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amiIrie(アミアイリ)
ポップスやブルース、ロックなどをベースにした、心に響く歌を届ける音楽ユニットamiIrie(アミアイリ)。大田区上池台のカフェpon to hana(ポントハナ)をホームグラウンドとするその活動は、音楽を通して人と人を繋ぎ、日常生活を楽しむという、シンプルで豊かな志に基づいている。今年で3回目となる横浜赤レンガ倉庫ホールでのライブを前に、ユニットの中心人物であるシンガーソングライター、amiに話を聞いた。
● ami(あみ)
東京都大田区生まれ。「スター誕生」グランドチャンピオン受賞後、音楽活動を開始。菅原洋一コンサートや宮川泰ショーのゲストボーカルとして参加。その後、ライブ活動を開始。2007年からセルフプロデュースによるアルバム『23℃』『23.5』『寝子 neko』を発表。2010年には秩父宮ラグビー場でラグビートップリーグ開幕戦の国歌独唱を行う。2011年には藤岡孝章(藤岡藤巻)と金谷あつし(ピピ&コット)のプロデュースによる4thアルバム『OMORI BAYSIDE STORY』をリリースした。
● 赤レンガ倉庫ライブのamiIrieメンバー
インタビュー文中・写真左上から、醍醐弘美(キーボード)、梅村仁(ギター)、松尾敦史(ドラム)、斉藤まこと(ベース)、FUZUKI(コーラス)、倉井夏樹(ハーモニカ)
音楽は、目の前の人に楽しんでもらうためのツール
――― 幼少の頃から歌うことが好きだったが「歌手になるなんて考えていなかった」という彼女は、普通の会社勤めも経験。しかし、当時大人気だったテレビのオーディション番組「スター誕生」に母親がハガキを出したことで運命が大きく変わる。
「母が勝手にハガキを送って、オーディションに行ったらそのままテレビ出演まで進んでしまい、それで終わりだろうと思っていたらグランドチャンピオンになってしまったんです。それで、あの頃は明菜ちゃんや聖子ちゃんといったアイドル時代ですから、自分も歌手になったらああいうふうになるんだろうと思っていたんですけど、所属した事務所が、ホテルのラウンジやジャズクラブに出演している人たち……菅原洋一さんや伊東ゆかりさん、しばたはつみさんといった方たちと出会っていく事務所だったんです。だから想像していたのとはちょっと違うシーンで、私の音楽活動は始まりました」
――― そんな活動を最初はあまり楽しめなかった彼女だったが、その後ライブハウスで歌うようになり、少しずつ気持ちに変化が訪れた。
「事務所が新しく立ち上げたセクションで、自作曲ではないですがオリジナル曲でライブをやらせてもらえるようになったんです。そこで初めて“これかもな”って感じました。もちろんまだまだパフォーマンスも未熟でしたが、自分がやりたかったことに近づいてきた気がしました」
――― そして現在に至る……となれば、ミュージシャンの経歴としては特に珍しくはないが、その後の方向性を決定づけるもう1つの出会いが彼女を待っていた。
「最初に事務所に入ったときジャズダンスを習わされたのですが、ダンススクールで友達になった生徒がエアロビクスインストラクターをしていたのをきっかけに、フィットネス業界に関わることになりました。ずっと辞めずに続けるにはインストラクターになればいいと思ったのもあって(笑)、資格を取り、インストラクター業も始めたんです」
――― 当初はあくまでも音楽活動がメインで、インストラクター業はそれほど重視していなかったそうだが、「続けているうちに、エアロビクスのインストラクターをやることと歌うことは似ているな、と思うようになりました」という。
「まず、歌うことはスポーツなんだなって、歌えば歌うほどよくわかりました。声を出すことや身体の使い方、それからカッと熱くなる感じなど、両方に通じるものがたくさんあるんです。そして、テンションを上げて生徒さんたちを引っ張っていくのは、ライブでどうやってお客さんを盛り上げていくかというのと同じ。それを体感できたのが、エアロビクスインストラクターをやっててよかったなと思うことですね。
