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えのもとぐりむ・松田大輔・宮下貴浩

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観てくれた方が答えを見出せる、何か光が見えるような作品を届けたい

【ぐりむの法則】×SHOGO(175R)×東京ダイナマイト。この化学変化は計測不可能!

えのもとぐりむが共作したいアーティストと新しい試みに挑む企画【ぐりむの法則】。数々の作品の中で2016年12月に上演した『東京のぺいん』は、とある深夜のバスの待合室で繰り広げられるコメディ作品として誕生。ぐりむ作品には欠かせない看板役者・宮下貴浩と175R・SHOGOの圧倒的な存在感が話題となった。
1年ぶりシリーズ2作目となる本作では、宮下とSHOGOはもちろん続投、そしてお笑い界で一目を置かれている東京ダイナマイトの松田大輔が加わることで注目が集まる。

PROFILE

宮下貴浩(みやした・たかひろ)のプロフィール画像

● 宮下貴浩(みやした・たかひろ)
1981年2月27日生まれ。長野県出身。劇団居酒屋ベースボール所属。水野美紀・えのもとぐりむ・福澤重文との演劇ユニット「かくたすのいるところ」としても活動。11年3月以降、劇団居酒屋ベースボール本公演およびプロデュース公演全作品に出演。近年の出演作に、映画『ディグリード』、映画『ソーリーベイベー』、舞台はプロペラ犬『珍渦虫』、唐橋充脚本『百年の虎独』再演(出演と演出)など。

松田大輔(まつだ・だいすけ)のプロフィール画像

● 松田大輔(まつだ・だいすけ)
1977年3月2日生まれ、岐阜県出身。お笑いコンビ『東京ダイナマイト』をハチミツ二郎と組んでいる。受賞歴は、第4回「オートバックスM-1グランプリ2004」第8位、第9回「オートバックスM-1グランプリ2009」第6位。代表作は、CXドラマ『潔癖クンの殺人ファイル2』、EX土曜ワイド劇場『デパート仕掛け人!天王寺珠美の殺人推理7』、CM『マクドナルドハッピーセット』など。

えのもとぐりむ(えのもと・ぐりむ)のプロフィール画像

● えのもとぐりむ(えのもと・ぐりむ)
1986年5月3日生まれ、長崎県出身。2007年「劇団居酒屋ベースボール」設立、代表。作、演出家。3か月22作品連続上演ロングラン上演が話題に。主宰の【ぐりむの法則】は東京、名古屋を中心に全国で活動中。2014年、舞台戯曲本『フクロウガスム』を全国出版したことをきっかけに、2015年に女優・水野美紀と演劇ユニット『かくたすのいるところ』を旗揚げ。近年の作品に、映画『進撃の巨人』シナリオ協力、テレビ東京『下北沢ダイハード』など。

インタビュー写真

演劇の中で聞く生歌、バンド演奏ではないSHOGOさんの生声は破壊力が凄い

―――初演を振り返り、あらためて思うことは?

えのもと「やはり175RのSHOGOさんが出られるので、歌ありで作り始める物語にしようと思って始まりしたがSHOGOさんの歌がとても破壊力があるなと。僕らがどれだけ1時間半演劇をやっても最後の歌で全てもって行かれると感じましたね」

宮下「歌までの壮大なフリですよね」

えのもと「(笑)でも今回もそれでいいんじゃないかな。歌だけで感動できるんで、そこまでどれだけ積み上げられるかが僕らの仕事かなって思いましたね。SHOGOさんがバンドマンの中でも相当歌唱力が高いと評価されているボーカリストなので、それを演劇の中で生で聞ける、バンド演奏ではない音の中での生声は破壊力が凄いです」

宮下「前回、録音だと思っていたお客様がけっこういて、口パクでやっているように思うくらい歌がずれず完璧で。途中からアレンジを加えて(生だと)ワザと外すような呼吸を入れたりしてね」

えのもと「音を全く外さないんですよ」

宮下「噂では聞いていましたが、これほどとは。客席はもちろん、同じ板の上でも口パクに感じちゃうくらい。SHOGOさんが作詞作曲をしていまして、175Rさんで歌う曲とSHOGOさんソロの曲とも違う、えのもとさんの作品に合わせたバラードだったので更に響きました」

えのもと「歌詞と物語の打ち合わせをSHOGOさんが175Rのレコーディングをしているスタジオでやったんです。今回も同じ曲で違う歌詞を書くということなんで、SHOGOさん由来の作品だよね」

宮下「前回、完成したのは歌の方が早かったよね」

えのもと「そうそう!打ち合わせをした夜の日に鼻歌のデモが届いて、そこから僕が何回も聞いてお話しを書いていくっていう作り方をしたので、今回も何度も曲を聞いて書こうと思っています」

―――SHOGOさんも舞台作品への挑戦ということでしたが、見事にマッチしたと。

宮下「そうでうね、さらに脚本が凄くて、めちゃくちゃ感動する作品だったんです。今回2作品目はもっと大変ですよね?」

えのもと「うん、でも初演は超えるんじゃないかなって思います」

宮下「お! これは太文字で書いておいてください(笑)」


前作はクリスマスイブのバスの待合室で展開する物語だった。そこから舞台は? 登場人物は? 時系列が変わるのか?

