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ゴツプロ!

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いま話題の男たち=ゴツプロ!が初の本多劇場公演で「和」の世界に挑戦

台湾公演決定! 熱い思いを津軽三味線に託した男7人の姿を情感豊かに描く人情喜劇

 全員40代のゴツゴツした男たちが、下北沢の小劇場に熱い風を吹かせている。2016年1月の旗揚げ公演以来、濃厚な人情喜劇で観る者の心を揺さぶり続ける劇団、ゴツプロ!が、新作『三の糸』を上演する。苔むす山奥に住み、ただひたすらに津軽三味線を弾く男たち7人の物語。
 それぞれテイストの違う過去2作ともまた異なる、役者同士の新たなぶつかり合いを堪能できそうな本作は、第3回公演にして初の本多劇場進出でも話題となっている。そんなゴツプロ!から塚原大助(主宰)、泉知束、渡邊聡の3人と、竹田新の筆名で脚本を手がけ、ゴツプロ!では演出も担当する山野海に話を聞いた。

PROFILE

塚原大助(つかはら・だいすけ)のプロフィール画像

● 塚原大助(つかはら・だいすけ)
1976年7月16日生まれ、東京都出身。2005年に新宿紀伊国屋ホールにて上演された、44 Produce Unit『フツーの生活 長崎編』 にて山野海と共演。それをきっかけに、ふくふくやの劇団員となる。2016年にゴツプロ!を旗揚げ、主宰を務める。同年、ゴツプロ合同会社を設立。2018年夏には『銀河鉄道999』〜GALAXY OPERA〜への出演が決まっている。

泉知束(いずみ・ともちか)のプロフィール画像

● 泉知束(いずみ・ともちか)
1976年9月4日生まれ、熊本県出身。1996年に劇団麦『紅き唇』で俳優デビュー。以後、映画やTV、舞台などに数多く出演。2000年に演劇ユニットTeam Chicaを旗揚げし、主宰・作・演出・主演を務める。2005年の映画『月桂哀歌』(樽沢勇紀監督、《第8回インディーズムービーフェスティバルグランプリ受賞》)では脚本も担当。

渡邊聡(わたなべ・ただし)のプロフィール画像

● 渡邊聡(わたなべ・ただし)
1970年6月19日生まれ、東京都出身。俳優として映画やTV、舞台などに数多く出演。中でも、今井雅之作『THE WINDS OF GOD』は舞台版の全国公演や映画版2作を通して長く関わる。国際免許を持つアレクサンダーテクニークを用いた俳優のアクティングコーチや歌手のレッスンも行う。

山野海(やまの・うみ)のプロフィール画像

● 山野海(やまの・うみ)
1965年9月16日生まれ、東京都出身。1999年に劇団ふくふくやを立ち上げ、看板女優として全公演に出演。竹田新名義で全作品の脚本も手がける。ゴツプロ!第1回公演『最高のおもてなし!』で演出家デビュー。『救命病棟24時』『八重の桜』など映像作品にも多数出演している。

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このメンバーと一緒にやりたい、という思い

―――もともと塚原さんは、山野さんが主宰する劇団ふくふくやの中心メンバーの一人ですが、ゴツプロ!を結成したいきさつは?

塚原「もともと、主宰というものをやってみたいという思いはずっとあったんです。ふくふくやで約10年、いろんな経験をさせてもらって、徐々に自信がついてきた今のタイミングで、このメンバーと一緒に何かを作ろうと。僕は作家・竹田新の世界観が大好きなので、その中で誰とやりたいか、ということで集めたメンバーでもあります。山野海との付き合いは、ゴツプロ!のメンバーでもある44北川が主宰する44Produce Unitの『フツーの生活3 長崎編』(2005年)で共演させてもらったのがきっかけでした」

山野「最初、彼はお芝居を始めて何年も経ってない時期で、まだ若かったし、今よりも全然固い子でした。でも情熱とエネルギーだけはあって、お芝居に対する真面目さもすごかった。それで仲良くなって、まずふくふくやの公演に出てもらったんです。それまでたぶん塚原がやったことがない、いわゆる二枚目じゃないような役を書いていったら、どんどん面白くなってきて、劇団員になりませんかとお誘いしました」

―――ふくふくやで塚原さんが芝居の幅を広げていったことが、ゴツプロ!結成にもつながっているのですね。

塚原「もちろんそうです。本当に頭と精神が一致して、僕の中で「今やるべきだ」というちょうどいいタイミングでした。最初はゴツプロ!も、まず1回やってみようというものだったんですけど、第1回公演『最高のおもてなし!』で盛り上がりすぎちゃって(笑)。次もう1回やろうか、じゃあ本多目指すか、地方でもやろう、海外でもやろう……という話になって。それで法人化もして、腹を決めてやろうと言ってるのが今の状態です」

―――今日はメンバーの中から泉さん、渡邊さんに来ていただいています。塚原さんからお二人を紹介していただけますか?

