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クリストファー・S・ギブソン

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チェロとバイオリンの世界を横断して、弦楽曲としての新たな可能性に挑む

バッハの無伴奏曲から発想を広げたチェロ独奏リサイタルシリーズの最終章

「チェロの新しい可能性を追求したい」、そんなテーマを掲げて活動を続けるチェロ奏者、クリストファー・S・ギブソンが、バッハの無伴奏チェロ組曲からインスピレーションを受け、バイオリンソナタやパルティータなど多彩なプログラムに独奏チェロで挑む全3回のリサイタル《BACH Solo》を行っている。8月の『Prelude』ではチェロ組曲と無伴奏バイオリンソナタの対比を中心に、10月の『Fantasia』では映画音楽やタンゴも交えた選曲で好評を博した。  そしてシリーズ最後を飾る12月の『Fuga』では、無伴奏バッハに特化したプログラムで、バイオリンとチェロという楽器ごとの括りから解放された「弦楽曲」としての魅力を聴かせる意欲的な試みとなる。演奏家にとっての大きな挑戦であるだけでなく、聴き手を新しい音楽体験に誘う要注目のリサイタルだ。

PROFILE

クリストファー・S・ギブソンのプロフィール画像

● クリストファー・S・ギブソン
4才よりチェロを始める。高校在学中にTanglewood、Indiana University、Interlochen の夏期プログラムに参加。横浜インターナショナルスクール卒業後、2005年に米イェール大学に進学、哲学・政治学を二重専攻。在学中、チェリストAldo Parisot氏とのオーディションに合格し、イェール音楽院のOle Akahoshi氏にチェロを、Wendy Sharp氏に室内楽を師事する。2012年冬、国際演奏家協会新人オーディションにてバッハ無伴奏バイオリンパルティータ第2番の演奏で入賞した際、審査員の一人であるバイオリニスト川畠成道氏から「曲の世界に入り込むことのできる演奏」という賛辞を受ける。チェリストとして東京・鎌倉を中心に活躍中。

インタビュー写真

無伴奏曲でもいろいろなパートが聴こえてくる

この《BACH Solo》シリーズに取り組むことにしたきっかけは?

「私は4歳の頃からチェロを弾いていますが、バイオリンの演奏もよく聴いていて、特にハイフェッツとかミルスタインといった昔の巨匠たちの演奏が好きでした。そして、チェロの長い歴史の中でも、ソロ楽器としての歴史は割と浅く、“チェロの音とはこういうもの”だという固定観念が皆さんの中にもあると思うんです。ちょっと重たい感じというか、例えば映画だったらちょっと悲しいシーンに使われたりとか。でも、バイオリンがいろいろな音色で演奏するように、チェロでも、もっと違う形で発想を広げられたらいいなと思っていたんです。この《BACH Solo》では、チェロでバイオリン曲に挑戦したり、弦楽無伴奏曲としてのバッハという感じで、チェロの組曲とバイオリン曲が対話するようなプログラムを組んでみたいというのがアイディアとしてありました」

―――初めて弾く曲もあるのですか?

「チェロ曲はずっと練習してきていますが、バイオリン曲は新しく挑戦するものが多いですね。バイオリンパルティータ第2番は以前も弾いたことがありますが、他はすべてこのシリーズのために新しく解釈して、チェロでどういうふうに弾いたらいいかを1から考えています」

―――その中で、何か新しい発見や気づきもありそうですね。

「バイオリン組曲や鍵盤の曲に出てくるような多声のポリフォニーを、チェロ組曲でも出せたらいいなというのが一番の取り組みです。バイオリンソナタやパルティータは、テンポ通りに淡々と弾く人が割と多いのに対して、チェロの場合はすごくルバートを効かせたり、自由なフレージングが聴きどころになりますが、それだけではなく、構造上いろんなパートに分かれている部分を探せたらいいなというのが、今回特に考えていることです」

―――バッハのどういうところに魅かれますか?