えのもと「実はSHOGOさんと宮下さんの役をスピンオフ的に変えるのではなくて、全く違う役で出す、そういうシリーズ物にしようかと。時系列を変えて子供の頃、成人の頃、年老いた頃とエピソードを分けて描くと限界がある。人を変えてしまえば東京の色んな人の視点で物語を描けるのかなって思っています」

宮下「その方がね、ライフワークになるような。東京にはバンドマン以外にもまだまだ沢山の人間がいて物語がありますよね」

えのもと「そうそう、色んな人で『東京のぺいん』を毎年やりたいんです(ニヤリ)」

―――12月に観たくなるシリーズですね。

えのもと「そうなんです、温かい気持ちになって年末を迎えられるような作品になればなって思っています。今回はサラリーマン、社会人、働きすぎている大人たちを描きます」

―――タイトルからちょっとハードさを感じますが。

宮下「そうですよね。まだ彼の頭の中にしか無いと思いますが、金髪のSHOGOさんが何の仕事をしているのかなとか(笑)松田さんがどこでover workしてるのかなとか、全く想像がつかなくて」

インタビュー写真

松田「え?(笑)いまから降板!?」

えのもと「この2人にはこの間、サラリーマンのお話『されど、もとより、あるかなた』を書いたんですよ。なので絵は見えていて、SHOGOさんをどこにもって来るかは確かにそうだね(笑)歌わなきゃいけないしね。前作を超えるんじゃないかなっていうのは、たぶんシリアスになるだろうなって思っていて。本来シリアスが得意なので、そっちにもってこようかなと」

宮下「なるほど!」

えのもと「前回はワンシチュエーションコメディだったから、今回はシリアスで、ある程度のシーンにも飛んで行こうと思うので、その辺では書きやすいかな、なのでまだ本を書いてない……(10月上旬の時点)」(全員爆笑)

松田「安心して(笑)」

宮下「松田さん、きっととんでもない物量が来ますよ」

松田「それだけは勘弁して(笑)」

えのもと「シーンを作ることで、より偶像劇に描けるのかなって思いますね。書き始めたら早いので(笑)」

松田「楽しみに待っていますよ」

宮下「1年前にとんでもなく面白くない脚本をいただくより、ギリギリにとてつもなく面白い脚本を頂いた方が、僕は万々歳です!」

えのもと「ありがたい人たちですね」


SHOGOさん、宮下さん、松田さんが生きる役を書きたい

―――内容はこれからとのことですが、今回の見所となるのは?

えのもと「見所はやっぱり、SHOGOさんと宮下さんが絶対出てくるということが、この『東京のぺいん』の面白さだと思うので前回とどう役どころが変わってくるのか。そこに松田さんという新しいキャラクターが入ってきて、どういう3人になっていくのか。SHOGOさん、宮下さん、松田さんが生きる役を書こうと、人物を観て欲しいですよね。この3人は一緒のピースとして一緒の所に出るのかな。バラバラに描いても面白いのかな、でも最後にはピースが一緒になるっていう作り方にしようとは思っているので」

松田「うわーすごい楽しみ!」

―――えのもと作品の醍醐味、楽しみにしていることは?

宮下「毎回のことですが、脚本にびっくりさせられる所ですね。お客様も僕らもいきなりびっくりする様な事が突然あったりする本を書いてくださいますね。前回の『東京のぺいん』は世間でもたれている堅苦しいイメージの演劇とは離れた所にあって人情劇でわかりやすいお話だったんです。今回は本人も言っていたようにシリアスな真骨頂が出ると思うので、一番いい所ですり合わせたものがまた生まれるんじゃないかなと、それを一番楽しみにしています」

松田「僕はもう一言です。この人が書く物が面白いからやるだけなんです、それにつきますね。セリフがいいなって思いますよね。実はえのもとさんとは今年に出会ったんです」

えのもと「すごいっすね、もうずっと一緒にいるような感じ」

松田「ずっと知り合いだったような感覚が僕にはあって、この2人にグッと引き込まれていたんです。以前からえのもとさんの作品に出たいと自分のマネージャーに言っていて、それ以外は出ないと」

えのもと「絶対ですよ」

松田「約束しちゃった(笑)。それほど本当に面白いんですよ」

えのもと「嬉しいですよね」

宮下「松田さんは芸人さんとしては忙しい12月にスケジュール的に無理を言って出てもらっていて」

松田「ちょっとマネージャーには怒られましたね」

えのもと「僕と宮下さんは、本当に松田さんにお会いする前から東京ダイナマイトさんが好きで、やっている笑いも僕らにはまるというか。好きなラインのお笑いをやられている人が僕らを面白いと言ってくれると、死ねるくらい嬉しいですよね」