最近は、地域の高齢者から子どもたちを対象とした体操指導もしているのですが、逆にライブの感覚を体操に活かして、歌と体操を組み合わせて楽しみながら無理なく体を動かしてもらうようなこともしています。結局、自分がやりたかったのは皆さんに楽しんでもらうことで、歌も体操もそのためのツールなんです。ライブは自分を熱く表現するもの、というイメージとはちょっと違うかもしれないですね」
ここでの出会いから新しい音楽が生まれる
――― そして現在、彼女が本拠地としているのが、最初にも触れたpon to hanaで、今回の取材もそこで行わせてもらった。ここはもともと、彼女の父親の仕事場だった場所なのだそうだ。
「父が1階で工場をやっていて、小さい頃はここが半分遊び場のような感じでした。父が亡くなってからは貸していたのですが、2013年に借り主から戻ってきたので、みんなが集って何か楽しいことができる場所を作ろうと思ったんです。今はここでライブをしたり、ギター教室や子ども向けのダンス教室、ヨガ教室をしたりと、いろんなことに使っています。ライブも、近隣のアマチュアの方のライブもあれば、プロの方のライブもあります」
――― ここでの縁から生まれた音楽活動もある。《2音(nion)》というロックユニットとの繋がりもその1つだ。内田裕也や白竜のバンドでギタリストを務め、俳優としても活動している三原康可(ヴォーカル&ギター)と、カルメン・マキ&OZの後期メンバーだった武田“Chappy”治(ドラム)の2人によるユニットで、pon to hanaではamiとのジョイントライブを行っている。
「三原さんはこの近くに住んでいらして、たまたま通りかかってお店に寄ってくださったんです。どう見ても普通の方じゃないな……という容姿の方だったので声をかけたら、実はミュージシャンだったというのが最初の出会いです。そこからチャッピーさんともつながって、最近2人と何度かライブをしています」
――― さらに、こんな出会いもある。
「ここにフラッと飲みにいらした方と、お話をする中で“自分の詩に曲をつけてくれないか”という展開になりました。それがとても素敵な詩だったので、まとまって何か作りませんかということになって、三原さんや、去年の紅白歌合戦で高橋真梨子さんが歌った「ごめんね…」の作曲者である水島康宏さんといった方たちに参加していただいてCDを作る話が進んでいます」
――― そんな彼女が6月に横浜赤レンガ倉庫ホールで行うライブは、amiIrieのステージだけでなく、pon to hanaを拠点としたさまざまな音楽活動のショーケース的な内容になるという。
「2015年の1回目はほぼamiIrieのステージでしたが、去年の2回目は、子どもダンス教室の生徒たちと一緒に、生バンドとダンスのコラボをしました。それがとても楽しかったので、今年もまた出演してもらおうと思っています。あとは先ほど話したCDに入れる予定の曲を披露したり、2音(nion)とジョイントするコーナーがあったり、邦楽を広める活動を行っている方の琴演奏や、音楽を一生懸命やっていて、pon to hanaにゆかりのあるバンドやゴスペルグループの皆さんに参加してもらえるコーナーも設けたいと考えています」
――― amiIrieが展開する地域密着型の活動は、メジャーな音楽シーンにはない手作り感があり、聴き手との距離も近い。日常と地続きになった音楽は、いつもの暮らしを楽しくしてくれる。今回の赤レンガ倉庫のライブでは、そんな音楽の魅力が大きく花開くことだろう。
「一生懸命頑張っている人はみんな一緒。誰の人生にもドラマやストーリーがあって、そんな皆さんとフラットに関わっていきたいと思っています。この店や赤レンガ倉庫でのライブが、そのきっかけになればいい。amiIrieというのは私が音楽活動をするときのユニット名ですが、一人で弾き語りをしてもamiIrieで、誰かがサポートに入ってもamiIrie。いつもライブの最後には会場の皆さんも一緒になって、みんなでamiIrie!イエー!っていう感じで終わるんです(笑)。赤レンガ倉庫のライブもそんなふうに楽しんでもらえたらいいなと思います」
(取材・文&撮影:西本勲)