加するメンバーで、少年役から女性役、道化役までこなす実力派。天動虫作品のほぼ全てに出演。主な出演作品は、劇団天動虫『Salvation-救済-』『喧嘩仲裁屋』一人芝居『MIMIO (「夜長姫と耳男」より)』、ひげ太夫『煙のミロク』、椿組花園神社野外劇『ドドンコ、ドドンコ、鬼が来た!』など。

山丸りな(やままる・りな)のプロフィール画像

● 山丸りな(やままる・りな)
1990 年 8 月 13 日生まれ。東京都出身。
流山児★事務所所属。2010 年入団。美術大学に通っていたが一念発起で女優の道へ。『愛と嘘 っぱち』で舞台デビュー。舞台を中心に他劇団の出演も積極的に行っている。近年の出演作に、『オケハザマ』『ブランキ殺し 上海の春』、『メカニズム作戦』などがある

浅倉洋介(あさくら・ようすけ)のプロフィール画像

● 浅倉洋介(あさくら・ようすけ)
1978 年 7 月 17 日生まれ、兵庫県出身。
流山児★事務所、風琴工房を経てフリーに。舞台を中心に活躍中。近年の作品に、ミナモザ『Ten Commandments』、Ammo『ノスタルギヤ』、温泉ドラゴン『山の声』など。

インタビュー写真

次はどんな展開が待っているんだろう? とても面白い作品≫

帆足「この作品は劇団にとってとても大事な作品です。再演はもう少しあとにやろうかとも思っていましたが色んなタイミングと、とても良いキャストが揃いまして、ベストメンバーで挑みます」

――― ジョニーさんは初演に出演されていらっしゃいますが、当時の事は覚えていますか?

ジョニー「とてもお話が面白い台本で、作家も新作として書いていたので、当時は完結した台本を1度に貰うわけではなく、第一稿が上がり続きの第二稿が上がってストーリーが日々進む状態だったんです。連続テレビ小説を見ている気分で、次はどんな展開が待っているんだろうとすごく楽しくなっちゃって、続きが読みたくて結末がどうなるのか気になりすぎて興奮して眠れなかったことを思い出しました」

浅倉「初めて劇団天動虫に出演したのがこの作品でした。 元々帆足さんと女子校の教え子さんで立ち上げた劇団だったので女の子しかいなくて、次は男性も出てくる作品をやりたいということでオファーを受けましたが、やはり現場に行ったら俺以外は女性しかいなくて(笑)、ほかの男役はみんな女の子が演じていたので浮かないかなと心配になったことを思い出しました。台本も面白くて、作家さんのひねくれたPOPセンスと切ない感じが持ち味で、作家さんの良さと帆足さんのアングラや宝塚歌劇団に影響を受けて育った独特の世界観がいい感じにクロスしている作品じゃないかな。ずっと手伝って色んな作品を見ていますが、この脚本が一番好きでとても思い出深い作品ですね。今回は初演とは違う役なので楽しみです」

――― 劇団天動虫へ初参加となる山丸さん、台本を読んだ印象はいかがでしたか?

山丸「とても切ないです。タイミングが噛み合っていれば全部上手くいくのに、これが人生なんだなあと思いました。ありきたりな言葉ですがとても面白くて、出演のお話を頂いた時にこれはやらせていただきたいと思いました」

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劇団天動虫の作品作りの最初の一歩は、主宰の帆足氏より作家に作品の題名(タイトル)が渡される。作家はそのタイトルからインスピレーションを受け作品を描く独特のスタイルでモノづくりが進む

帆足「今作はQueenの『THE SHOW MUST GO ON』から始まっています。とても良い曲で聞いた時は大変感動しまして、どんな曲か調べたらフレディ・マーキュリーが死ぬ間際に歌った最後の曲で、歌詞も『たとえ化粧がはがれても最後まで舞台に立たなければいけない』とフレディが歌っていて絶対この題名だと。その後は舞台から発想したのか阿国に繋がり、江戸時代というヒントは一言も言っていませんが江戸時代になり驚きましたね」

物語は歌舞伎がまだ始まる前の阿国が歌舞伎をはじめてから少し経った時代。三代目・阿国の一座に主人公・六(ろく)が入り込み、そこで様々な人と出会う成長物語だ。

――― 主人公・六を再び演じるのは5年ぶりですが、どんな思いですか?

ジョニー「六は盗人見習いでただのガキんちょなんです。そんなガキんちょがちょっとデカい事をしてやるぞと奮起して街に飛び出し、一座の山丸さん演じる三代目に一目ぼれしてしまう所から物語がはじまります。夢を見てがんばりますが何もうまくいかないかわいそうな子で、切ないけれど生きている、そういうところに人間味を感じます。5年前がむしゃらに演じていたら結果そう見えたかもしれませんが、今回は六の想いや人間らしさをもっと明確に表現できたらと思っています。恋をすることによって大人の男になる成長をおみせしたいです」

――― その恋のお相手・三代目(おせん)は本作のヒロインですね。

帆足「観ている人はヒロインとは思わない可能性もありますが、六がこの役に惚れなければ物語が展開しないし、彼女が恋をすることでお話が転がり、全てのきっかけを作る人物です」

