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滝川英治・キムラ真

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大切な誰かを思い出す。寒い冬にぴったりの珠玉のラブストーリー。

これが書けたから、もうラブストーリーは書かなくてもいいと思えた。100万粒の涙が溢れる極上の純愛物語。

寒い冬の終わり、心の温まる極上の一本が誕生する―― 今年10周年を迎えるナイスコンプレックスがメモリアルイヤーを記念して贈るのが、人気俳優・滝川英治主演の『キスより素敵な手を繋ごう』だ。滝川が扮するのは記憶障害により1日しか記憶を保てなくなった刑事。彼を支える妻と、その周囲の人々が織りなす感涙のハートフルラブストーリーだ。
 初演は2010年。主宰のキムラ真自ら「僕が他にラブストーリーを書かないのは、この1本があるから」と胸を張る自信作が、また多くの人に愛の素晴らしさを届けてくれそうだ。

PROFILE

滝川英治(たきがわ・えいじ)のプロフィール画像

● 滝川英治(たきがわ・えいじ)
1979年3月24日生まれ。大阪府出身。ミュージカル『テニスの王子様』手塚国光役で注目を集め、舞台『弱虫ペダル』福富寿一役、舞台『戦国BASARA』伊達政宗役など人気作品に多数出演。近作に、舞台『歌姫』、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』2、ミュージカル『しゃばけ』などがある。また、映画『阿修羅少女〜BLOOD-C異聞〜』が今秋公開予定。

キムラ真(きむら・まこと)のプロフィール画像

● キムラ真(きむら・まこと)
1981年7月17日生まれ。宮城県出身。2005年、水性音楽に入団。06年の解散まで全作品に出演する。07年、ナイスコンプレックスを旗揚げ。代表として、作・演出を務める他、『PERSONA3』シリーズ、『極上文學』シリーズ、『のぶニャがの野望幸村と五輪の剣』など外部舞台の演出も多数手がける。

インタビュー写真

このド直球の愛を演じられるのは、滝川さんしかいないと思った。

――― 1日しか記憶が保てない男は、朝起きると、妻と出会ったその日に戻ってしまう。そして男は毎朝毎朝、妻に愛を告白する。ひと目で恋におちたその瞬間のときめきと情熱を失わず、ただ一心に、ただ純粋に。それが、たとえ何度繰り返された光景だとしても。
 『キスより素敵な手を繋ごう』は、そんなロマンティックで切ない光景とともに幕を開ける。キムラが本作を書き下ろしたのは、30歳のとき。自身にとって初めてのラブストーリーだったという。


キムラ「もともと作家としての僕はわりと社会派というか、実在した事件をモチーフに人間の本質や家族の愛を描くことを得意としていました。そんな僕が書いた唯一のラブストーリーが、この作品。後にも先にも、ラブストーリーはこの1本だけ。と言うのも、この作品を書き上げられたおかげで、もう他にラブストーリーは書けなくてもいいと思えたから。それくらい僕にとっては思い入れのある作品なんです」

――― 語る言葉にも、自然と想いがこもる。だからこそ、劇団創立10周年という節目の年を飾るのはこの作品しかない、と自信を持って勝負のカードを切った。

キムラ「主人公の男は、不器用で女の子の扱いも苦手。でも、たったひとり愛した女性のためだけに、毎朝、全力で愛を告白する。この光景が、劇中、何度も繰り返されます。それを決してくどくならず、ド直球で演じるには、本物の熱量が必要。そこで思い浮かんだのが、滝川さんでした」

――― 滝川英治とは、今回が初仕事。滝川のどんなところに可能性を感じたのだろうか。

キムラ「滝川さんの作品は『弱虫ペダル』と『龍が如く』を拝見していて、ずっとご一緒したいと思っていた俳優さんのひとり。すべてにおいて100%の力で臨む姿勢と、出し惜しみのないまっすぐなお芝居が、今回の役にぴったりだと思ったんです」

滝川「そう言っていただけるのは本当にありがたいです。キムラさんのことはいろんな人から話を聞いていて。今、現場でご一緒している藤原(祐規)さんからも『自分の中で芯がしっかりあって、それをストレートに伝えてくれる方』だってうかがいました。ご一緒するのは初めてですが、キムラさんと僕が上手くマッチすることで、よりドラマティックな作品になればと思っています」

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300%の力で、この男の愛を演じ切りたい。

――― 365日、繰り返し、たったひとりの女性に愛を告白し続ける。ある意味では、究極の愛のシチュエーションといえそうだ。

滝川「僕自身も恋愛に対しては一途でまっすぐなタイプ。好きになると猪突猛進という感じなので、台本を読ませていただいたとき、普段の自分に近いなって思いました。ただ、ここ最近すっかり恋愛から遠ざかっているので、そのへんがちょっと心配です(笑)。
 今、こうしてキムラさんのお話をうかがってみても、すごく思い入れのある作品だということが伝わってくるので、清い澄んだ心で真摯に挑みたいと思います」

