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福地慎太郎・關根史明・時田愛梨

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目で魅了して、物語で心を震わせる!

「スチームパンク+九龍城」で描く、人間模様が今ここに!

毎公演、劇団外から脚本・演出家を招くことで、様々な色・物語を魅せる劇団「護送撃団方式」。今回8回目となる公演に招かれたのは人の内面を鮮明に描き、浮き彫りにする脚本・演出家の福地慎太郎。福地に与えられたテーマは『スチームパンクと九龍城』という独特の世界観であった。今回はその世界観においてキーパーソンとなる劇団主宰の關根史明と時田愛梨の3人に本作について大いに語ってもらった。

PROFILE

關根史明(せきね・ふみあき)のプロフィール画像

● 關根史明(せきね・ふみあき)
85年8月13日生まれ。東京都出身。劇団「護送撃団方式」主宰。2010年旗揚げ。“我々は役者である”という理念のもと、劇団内に作・演出家を設けず、公演毎に作風を変える事を特徴としている。劇団公演をはじめ、『アジア舞台芸術祭』『劇団たいしゅう小説家』『ソウルドリームズ』など外部の舞台へも多数出演。

福地慎太郎(ふくち・しんたろう)のプロフィール画像

● 福地慎太郎(ふくち・しんたろう)
80年11月18日生まれ。栃木県出身。EARLY WING所属 FLIPLIP主宰。2003年にDMFに入団以降、舞台出演は約40本以上、作・演出・振付作品50本以上に上る。映画『BOYSLOVE』、ドラマ『探偵ブキ』などの映像作品にも出演している。

時田愛梨(ときた・えり)のプロフィール画像

● 時田愛梨(ときた・えり)
92年3月6日生まれ。東京都出身。NICE GIRL プロジェクト!の元メンバー。2010年にはミス週間プレイボーイを受賞、現在は舞台を中心に活躍中。主な出演作は『道先案内人〜ハジメマシテ死神デス。〜』、『KENJI MIYAZAWA. GALAXY SPECTACLE ENTERTAINMENT LIVE !』など

● 護送撃団方式(ごそうげきだんほうしき)
2010年、旗揚げ。「お客様に作品の核心を一方的に見せず、様々な解釈の自由を持ってもらう」「作品のメッセージを答えとして見せるのではなく、そのチラリズムを美学とする」ことをテーマとした“TakeOut芝居”をコンセプトに、固定の作・演出を持たず、毎回、多彩なジャンルの作品に取り組んでいる。

インタビュー写真

外のキャッチーさ、内のキャッチーさ

――― 作・演出を設けていないとのことですが、その理由を教えていただけませんか?

關根「作・演出を設けない理由として、団体を立ち上げた当初から護送撃団方式には俳優しかいなかったんです。その時に、作・演出がいないことを強みにしようと思い、“我々は役者である”というテーマワードを作り、作品ではなく僕たちのお芝居を売りにしようと思ったんです。」

――― 劇団が立ち上がってから、毎回様々な色の作・演出を迎えていますよね。

關根「毎回作品コンセプトも、劇団の色さえも変わります。1つの作品、作・演にこだわるということがないので、毎回新しいものをお客様にお見せ出来るのが護送撃団方式の強みになります。結果的にお客様の想像出来ない、予想できないレベルでの『護送、次はどんなことをやるんだろう…』というドキドキ感につなげられていけたら良いなと思いまして。」

――― そんな中で今回は福地さんを迎えておりますが、どんな理由で迎えたんですか?

關根「もともと福地さんの事を一方的に知っていて、彼の作品を見た時に、この人の演出が好きだなと思ったんです。その後にお話する機会が度々ありまして。この人といつか一緒にやりたいなーと考えたいた時、ファンの方から「福地さんの作品と護送撃団方式の色って似てるよね」ってお声がありまして。ビックリしました。僕たちは内容が表面に出るような派手なものをやっているんですけど、福地さんの場合、内面に派手さをもってきた感じがする、つまり真逆な印象でした。外側と内側の派手さという反面的なものがありました。でも確かにやりたい事や見せたい色は本当に似ているなと思いまして。そしてその二つが揃ったら面白いんじゃないかなと思い始めたんです。なんか凄く心地よかったんです。ぼんやり見えたイメージが。だからご意見いただいたその日にすぐオファーしました。」

福地「今回依頼を受けて、護送撃団方式さんの色や頂いたテーマを考えながら書いているんですが、僕がどうしても書いているので僕らしさは残っちゃうんですけど、話の展開や表現の思いつく手法がいい意味で僕らしくない部分が多くなっています。」

――― さらに、お二人の想いを表現するヒロインとして時田さんを迎えていますね。

時田「今回、護送撃団方式さんの舞台は初めてなんですけど、実は關根さんとは今回で3回目の競演なんです。」

關根「お芝居が本当に良かったので!前回共演した時に、僕と時田さんとで作品のクライマックスシーンがあったんですけど、本当に息が合いまして、芝居の水が合うと思ったんです。それからはこの方を護送撃団方式で芝居させたらどうなんだろうなって考え始め、ヒロインとして立たせたらどうなるのかなと興味を持ったのがきっかけです。」

時田「私も關根さんの演技力の高さに魅力を感じていたので、今回は作品どうこうの前に關根さんから頂いた段階で、是非やらせていただきたいと思いました。」

福地「実は時田さん含め、ほとんど一緒にやったことのない役者さんばかりなんです。初めての人とやるときは色んなビジョンが見えるので、楽しみなんです。」


インタビュー写真

曖昧さを愛するヒロイン

――― 予め頂いたテーマがあると先ほどおっしゃっていましたが、どのようなテーマですか?