インタビュー写真

すごくいい現場になるだろうなって思います。その中で演劇らしい演劇じゃないものを書きたい

松田「お笑いを観に来てくれる人にも演劇を観に来て欲しいですよね。後輩を連れて行ったりしますが『演劇ってこんなに面白いんですか!』ってみんな言って帰るんです。僕ら東京ダイナマイトのファンは不思議と単独ライブしか来ないんですよ、僕ちょっと怒ってて(全員爆笑)。僕が出てるんだから観に来いよって。僕が面白いと思ってやっていることをちゃんと観に来て欲しいですよね、お笑いのファンに届いて欲しい。何人か演劇の演出の方とお会いしましたが、笑いの演出とはちょっと違っていたんです。でもえのもとさんはハマっていて、ここが面白いと思ったんですよね」

えのもと「ハマりますね。それは東京ダイナマイトさんが好きだし、松田さんが作る笑いが好きなので。さらに松田さんが僕に合わせて、役者に合わせてお笑いをする調整ができる。阿吽の呼吸でつくっているイメージがあります」

松田「それが本当にありがたいです。ちょっとストレスに感じた所を気が付いてくれるんです」

えのもと「あははは!」

宮下「本当に普通の人に作れないようなものをダイナマイトさんは作られる」

―――もともと演劇的要素もあってフィットしたということですね。

松田「ある意味ではあると思います」

宮下「空気感がすごいんです」

―――作品を創るにあたり、話し合いなどはされますか?

えのもと「ぜんぜん打ち合わせはなく、僕が書いてきたものをやってもらうスタイルです」

松田「お任せしていますね。でもセリフを覚えなくてはいけないのが怖いです(笑)」

えのもと「前回出ていただいた時に、稽古場に来るたびにセリフが増えるという恐怖を与えたので。下地はできているので安心してます」

宮下「その時は、えのもとさんの演出を松田さんがどうやるんだろうっと遠目から見ていて、こんなにマッチするとは思いませんでした」

えのもと「嬉しいよね」

宮下「12月が楽しみです」

松田「よく一緒に飲んでくれんですよ(笑)。それが楽しみで!」

えのもと「飲んでばっかりです、朝まで。仲がいい人としか飲みに行かないもんね」

宮下「昔は誰とでも飲みに行きましたけど、最近は好きな人と行くようになりましたよね。徐々に好きな人に会えるようになってきたと言うか、好きな人に会いたくても会えない時代があったので(笑)」

えのもと「ブラックでいいね〜(笑)。本当にぺいんの出演者は全員好きな人たちですね」

宮下「そうですね、また今年出会った人が多いんです」

えのもと「すごくいい現場になるだろうなって思います。その中で演劇しい演劇じゃないものを書きたいんです。去年と同じような事を言っているかもしれませんが、SHOGOさんとの東京のぺいんは、演劇らしい演劇ではなくて、家族でパッと来て、わっと笑って感動して帰る。そこにちょっとシリアスを入れようと思うけど、そんな作品にしたいよね」

宮下「えのもとさんの作品は年間通して色々な所でやっていますが、この作品を演劇の入口にしてもらいたいですよね」

えのもと「お! 宮下さん去年インタビュー来てないよね!去年同じことを言ったんです。僕の作品を演劇を観る第1号にしてもらって、演劇っていいなと思ってもらいたくて。もっとすごい人はいっぱいいるので、それからもっと演劇らしいものを観に行ってもらいたなって思っているので、より間口を広くしたシリーズにしたいなっていうのもありますね」

―――初心者歓迎ですね。

えのもと「そうですね! そして東京ダイナマイトさんの単独ライブしか観に来ない方歓迎です! 演劇の間口を広げるという事が、僕が舞台作品を創る時のコンセプトなんです。この『東京のぺいん』についてはよりその想いが強い作品です。新しい人がいっぱい入って来れるようにと思います」

―――出演者がまず楽しくて、お客様も楽しく過ごせる、とてもHAPPYになれる作品ですね

えのもと「HAPPYです!そうなんです!175RはHAPPY LIFEがコンセプト。2017年を締めくくるにふさわしくなるような作品になると思います。そしてクリスマスのエピソードは入れて行こうと思っています」

宮下「over workのクリスマスってたまんないね、もう泣けますね」

松田「先ほども言いましたが、お笑いのファンの方にも演劇の面白さを伝えたいです。ぜひ観に来てください」

宮下「僕が日本で一番好きな作家さんがえのもとぐりむで、僕が一番好きな芸人さんでもある東京ダイナマイトの松田さんも出演します、まず観ていただきたいと思います。どう思うかはお任せします」

えのもと「松田さん宮下さんSHOGOさんの3本柱がいい演者であるように創ろうと思っています。作品のメッセージとしては、働きすぎる大人たちと言いましたが、何でこんなに働いているのか、何の為に働いているのか?じゃ働かなければいいじゃん、という葛藤の中で毎日生きていると思うんですけど、観てくれた方が答えを見出せる、何か光が見えるような、何かに気づけるような作品をお届けしたいです」


(取材・文&撮影:谷中理音)

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