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深井順子・糸井幸之介

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役柄は気体とか、液体とか、生き物ももちろんあります!

「エロも行き過ぎるとニュートラルになる」

創立から今年で14年、情熱的で熱い作品を多数上演しているFUKAIPRODUCE羽衣の約1年半ぶりの新作となる今作は、エロティックSF?!しかも劇場は高密度な空間が期待できるこまばアゴラ劇場。まさにターニングポイントとなる予感がする2人、主宰の深井順子と作・演出・音楽の糸井幸之介に話を聞いた。

PROFILE

深井順子(ふかい・じゅんこ)のプロフィール画像

● 深井順子(ふかい・じゅんこ)
俳優・FUKAIPRODUCE 羽衣主宰。1977 年東京生まれ。96 年から 99 年まで劇団唐組に在籍。04 年に、糸井幸之介の生み出す唯一無二の“妙ージカル”を上演するための団体、FUKAIPRODUCE 羽衣を設立。設立以降、全公演に出演、及びプロデュースを行う。演劇公演のみならず09年からLIVE活動を開始。また近年は、中高生向けのワークショップの講師や、野田地図『エッグ』『MIWA』に出演するなど、活動の範囲を広げている。

糸井幸之介(いとい・ゆきのすけ)のプロフィール画像

● 糸井幸之介(いとい・ゆきのすけ)
劇作家・演出家・音楽家。1977年東京生まれ。2004年に女優の深井順子により旗揚げされたFUKAIPRODUCE羽衣の全作品で作・演出・音楽を手掛ける。全編の7割ほどを演者が歌って踊る、芝居と音楽を融合した独自の作風を“妙―ジカル“と称し、唯一無二の詩的作品世界と、耳に残るオリジナル楽曲で高い評価を得ている。近年は、外部での脚本・演出・楽曲提供や大学で講師を務めるなど幅広く活動している。

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――― 妄想をかき立てるタイトルとキャッチですが、込められたものや、意図を教えてください。

糸井「まず『自由気まま』のイメージがありまして、そこにエロティックSFという言葉が生まれ…」

深井「(笑)こういうキャッチを付けるのは珍しいよね。面白そう!と思いました」

糸井「普段からエロティックな作風ではありますが、SFとつけるのは初めてかもしれません。8歳の息子に宇宙大ブームが来ていまして、毎日宇宙の問題を出してくるんですよ。そういう暮らしが続いていたので、多大な影響を受けて(笑)SFのテイストが入りました」

――― 会場は比較的小空間なアゴラ劇場になりますが、アゴラ劇場ということで8人という少人数のこの作品になったのでしょうか?

深井「アゴラ劇場だから(少人数)というわけでは無いですね。ただ出演者の人数が一桁でメンバー全員が出ないのは珍しいです。羽衣の作品は男女同数であることが多いのですが、今回は男女比率も合わせなくて良いということだったので、男5、女3になりました。それも、ここ最近の中では珍しい試みです」


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いつもの『妙(みょう)―ジカル』とは違うものになりそうです

糸井「物語は、リアルに宇宙に行って、宇宙が舞台でというSFではなく、イメージ的には部屋にいるのに宇宙に行っているような気分になる、ドラ●もんに近いといいますか。例えば近所に住んでいる恋人でも、心の距離は何億光年も遠いみたいな、近くと遠くが混ざっていくような、庶民的な雰囲気と宇宙的な雰囲気の融合を目指してます」

――― SFとなると8人の役どころはどうなっていくのでしょうか?

深井「なんだか色々演じそうです、どうやら人間以外の方が多そうで(笑)。以前の公演『イトイーランド』ではトカゲとかでしたが、今回は物質的な?」

糸井「気体とか、液体とか、生き物ももちろんあります。一人の俳優さんが色々なモノを演じる形になると思います」

深井「舞台で自分がそういうことをする日が来るとは(笑)イメージでみせるシーンもあったり、いつもうちの劇団でやっている『妙―ジカル』とは、ちょっと違うものになりそうです」

糸井「そうなんです。いつもは掛け合いから歌が始まって、歌の中でドラマが進んで行くのですが、今回は色々な曲があるというよりは、全体でひとつのリズムの繰り返し『ミニマル・ミュージック』みたいな、リズムを反復していく感じを考えています」

様々な挑戦

糸井「エロも行き過ぎるとニュートラルになる(笑)いつも詩を歌で表現していますが、今回は詩がそのままあるような、そんな雰囲気にもなりそうです。音楽の使い方の違いもポイントになってくるかと」

深井「今まではフォークやロックでしたけど」

糸井「音楽のジャンル変化は、今回の挑戦といえるかもしれません」


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深井「コンテンポラリーダンスも入れたいと話していて、今回振り付けも糸井君なんです。以前の羽衣はそうだったので久しぶりに自分でやりたいと」

糸井「5〜6年ぶりに振り付けもやります」

深井「糸井君が振り付けもすると知らない人もいると思うので、ここは見どころになりますね! あと、イメージを出されて各自が振りを作るワークショップをやっていて、そこで振り付けが採用されたりもしています」

糸井「はい、演じてもらった中から組み立てていくこともやっています」

深井「この間採用されなくて、それが踊りの上手さだけではなく、その瞬間出来てきたものが試されていたので、ちょっと悔しかったです(笑)羽衣では珍しい男性だけのシーンだったり、思いもよらない物が出てくるような気がします。稽古場でワクワクしました!そんなところも見どころになっていると思います」

――― ということは、体力づくりにも力が入っているので、かなり身体を酷使しそうだと。

深井「そんな予感がして怖いです。稽古で初めてランニングをしていています」

糸井「羽衣は疲れたことも情熱に変わり、表現につながる作品が多いのですが、今回はそうではなくて、サイボーグの様な淡々とした疲れない雰囲気にしたいのでスタミナをつけています」

深井「本番までに間に合うかな、汗かかないのは絶対無理だと思うけど(笑)」

糸井「体力的にハードなのも行き過ぎるとハードに見えない(笑)超越を目指しています。全てがチャレンジですね」


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ずっと続けてきた2人の作品の作り方

深井「糸井君がすごいなと思うのは、普段そう見えないのに、思いもよらないような物が出てきて、この人は次に何を出すんだろう…と、とても面白い人です。今年40歳を迎えますが、この人は死ぬまで何かを出し続けて行くのだなって。なので今度もどんな言葉が出てくるか毎日が楽しみです」

糸井「俳優さんとしての深井さんは、作品を作る上ではとても大きい存在です」

深井「羽衣は糸井君がわーと作って、私が時々口をはさむ感じです。良いアイディアの時は採用されるけど、違う時はスルー(笑)。セリフを覚えながら街を歩いていると、なんていい言葉なんだろうって泣いちゃう時もあって、いまだにそういったものを与えてくれる存在なので、とても幸福だなって思います」

――― もうひとつの挑戦として、宮崎公演がありますね。

深井「そうなんです。主要メンバーの日高啓介が宮崎出身で、『’17 みやざきの舞台芸術シリーズ』にラインナップいただきました。凄く楽しみです!宮崎の方は本当に素敵な人が多くて!宮崎の方が、どう羽衣を観るのか反応が気になります。いつも客席を見るタイプなので、皆さんに会えるのが本当に楽しみです。優しい目で観てください!」

糸井「不思議な中にも面白さは目指していきますので、珍味を味わうような感覚で劇場に来てもらえると、苦かったり引っかかったり、でもそれが美味しいみたいに、楽しんでいただけると思います」

深井「私たちが出す熱をそのまま受け入れてくれるといいな」


(取材・文&撮影:谷中理音)

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