塚原「渡邊は、今井雅之さんの映画『THE WINDS OF GOD -kamikaze-』(2006年)で、泉は『フツーの生活』の再演(2010年)でそれぞれ共演させてもらったのが最初です。共演以外でもしょっちゅう一緒にいる仲間たちで、何かの打ち上げに行けば必ず顔をあ合わせて酒を酌み交わすような仲でした」

泉「僕は基本的にずっと一人でやってきました。Team Chicaという演劇ユニットを主宰していますが、それも自分がやりたいときにメンバーを集めて、好きなものをやるっていうだけで、正直、劇団にはあまり興味がなかったんです。でも40歳を目前にして、仲間と一緒にやるというのはすごくいいなと思うようになって。一人でやっているといろいろ限られるし、なかなか頼ったりもできないけど、今はすごく安心感があるというか。さっき大助(塚原)が言ったように、自分にとってもタイミングが良かったと思います。ゴツプロ!のメンバーって、みんなどこかしらそういうところがあるんですよね。一人ずつちゃんと立てる人たちが集まって、面白いことができている気がします」

渡邊「僕はずっと教える仕事をやってきた時間が長いのと、さっきの『THE WINDS OF GOD』も舞台版を高校生の演劇鑑賞会で演出したりというようなことを10年くらいやっていました。それが終わって、またいろんなことをやっていきたいなと思っていたとき、塚原と『ぼくはだれ』という舞台(2014年)で共演したんです。そのとき、命がけで芝居をするというか、ぶつかり合いが熱くて。僕もそういうのが大好きだったので、もっとそういうことを発信していきたいなっていう矢先にゴツプロ!の話をいただいて、ありがたかったですね。メンバーもみんな好きな人たちばかりだし、自分が俳優として勝負していくところをもう一度見つけた、みたいな気持ちです」

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三味線を通して、作品へ向かう気持ちを高めていく

ーーー第1回公演『最高のおもてなし!』では豪華客船のクルーを描き、第2回公演『キャバレーの男たち』は文字どおりキャバレーを舞台にした作品でした。そして今回の『三の糸』では津軽三味線と、公演ごとに全く毛色の違う作品になっています。

山野「それぞれの俳優の魅力をどんどん広げていきたいので、あまりひとつの色にならないようにということは考えます。あとはちょっとした仕掛けとして、何か芝居以外のものをやっても面白いだろうと思って、『キャバレーの男たち』ではおじさんたちに歌を歌わせたので、じゃあ次は津軽三味線をやってもらおうと。もともと去年『三の糸』というタイトルだけは浮かんでいて……私はいつもタイトルから浮かぶんです」

塚原「そこからチラシのイメージとかがどんどん膨らんで。僕らの方もそういうものを作ることで海さんを煽るというか、感性を刺激していこうという話はよくしています。前の2作品もそうだったし、そこからまたインスピレーションが湧いて、世界観を広げてくれるだろうと」

山野「追いかけ回されてます(笑)。津軽三味線に関しても、小山会という有名な団体を塚原が見つけてきてくれて、1年以上前から三味線の稽古を始めています」

―――メンバーに三味線の経験者はいらっしゃるんですか?

塚原「誰もいません。ゼロからです。最初の2〜3ヶ月はほんとに不機嫌で(笑)」

泉「大助がね(笑)。「音が出ねえ!」って(笑)」

塚原「3本の糸(弦)をバチで叩き分けるのが大変なんです。僕は楽器自体まったくやったことがなかったので、どうして手首はこんな角度で構えなきゃいけないんだ!みたいな感じで……でも、少しずつ自分の思いどおりに動くようになってからは、メロディを奏でることが気持ち良くて。今はもうサルのようにやってます」

山野「ある種の快楽だよね」

塚原「小山会の三代目の方に作っていただいたオリジナル曲を毎日みんなで練習していて、それはすごく気分転換になるというか、リラックスの素にもなっています」

渡邊「いやあ、ハマりました」

山野「渡邊は今一番うまいですよ」

塚原「でも、弾いているときに目をつぶるのがすげえ腹立つんです(笑)。気持ち良さそうに弾いてるツラが(笑)」

渡邊「こっちは真面目に弾いてるのに(笑)」

泉「でもほんとに楽しいし、普通の舞台よりも思いが募っていくというか、ハリウッド映画とかで1年くらいかけて役作りをするみたいなのにちょっと近い感じがします。顔を合わせて楽器をやっているだけでグルーヴ感が生まれていくのは、今までになかった感覚ですね。山野さんがそういうのを僕らに課してくれることで、僕らもいろんな意味でステップアップできていると思います」