「作曲家としてのバッハの魅力は、特にチェロを聴いているとわかりやすいです。たとえばモーツァルトの「小夜曲」はとても衝撃的で素晴らしい曲ですが、あのメロディにチェロはほとんど出てきません。でもバッハの場合、すべてのパートが拮抗して動いていて、同じくらい重要な役割を持っています。そして無伴奏曲であっても、そこにはいろいろなパートを想像して聴き取ることができます。それをどういうふうに自分の中で対話しながら出していくかというのは、取り組んでいてとても楽しいです」

―――シリーズ3公演で、それぞれ広さや造りの異なるホールを使っていますね。

「最初の『Prelude』はチェロの無伴奏組曲が多かったので、そのイメージに合った小さめの会場を使いました。その次の『Fantasia』は、バッハと他の作曲家の間のつながりがテーマで、曲の雰囲気に合わせて照明なども変えたいと思っていたので、そういう演出に適した会場を選びました。今度の『Fuga』で使うサントリーホールのブルーローズは、もちろんクラシックの素晴らしいホールですから、バッハにフォーカスしたプログラムにふさわしいと考えています」

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1本のチェロで新しい表現ができたら

―――4歳の頃からチェロを弾いているそうですが、どういうきっかけで始めたのですか?

「当時はアメリカに住んでいて、大学教授の母親が音楽教室に連れていってくれたんです。チェロを選んだのは、母がチェロの音が好きだったのに加えて、そこまで執筆の邪魔にもならない音域だったということらしいのですが(笑)、私自身もチェロの音は好きでした。プロの音楽家になりたいという意識が芽生えてきたのは、高校時代にインディアナ大学とタングルウッドの夏期合宿に参加した頃です。でもこれ以上行けないという壁が見えてきて、大学生の頃にテクニックを1からやり直すことになりました」

―――やり直したというのは?

「しばらくの間は音階もまともに弾けないくらい、楽器の持ち方からすべてをやり直しました。特に、指板の上で指を移動させるときのやり方を変えることで、バイオリンのように素速くスライドさせられるようになったんです。そのことによって、チェロで挑戦できる曲の範囲が広がりました。それもバイオリン曲に魅かれるようになった理由の1つかもしれません」

―――これほど長く続けられているチェロの魅力は何でしょうか?

「開拓されていない部分がすごくあるところですね。チェロは伴奏楽器としての歴史がとても長いので、バイオリンじゃないと無理だと思われていた曲も、今のテクニックを使うと挑戦できるものがどんどん増えてきているんです。バイオリンに限らず他の楽器のために書かれた曲も、チェロのレパートリーとして広げていける可能性がまだまだある楽器だと感じます。バッハの無伴奏曲は、そのための道筋を立ててくれるようなところがあります」

―――現在は鎌倉でチェロのレッスンも行っているそうですね。

「生徒さんに教えていると、自分でできることを説明しなければいけないので、新たに考えるきっかけをもらえます。特に、本当に初歩的な質問に答えるときには、新しいアイディアが出てくることが多いです。重要なポイントだと生徒さんに伝えたことを、自分でも徹底できていなかったと気づかされることもあります。他人に説明したり、問題を解決しようとする中で、いろいろなことが見えてくる。そうやって相互に学ぶというところが、レッスンをしていて一番楽しいですね」

―――これから、どんなチェリストを目指していこうと考えていますか?

「ピアノで言うと、グレン・グールドが最初にゴールドベルク変奏曲を出したとき、すべてが1から組み替えられて作り直され、それぞれの旋律がはっきり聴こえたという感覚がありました。それと同じようなことを、チェロのレパートリーでもできたらなと思います。弦楽器というのは1つの旋律を美しく歌うように訓練されますので、曲のタテの線をなかなか意識することがありません。でもピアノだと、いろいろな声の交わり方を必然的に考えなければならないので、弦楽器でもそういうところに気を配れる奏者を目指したいですね」

―――そんなクリストファーさんだからこそ、今度の『Fuga』は意義深いものになりそうですね。

「弦楽器でバッハのフーガに挑戦するという、ある意味無茶なことにどれだけチェロで応えられるか。そこが一番大変ですが、すごく楽しみなところです。1本のチェロからいくつもの別の楽器が聴こえてきて、その音と対話するような新しい表現ができたらなと思います」


(取材・文&撮影:西本 勲)

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公演情報

「クリストファー・S・ギブソン 無伴奏チェロリサイタル BACH Solo Fuga」のチラシ画像
クリストファー・S・ギブソン 無伴奏チェロリサイタル BACH Solo Fuga

2017年12月15日 (金)
サントリーホール ブルーローズ
HP:公演ホームページ

前売:3,000円
学生:2,000円
高校生以下:1,500円

★カンフェティ席★
先着10名!前売:3,000円 → 2,500円!
(全席自由・税込)

※学生・高校生以下のチケットをご購入の方は、
 当日、学生証をご持参ください。

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