福地「“スチームパンク”の世界観で“九龍城”と絡めるというテーマを頂いたんです。護送撃団方式さんの色も残しながら、僕の持つバランスを崩した後に、演出ができるので広がりが出るんじゃないかなと思っています。」

關根「常々ひねくれたキャッチーさをテーマにして、観る方が容易に想像できてワクワクする、でも奥の真相は掴みきれないものを考えているのですが、ずっと昔からやりたかったスチームパンクでそれを出来ないか考えていました。スチームパンクだけを前面に出すのではなくて、もっと重厚な意図を持たせたいと思った時、九龍城を見つけたんです。あの閉鎖的な空間だったり、流れている冷たい雰囲気や歴史の背景などに魅力を感じ、二つを掛け合わせてやってみようと思いお願いをしました。」

――― そのうえで本作の内容はどのようなものですか?

福地「スチームパンクサスペンスなんですが、何をどこまで情報として提示するのかが難しいんですよね。あらすじとしては、実際の九龍城と同じように解体間近のコミュニティーを舞台に、その独特な世界観を後世に残すために地図を作りに来た男が關根さん演じる主人公です。曖昧なものを嫌いとして、物事をしっかり理解して割り切りたい男と、時田さんが演じる、曖昧を愛していて、曖昧が好きだから不定形な水を愛しているヒロイン。そんな曖昧さを愛しているヒロインと何でもきっちりしたい男が、もうすぐ解体されてしまうコミュニティーでいろんなものを観ていくという大筋になります。サスペンスですが、頭で理解していくものではなくて、体感が動いてくるようなサスペンスをイメージしています。理屈理論で解き明かしていくものではないサスペンスになり、スチームパンクという題材とサスペンスがうまいこと調和するように作っています。」

――― 時田さんは今回のあらすじや台本を見て、どのような感想を持ちましたか?

時田「とても不思議な世界観であり、私自身が演じたことのないような作品作風であるなと感じています。まるで、その物語の世界に入っていくような感じがありつつも、それぞれのキャラクターに大きな心模様があるので、お客様にどう伝えるかを考えるという作業が大事なのかなと思います。大外にある部分を守りながら、演じていけたらなと素直に思います。」

インタビュー写真

体感する物語

――― 時田さんの役はどういった感じなのでしょうか?

時田「その説明が実はかなり難しいんですよね(笑)」

關根「そうですね(笑)この役が作品の核になるので、役を説明してしまうとそれ自体がネタバレになってしまうんです。そんな役です(笑)」

時田「漠然とした言葉で表すと、つかみどころがないタイプです。自分自身は真逆で分かりやすいタイプなので、どう自分なりにやっていくかを考えています。」

福地「スチームパンクの作品は基本的に主人公が能動的なんですけど、今回は受動的に設定しているので、ヒロインである時田さんが牽引してくる部分があり、どうストーリーに絡んでくるか、影響を与えるかがポイントになります。」

關根「時田さんは本当にお芝居に雰囲気がある方。護送撃団方式で描かれるヒロイン役としてはぴったりだと思うんです。透明感の奥に濁りがあるというか、あ、いや褒めてますよ?(笑)」

時田「(笑)」

福地「(笑)。象徴的な役なので、色々と説明するというよりは、お芝居で体現してもらいたいと思っています。ヒロインは舞台上にいるけど、つかめないような役になればいいなと思います。」

關根「そうですね。また今回の作品でもダンサーさん達もキャストに交え視覚的なところでも魅せられるようにとは思っています。薄暗い華やかさというか、怖さというか。鈍い色を放つような、そんなエンターテイメントに仕上げていけたら良いなと思います。」

福地「ストーリーに独立しないダンスシーンを作ろうとも思っています。そういう意味では護送撃団方式さんの強みが僕の強みになるといいなと思っています。」

――― 最後に意気込みを頂いてもいいですか?

時田「自分の考えだけに捉われず、周りの方々の想いを汲み、それを軸にしてお芝居を作っていければなと思います。」

福地「お客様に体感してもらえるエンターテイメントは常々意識しているので、ここでしかできないバランスで体幹に届く楽しさを伝えられればなと思います。」

關根「護送撃団方式の公演なので、スチームパンクというキャッチーさも期待していただきたいですし、それを見事に裏切るような作品にしていきたいなと思っています。いつもお客様には「裏切られた!驚いた!」と仰っていただけるような作品を目指してます。が、そんな事は正直どうでもよくて。ただただ楽しんでいただけるもの、俳優達がより魅力的になるような作品に作り上げたいと思います。」


(取材・文:熊谷洋幸/撮影:安藤史紘)



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