山野「もちろんプロには及ばないとしても、私から見ても頑張ってるなっていうくらいの仕上がりです。先日あるパーティーでお披露目させていただいたんですけど、そのときの反応もすごかった。やっぱり津軽三味線って心に響くんですよね。あと、男の横並びが好きなので(笑)」

塚原「常に横に並ばされるんです(笑)」

山野「多少、面が悪くても横に並べば……(笑)」

泉「どういうことや!(笑)」


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おじさんたちが本気で遊んでいる姿を見てほしい

―――こうしてお話を聞いていると、ゴツプロ!での活動がメンバーの皆さんにとって、とても大切なものだということが伝わってきます。

塚原「もちろん作品を観ていただきたいというのは大きいんですけど、我々40過ぎのおっさんたちが集まってゲラゲラ笑って、楽しそうに生きている。こんなチームがあるんだよっていう、そこを世の中に一番伝えたいですね。ゴツプロ!はいずれ海外公演もと思って活動してきて、『三の糸』は台湾でも上演することが決まっているのですが、世界中どこでも共感してもらえるんじゃないかという自負はあります」

渡邊「先ほども言ったように僕は教える仕事が多くて、プロの俳優さんも含めたいろんな方のプライベートレッスンとかもやっているんですけど、そういうことのベースにある人との関わり方というか、ぶつかり合いができるのがゴツプロ!だなと。
 だいたいオヤジと呼ばれる歳になると「もういいよ」「しょうがないよ」っていう感覚が強くなると思うんですけど、そういうの関係なく、むき出しのところでぶつかり合って何かが生まれる。僕はそこが一番大好きなところだし、それを見て何かを感じてくれる若い子たちも増えていると感じます。他の作品に呼ばれるときも、ゴツプロ!を見ていただいたのがきっかけというのが多くて、この輪をもっと広げていきないなと思っています」

泉「何かの看板を背負うというのは、ゴツプロ!に入って初めて意識するようになりましたね。「最近ゴツプロ!ってよく聞きますよ」って言われるとすごく嬉しいし。今年は久しぶりに舞台を4本もやらせてもらったんですけど、舞台をたくさんやるという意識もゴツプロ!を始めてからすごく強くなったので、いろんな意味でゴツプロ!の存在は自分の中で大きいなと思います」

山野「この人たちがどんどん自信がついてくるのが、そばで見ているとよくわかるんです。芝居の幅もどんどん広がっていくのを目の当たりにすると、やっぱりゴツプロ!がなければこういう変わりようはしないと思うし、見ていてすごく楽しくて頼もしいですね」



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―――最後に、ゴツプロ!初体験の方に向けてメッセージをお願いします。

塚原「男の40代って勝負どころだと思うんですけど、周りの同級生とかが、我々が熱くやってるのを見て刺激をもらったとか、自分たちも仕事を頑張ろうと思ったって言ってくれるんです。こっちはほんと楽しんでるだけなんですけど、それがゴツプロ!の一番の強みだと思っています。一生懸命やる、必死にやるということだけじゃなくて、今はそれを全部ひっくるめて楽しむっていうところまでいけているので、コイツら楽しんでるな、俺も楽しもう頑張ろうっていう力を、舞台から全面的に押し出していければなと思います」

泉「今大助が言ったようにエールを送るというか、観てくれた人は元気をもらってほしいし、また明日から頑張ろうって思えるものであってほしい。だから、演劇好きの人にはもちろん観てほしいんですけど、そうじゃない人も一歩踏み出して観てほしいなと、すごく思いますね。一人でも多くの方に、僕らの生きざまというか、今しかできないことを今観ていただきたいです」

渡邊「僕らはもう、どんな生きざまだろうと全部出します。そうやって舞台上でフルに生きてる姿を出していって、観ている人に「ああ、生きてるって楽しい」とか「もっと生きたい」というところが伝わったらなと思います。自分の人生も捨てたもんじゃないな、くらいの感じで大事に生きていってもらえたらいいですね」

山野「おじさんたちが本気で遊んでいる姿を見てほしいです。ホントに本気で遊んでるんですよ。遊びってそうじゃないと面白くないし、それが一番、今のゴツプロ!を集約した言葉じゃないかなと思っているので、それをぜひ見てほしいなと思います」


(取材・文&撮影:西本 勲)


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