山丸「まず一目惚れしてもらえるように役を磨きます! ちょっと変わり者で衰退した阿国一座を盛り上げるためにがんばりますが、ひとりぼっちの時に優しく声をかけてくれた人に恋をしてしまいます。本当は六も同じことを思ってくれているのに、ちょっとタイミングがずれただけで伝わらない、切ないですよね」

浅倉「同じ言葉でも言う人によって伝わり方も変わってしまうし、人生はタイミングなんですよね」

山丸「一座を守る三代目という部分はぶれない様に阿国一座をどれだけ愛せるか、それが今の目標です。一座を守る為に一生懸命にがんばる不器用なポンコツヒロインです(笑)」

帆足「そうそう! だからこそ六が惚れてしまいます」

ジョニー「初めは恋とは気がつかないんです。一生懸命な彼女に理屈なく魅かれるので、その一生懸命さがぶれないからずっと好きで、想いは変わらずにいられるのかな」

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ボタンの掛け違いから生まれる切なさも見所になりそうだ。そして初演とは別の役所になる浅倉氏、今回は一見、六の指南役という立場だがキーパーソンになるようで期待が膨らむ。

浅倉「読み書きができない六の代わりにラブレターをイイ感じに代筆してくれる恋文代筆屋役です。ほぼ六と一対一のからみがメインになりますが、恋の相談に乗りつつ実は彼の大事な過去にもつながっていて、そこに再び向き合った時に筆一本で周りの奴らをおどらせてやろうという想いが湧いてくる、実は一番悪い奴かもしれません(笑)。もともと悪い奴ではなくて事の成り行きでそうなってしまう、そこがこの役の見所ですね」

――― 場面によって人が変わりそうですね。

浅倉「そういう部分も表現できたらいいですね。最初はいいあんちゃんで最後はすごく嫌われるといいな、楽しみですね」

初演を見た方は全然違う作品と感じるのではないかと

――― 初演との違いはありますか?

帆足「初演は7人くらいで上演したので、ひとりで何役もこなしました。 お客様が混乱してしまうので今回は基本大きな役はひとり一役に変わり、大人の男性役は男性が演じるのでその部分が一番大きく変わっていると思います。とても層が厚くなって、初演を見た方は全然違う作品と感じるのではないかと。そして前作の第6回本公演『Salvation-救済-』にも出てくださった井村昂さん(少年王者舘)が重要人物で登場します。井村さんの存在は大きいですね」

――― この3人をどう見せようか、プランはありますか?

帆足「ジョニーは少年役が続きましたが、六はやはりジョニーしかいないと。今までやってきた少年役の中でリアルに女の子に恋をする役なので性別的には男の子。等身大の男の子になればいいなと思いますね。それはりなちゃんが三代目をやることでより引き立つのではないかな。りなちゃんは流山児★事務所の女優で初舞台から観ていました。この作品をすると決まった時から三代目役にはりなちゃんがピッタリだなと。不器用なのに一生懸命で可愛い! りなちゃん以外に誰がやる(笑)! 彼女の持っている良さをそのまま、更に輝く形でできたらいいなと思っています。流山児を目指して自分も演出家としてがんばっているので『もっと輝くりなちゃんをみせてやる』という気持ちです。浅倉くんについて、初演の時の役は硬派なカッコ良さで秘めた想いがとても素敵でした。ベルサイユのばらで言えばアンドレみたいな役だったんです。今回はニヒルで気付かせない優しさが滲みでる役なので、浅倉くんの良さがこの作品でどうエッセンスとして際立つか。私が浅倉くんとやる時は、彼がどう持ってくるかを楽しみにしているので、それがうまく生きる様にやっています。今回は再演なので、きっといっぱい持ち込んでくれると思っています。3人ともそれぞれの良さや人間としての持ち味が出るといいですね」


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健気に持ちつづけるその情熱にお客様の心を揺さぶるものが絶対にあると思っています

――― それぞれの挑戦も含めて見所を教えてください。

浅倉「初期衝動を持ち続けることがいかに大変か、故にいかに凄いことか、そういうことが伝わればいいなと思いますね」

ジョニー「浅倉さんがおっしゃる通り、登場人物たちがそれぞれ何かに情熱を燃やしていて、叶わないのに健気に持ちつづけるその情熱に、お客様の心を揺さぶるものが絶対にあると思っています。言葉で説明するよりも役者自身が体現できたら。そして初演で男として腹をくくるシーンがとても難しかったので、今回はその大事なシーンをより突き詰めてリベンジしたいです」

山丸「舞台上で人間臭さが出るといいなと思っていて、ステージ上でカッコ悪ければ悪い程カッコいいのではないかと、そう見えればいいなと思っています。あと個人的には流山児★事務所という劇団に在籍していまして、歴史ある劇団で、もし座長が居なくなり自分が座長になったらなんて考えられないですが、それぐらい阿国一座も歴史ある一座なので共感できる部分があると思っています。その一生懸命さを見所にできたら」

――― 最後にメッセージをお願いします。

浅倉「恋をしましょう!」

山丸「一緒に演劇しましょう!」

ジョニー「一緒に泣いて笑ってください!」

帆足「心に突き刺さる芝居になっています。役者ひとりひとりの『THE SHOW MUST GO ON !!』(何が起ころうとも続けなければならない)という姿を体感しに来てください!」


(取材・文&撮影:谷中理音)

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