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佐藤B作

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三谷幸喜氏書き下ろし作品の凱旋公演

ひと癖もふた癖もある俳優陣で繰り広げる選挙コメディ

とある村で24年にわたり村長を務めた田茂神嘉右衛門が引退することになり、後任に立候補したのは、なんと嘉右衛門の次男、三男、長男の嫁、弟、もう一人の弟の娘婿と全員が田茂神姓だった!? 2015年に三谷幸喜が書き下ろし、好評を博したこの作品は、2017年に全国を回り、その締めくくりとして12月に東京での凱旋公演が決定した。この爆笑選挙コメディで三男の三太を演じる佐藤B作に話を伺った。

PROFILE

佐藤B作(さとう・びーさく)のプロフィール画像

● 佐藤B作(さとう・びーさく)
1949年2月13日生まれ。福島県出身。大学在学中に早稲田大学の演劇サークル「劇団こだま」に入る。大学を中退後、1973年に劇団「東京ヴォードヴィルショー」を結成、現在も座長を務めている。劇団として『その場しのぎの男たち』『パパのデモクラシー』の舞台成果に対し、第48回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞した。2017年は、帯ドラマ劇場『トットちゃん!』にも出演している。

インタビュー写真

―――初演は2015年ですが、選挙の話になったのには、どのような経緯があったのでしょうか。

「僕がガンで入院したときなんですけど、三谷さんの雑誌の特集があって、『もうあなたの劇団では書きませんけど、もし書くとしたらどんなものがいいですか』っていうアンケートが来たんですね。そこで、痛みをこらえながら考えたことが元になっています。
 僕は子供の頃、福島の飯坂温泉ってところで育ったんですけど、そこの旅館組合のボスと酒屋組合のボスが仲が悪くてね。で、毎回そのふたりが町長選挙に出るんだけど、結局、票の奪い合いになって、農村部の人に負けるというのを見てて、そのことをアンケートに書かせていただいてたんです。その後、ガンが治って、三谷さんがからお祝いに一本書きますよってことになったときに、あのときのアンケートの案でいこうとということになったんです」

―――具体的に書くことになったときには、旅館と酒屋の人は出てこないんですよね。

「そうですね。もっと架空の村の村長選挙の話で、血縁関係で戦う話に三谷くんが置き換えてくれましたけど、人間の業みたいなものが書かれてますね」

―――初演は福島で上演されたそうで。

「地震の後だったんで、福島で初日をあけたいなと。みなさん明るく笑ってくれました」

―――それから二年経って、今年は選挙もあったりして。

「“人間は変わらんな、いつも同じような過ちをおかしながら生きていくんだな”という感じはしますよね」

―――そんな人間を笑いとともに描いているわけですが、コメディというのは演じていてどんな感覚なのでしょうか。

「やっぱり三谷くんの芝居を何本もやらせていただいて、喜劇というか、演技というものをずいぶん学びましたね。状況をきちんとお客様に伝えていくということとか。どうしても役者って台本に面白いことが書いてあると調子にのってしまうんですね。面白い状況を自分の役でいただくと楽しくなっちゃうというか。でも、役者は楽しんじゃいけないんですよね。楽しむのはお客さんであって俳優ではないから、ストレスのたまる仕事ですね」

―――やっぱりうれしくなってしまうものなのですか。

「なっちゃうんですよ。でも、それでこちらが楽しんでしまうだけだと、お客さんの笑いがなくなってしまうということがあったりして。喜劇を演じる俳優って、全部芝居が終わって責任が果たせたときの達成感はあるけれど、一緒になって笑えることはないんですよね」

インタビュー写真

―――全国で公演していると、観客からの反応の違いは感じますか?

「静かに楽しんでいるお客さんが多い日とかもあって、反応が薄いのかなと思って、それで落ち込んではダメなんですよね。そういうときは、むしろ、もっと丁寧にやろうという感じになります。より伝える作業を細かくしないといけないと思いますね。今回はお出にならないんですが、伊東四朗さんは、そういう分析が凄いですね。もともと、てんぷくトリオのときに、井上ひさしさんの書いたコントをやっていて、しかも井上さんが遅筆なので、ギリギリでセリフも覚えて、すぐにコントを理解しないといけないということで、かなり鍛えられたと聞きます。伊東さんがコントのネタフリ担当なので、そこできちんと伝えないといけないという……」

―――ネタフリをする人は、そのコントの笑いを理解して、お客さんに伝える立場なんですね。このお芝居でB作さんが演じる、三太という役もどういう役割ですか?

「やっぱりトップ引きみたいな役割で、最初に惹きつけて芝居全体を盛り上げて、後半の角野(卓造)氏に引き継いでいくような役割ですね。きちんと伝えるための責任のある、このお芝居はこういう芝居ですよと前振りをするような役ですね」

―――というと、やっぱりネタフリみたいな部分のある役なんですね。

「それで、ひとのスキャンダルを暴いて、相手を攻撃したのが全部自分に返ってきてしまう(笑)」

―――脚本の段階では、三谷さんとどのようなやりとりをされたんですか?

「実は、この舞台の台本で初めて書き直してもらったんですよ。後半にエネルギー問題が出てくるんですけど、そこの部分で。そのことは、朝日新聞の三谷くんの夕刊のコラムでも、今回、書き直しを頼まれたと書かれていたりして。こちらも勇気がいりましたし、やっぱり書いてもらうときには、こっちもない知恵を絞ってね。昔は、この劇団をやめるので書いてくれっていって頼んだのに、その芝居が好評だったんで、じゃあ次回はどうしますかって言うやりとりがあったり(笑)」

―――そんな攻防戦が繰り広げられていたとは(笑)。今年の締めくくりとして、東京でこの『田茂神家の一族』が上演されるわけですが、見に来られる方に一言お願いします。

「笑いにこだわってやってきた劇団の、選挙を題材にした喜劇の集大成のお芝居になっています。東京のお客さんは、ここで笑うかってところで笑っていたりして、芝居を理解してる方も多いんですけど、その分、やる方も余計に緊張感もあるんです。どこまでお客さんを笑わせられるかが勝負の舞台だと思います。いい大人が何やってんだっていう芝居でもあるんですが、それをふっとばして突進していきたいと思います」


(取材・文&撮影:西森路代)

公演情報

劇団東京ヴォードヴィルショー 第71回公演 『田茂神家の一族』

2017年12月25日(月)〜28日(木)※他、地方公演あり
紀伊國屋ホール
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