――― 正統派のラブストーリーだが、それだけで終わらないのがナイスコンプレックス流。実はこの物語には、ある大きな“仕掛け”が秘められている。

キムラ「主人公の奥さんは、夫が1日経てば自分のことを忘れてしまうことに対して、それでも辛くないと言うんです。なぜなら毎朝出会うたびに夫が自分に恋におちて愛を告白してくれるから。だから彼女は『毎日が素敵』だと言って、夫との日々を過ごし続ける。
 でもそこには、ある秘密があって。この秘密を守るために、周囲も何とか協力しようと悪戦苦闘します。ラブストーリーではあるけれど、謎解きの面白さもあるのが本作の魅力。だからこそ、すべての秘密が明かされたとき、観てくださった方にも爆発するような感動が沸いてくるんだと思います」

滝川「本当に美しくて繊細な物語ですよね。正直に言うと、キムラさんの風貌とギャップがあって、こういう話をお書きになるんだとビックリしました(笑)。これだけまっすぐな愛の物語を自分がメインで演じるのは、『龍が如く』以来。今、僕は37歳。40歳という大きな節目の年に向けて、いい作品に出会えたという喜びがあります。100%といわず、300%くらいの気持ちをこめて死に物狂いで演じ切りたいです」

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このド直球の愛を演じられるのは、滝川さんしかいない。

――― 『キスより素敵な手を繋ごう』という詩情溢れるタイトルも印象的だ。どうしても人は即物的な愛情表現を求めがち。しかし、本当の意味で身も心も委ねることができるのは、「手を繋ぐ」といったシンプルな行為にあるのかもしれない。

滝川「おじいちゃんやおばあちゃんが手を繋いで散歩している姿を見ると、すごくいいなって気持ちになりますよね。この間、実家に帰ったとき、うちの両親が手を繋いで歩いているのを見たときも、何かいいなと心が温かくなりました。
 それこそ親への愛や感謝も若いうちはなかなか気づけないもの。ついつい素っ気ない態度をとっていた時期もあったけれど、この年になってようやく親への愛や感謝を改めて強く感じられるようになりました」

キムラ「やっぱり覚えているものなんですよね、手のぬくもりって。それこそ母親の手なんてもう何十年も繋いでないけれど、小さい頃に繋いでもらった、ガサガサだけど温かいあの手のぬくもりは、きっと今もちゃんと残っているんだと思います」


「愛」とは何か。この作品が、僕なりの答えになれば。

――― 本作で描かれるのは、普遍的な愛。ふたりは「愛とは」と問われたら何と答えるだろうか。

滝川「難しいですね。上手くは言えませんが、僕にとって愛は命や人生のようなもの。それくらい重いもので、愛があるから人とつながることができる。
 それは男女愛に限らず、家族や友達、それこそ作品づくりも同じです。俳優という仕事は、もちろん仕事ではあるんですけど、どこか仕事をしている感覚を超越したところがあって、作品への愛や演出家さんや共演者への愛、いろんな愛があってみんなで手を繋ぐことができる。その根底にあるのはお客様への愛。観た人に喜んでもらいたい、笑顔になってもらいたい。そのためだけにやっているところがあるし、その気持ちがあるからこそ作品をより良くしていきたいと頑張れるんです。
 この現場でもたくさんの愛を感じながら、みんなで手を繋いでいきたいし、この作品を演じ切ることで、僕自身もまた愛について新しい発見や勉強ができればと思います」

キムラ「僕にとって愛とはありふれたもので、自分自身が動く原動力。愛とは何かって聞かれても、上手くは言えないし、きっと簡単に言えないからこそ、このお芝居を書いたんだと思います。この作品が、僕にとっての愛とは何かの答えにしたいですね」

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長年連れ添ったご夫婦にこそぜひ一緒に観てほしい。

――― 凍てつくような北風が沁みる2月。人肌恋しい季節にふさわしい物語となりそうだ。

キムラ「僕は決して演劇は難しいものではないと思っていて、自分自身がやりたいのは、うちの親や大事な人が観ても、ちゃんと何かを持って帰ってもらえる作品をつくること。今回も、もちろんそのつもりです。
 人は決してひとりじゃないし、愛はいつもそばにある。ただ、それに気づいていないだけなんですよね。劇場全体を温かい愛で包みこむような作品になると思うので、ぜひみなさんにも愛を持って帰ってもらえれば」

滝川「若い方はもちろん、ご年配の方、特に最近一緒にいるのが当たり前で、お互いが空気のようになってしまっているご夫婦にも観ていただきたいですね。相手への愛情はあっても、恥ずかしくて上手く表現できていない方ってたくさんいると思います。そんな方にこそこの作品を観て何かを感じ取ってもらえたら」

キムラ「それで、帰りは一緒に御飯でも食べに行ってね」

滝川「そこで昔のことをいろいろ思い出しつつ」

キムラ「で、奥さんが『手、つなぐ?』って言って、旦那さんが『何言ってんだ』って恥ずかしがったり(笑)」

滝川「いいですね(笑)。この作品がそういうきっかけになれば嬉しいです」


(取材・文&撮影:横川良明)

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