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石丸椎菜・北村太一・山下永眞

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女相撲とミュージカル!? この不思議な組み合わせが生み出す唯一無二の劇場体験は必見!

シュールでキッチュでポップでクレイジーな国産ミュージカルを目指して

2017年初春を飾るガールズ相撲ミュージカル『土俵で相撲をとることは大変キケンです』……そう聞くといかにもキワモノを想像するかもしれないが、十年来活動を共にしてきた劇作家・北村太一と作曲家・山下永眞が掲げる志は高い。海外の名作ばかりが目立つ日本のミュージカル界において、世界でただひとつのミュージカルを創造するという思いのもと、"ミュージカルを考えるチーム" ビエンナーレを立ち上げ、第1弾となるのが本作である。この新たな試みについて、メインキャラクターの女子高生を演じる石丸椎菜を交えて話を聞いた。

PROFILE

北村太一 (きたむら・たいち)のプロフィール画像

● 北村太一 (きたむら・たいち)
1987年1月29日生まれ。劇作・演出担当。日本大学芸術学部演劇学科演出コースで演劇を専攻。2005年に山下幼稚宴を旗揚げし、2009年『勝利の条件』では1,100人を超える動員を達成。2016年、ビエンナーレとして再スタート。

山下永眞(やました・えま)のプロフィール画像

● 山下永眞(やました・えま)
1987年1月8日生まれ。北村と同じ高校の演劇科で学んだ後、玉川大学芸術学部パフォーミングアーツ学科で声楽を専攻。在学中に北村と山下幼稚宴を旗揚げ。2007年からは外部劇団の音楽プロデュースも手がけるなど多方面で活動する。

石丸椎菜(いしまる・しいな)のプロフィール画像

● 石丸椎菜(いしまる・しいな)
1994年7月4日生まれ。主な出演作は、2003年『奇跡の人』、2004年『ライオンキング』、2005年『アニー』、2009・2013年『屋根の上のヴァイオリン弾き』、2014・2015年『マリオネット』、2016年『花より男子 The Musical』など。

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劇団としての10年から、作家に特化した活動へ

――― 北村と山下は高校時代の同級生。そこで共に演劇を学んでいた2人は、「ミュージカルの真似ごと」を通じて距離を縮めた。

北村「ミュージカルが好きな男子があまりいなかったこともあって、よく話すようになったんです。最初はテストの答案用紙の裏か何かに台本を書いて……」

山下「僕がそれに曲をつけたのが始まりでした。もともと作曲には全く興味がなかったんですけど、文字を読んだだけで単純に面白くて、この本の世界がミュージカルになったところを見たくなったんです」

北村「当時はどちらかというと、ミュージカルを若干皮肉ったところを狙っていたような気がします。普通だったらナンバーにしないようなところを広げたり、なんでもないシーンでなんでもないことを歌ったり。そんなことを空想しながらネタ的に書いていたものを、たまたま笑かすつもりで見せたら、いきなり立体的になって(笑)」

山下「とにかく歌詞がおかしいんですよ(笑)。関係ない擬音とかいきなり入ってきたりして。でもその妙な感じに心を掴まれました」

――― そして2005年、2人はミュージカルコメディ集団「山下幼稚宴」を旗揚げ。誰もが気楽に観に行ける内容と価格で、クオリティが高く笑いに溢れたミュージカルを届けることをテーマに精力的な活動を続けた。

北村「最初は僕ら2人からスタートしたものが、劇団に近い形式でどんどん膨らんでいきました。作品としての規模も大きくなって、それが僕らを一番成長させてくれた要因じゃないかなと、今となっては思います」

――― そんな山下幼稚宴の活動をリセットし、新たに立ち上げたのがビエンナーレ。「ミュージカルを作る」「ミュージカルを想像する」「ミュージカルを科学する」の3本柱のもと、日本とミュージカルの関係性を良いものにするための活動に取り組むという。

北村「出演者を劇団員みたいな形で抱えたミュージカルカンパニーとしてやってきた中で、団体としての1つのピークは迎えたのかなという思いがなんとなくありました。クリエイターとしても、このまま劇団の中だけで作家としてやっていくより、もっと広いところでいろんな作品を作ったり、関わっていきたいという思いもあって、劇作家としての自分と作曲家としての山下に特化した、ミュージカルを作るチームにしようと考えたんです」

山下「山下幼稚宴の頃は公演を打つのと並行して、外部に制作を学びに行ったり、大学でホームページ作りやデザインを勉強したり、人脈作りをしたりと、劇団の運営に必要なことをけっこう幅広くやりました。それが役に立ったということもあるんですけど、自分は作曲家だと胸を張れない瞬間もあったんです。そこで、作品をもっと高いレベルに持っていくにはどうすればいいんだろうと考えたとき、もっと濃密な奥底のところから疑ったり、今まで常識だったことも一度なしにしたりして、ミュージカルの可能性を探っていこうと」

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女性の強さと美しさを相撲に託して

――― こうして誕生したビエンナーレの第1弾作品となる『土俵で相撲をとることは大変キケンです』は、とある港町を舞台に、女相撲と海女の世界で奮闘する女子高生を中心に繰り広げられるホットでキュートな愛のミュージカル。それにしても女相撲とは、なかなか思い切った題材だ。

北村「きっかけは山下と僕の2人で、ミュージカルに向いた題材って何だろうと話していたところから。ちょうどオリンピックをやっていたので、今、日本って女性がすごいよねって話になって、オリンピック選手もそうですけど、特に僕らミュージカルとか演劇をやっていると、女性の力ってすごいなと日々痛感するんです。女優さんはもちろんのこと、裏方さんにしても、お客さんにしても、特に日本の女性の持つエネルギーや行動力は計り知れないっていう話から、女性を集めて何かできないか、美しさを表現できないだろうかと。そこから、何かに立ち向かっていく強さと言えば……相撲かなって」

――― 物語を大きく動かす女子高生役は、子役時代から数々のミュージカル作品でキャリアを積んできた石丸椎菜が演じる。

石丸「ビックリしました。北村さんとはご一緒したことがあって、出演者も知っている人が多いので楽しそうだし心強いと思いましたけど、最初に題名を見たときは、何をやるのか全然わからなくて(笑)」

北村「ヒロインの条件として、芯が強くて、なおかつ周りを引きつける魅力というか爛漫さが欲しかったんです。そういう人はなかなかいないと思って悩んでいるとき、ふと石丸さんのことを思い出して“そうだ!”と。怒られて終わるかもしれないけど、とりあえずお願いしてみようと」

石丸「相撲の知識は全然ありませんが、役柄も相撲をあまり知らない設定なので、そこは大丈夫かなと。1からやっていく感じで頑張ります(笑)」

北村「実際の女相撲はどちらかというと儀式的で静かな雰囲気ですが、今回は港町で手に職を持っている力強い女性たちが作り出す相撲なので、かなり派手になると思います。エンターテインメント的な見せ方ですね。相当ハイカロリーな演目になることは間違いないです」

石丸「今までの作品と全然違うので新鮮だし、コメディもやったことがなくて、だいたいいつも“いい子”の役が多いので、そういうところも頑張らなきゃなと思います」

北村「公演が終わった頃には相撲ファンになっていると思いますよ(笑)」

石丸「本当ですか? 期待してます!(笑)」

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ミュージカルが苦手な人にも観てほしい

――― ミュージカルと言えばもちろん音楽も重要な要素。山下は「安っぽいものは聴かせたくない」と力を込める。

山下「舞台で音楽と融合することによって初めてわかる、ショウ的な要素も多分に取り入れた作品づくりをしているので、なかなか言葉では説明できないところもありますが、特に意識しているのは、本物の生演奏に聴こえるような音作りです。劇場の鳴りも考えながら、音響さんともかなり打ち合わせを重ねて、“ビエンナーレの作品は本当に音がいいね”と言ってもらえるのを目標にしています」

――― 単なる音楽劇の域を超えた、海外の優れた作品と肩を並べるミュージカルを創造する。そんな気概に溢れたビエンナーレの作品に出会えるのはもうすぐだ。

石丸「今までの私のイメージとは全く違う、新しい一面を見ていただける作品です。恋に恋する女の子というのも初めてですし、喜怒哀楽のすべてをお見せできると思います」

北村「僕が言うのもおこがましいですが、日本人が作るオリジナルのミュージカルはまだまだ開発途上の文化だと思うんです。そこに真っ向から挑む、純国産の観応えのあるミュージカルだということは確実にお約束します。さらに、普段は大きな劇場でしか観られないミュージカル俳優さんたちを、10分の1以下のキャパの会場で観られるというのは、他ではできない体験になると思います。ミュージカルを観慣れている方も、初めて観るという方も、刺激的な時間になるだろうと思うと僕自身もすごく楽しみです」

山下「僕らが活動してきたここ10年くらいで、社会とミュージカルとのつながりが大きく変わり、今までニーズがないと思っていたようなことにも挑めるようになってきました。その中で、ずっと同じタッグでやってきた僕らの今しかできない挑戦に、ぜひ立ち会っていただきたいと強く思います。本当に新しいものを作っているという自負がありますし、北村が最初に言ったような風刺というかユーモアの武器もあるので、ミュージカルが苦手な方でも楽しめる作品です。どうぞご期待ください」


(取材・文&撮影:西本 勲)

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