home  >  WEBインタビュー一覧  >  笠原浩夫・山本芳樹・楢原秀佳・深山洋貴

PICKUP
笠原浩夫・山本芳樹・楢原秀佳・深山洋貴

キメ画像1

イギリスのユーモア旅行小説を舞台化した作品が4度目の上演

ロンドンのパブをイメージした空間で繰り広げられる、アドリブ満載の観客参加型公演

創立31周年を迎えた劇団スタジオライフが、6年ぶり4度目となる『THREE MEN IN A BOAT+ワン』を上演。自分が病気だと思い込んだ3人の男たちと犬1匹が、健康を取り戻すためテムズ河の船旅に出かけるという内容で、4人の出演者が観客とコミュニケーションを取りながら進行する観客参加型の演出が特徴だ。過去の公演と同じく2チーム制のダブルキャストで上演される本作について、各チームから2人ずつ集まってもらい話を聞いた。

PROFILE

笠原浩夫(かさはら・ひろお)のプロフィール画像

● 笠原浩夫(かさはら・ひろお)
1月19日生まれ、宮城県出身。スタジオライフ看板俳優の1人として、劇団の代表作の多くに出演。『トーマの心臓』オスカー役、『ヴェニスに死す』アッシェンバッハ役、『DRACULA』ドラキュラ伯爵役、『OZ〜オズ〜』1019役など。外部作品への出演は、『メディア』、『魔界転生』、リリパットアーミーU『時の男〜匂うがごとく今盛りなり』、ミュージカル『森は生きている』など多数。

山本芳樹(やまもと・よしき)のプロフィール画像

● 山本芳樹(やまもと・よしき)
7月25日生まれ、兵庫県出身。1995年入団。『トーマの心臓』ユリスモール役、『少年十字軍』ガブリエル役、『アドルフに告ぐ』アドルフ・カウフマン役、『PHANTOM〜THE UNTOLD STORY』エリック役など。外部作品への出演は、加藤健一事務所『モスクワからの退却』『思い出のすきまに』、ミュージカル『あらしのよるに』、ミュージカル『森は生きている』など多数。

楢原秀佳(ならはら・ひでよし)のプロフィール画像

● 楢原秀佳(ならはら・ひでよし)
3月24日生まれ、奈良県出身。1995年入団。『トーマの心臓』シュヴァルツ役、『ドリアン・グレイの肖像』ヘンリー卿役、『訪問者』グスタフ・ライザー役など。外部作品への出演は、Tsuchipro『-初恋』『アーバンクロウ〜呼吸もできない〜』、劇団わらく『第三帝国の恐怖と貧困』『明日は天気・動員挿話』など多数。

深山洋貴(みやま・ひろたか)のプロフィール画像

● 深山洋貴(みやま・ひろたか)
5月11日生まれ、兵庫県出身。1995年入団。『トーマの心臓』エーリク役、『OZ〜オズ〜』リオン役、『アドルフに告ぐ』エヴァ・ブラウン役など。外部作品への出演は、流山児☆事務所『BURAIKAN』『田園に死す』、Tsuchipro『あるいは、天国に一番近い椅子』、ミュージカル『森は生きている』など多数。

インタビュー写真

役柄と生身の自分を行き来する

――― 原作は、イギリスの小説家ジェローム・K・ジェロームが1889年に発表したユーモア旅行小説『ボートの三人男』。1993年にはロンドンのフリンジ(パブに併設されていることが多い小劇場)で舞台版が上演され、大ヒットを記録した。そんな同作を、スタジオライフでは1999年、2002年、2010年に上演。決められているのは初めと終わりの設定と、最低限のセリフだけ。観客を巻き込んでいく俳優の技量が問われる舞台だ。

笠原浩夫(99年、02年に出演)「こんなにしんどい芝居はなかなかないですよ(笑)。客入れの最中から何かしらやっていて、そこからもう舞台が始まっているみたいな感じだし、即興の部分がかなりありますからね」

深山洋貴(99年、10年に出演)「台本だけ読んだら30分くらいで終わるような内容が、自分たちが即興で考えたものを含めると1時間半くらいになる。そういうのが面白いし、すごくやりがいはありますね」

笠原「さらにお客さんとの絡みもあるから、結局2時間くらいになるんです。初演の千秋楽は2時間半くらいやったと思います。要は即興次第なので、自分たちである程度切っていかないと、どんどん長くなっていく(笑)」

楢原秀佳(99年に出演)「演じている自分と生身の自分が行き来しているような瞬間が何回もあって、そこが大変ですね。役者同士でやりとりしている分には、演じている部分で接することができますけど、いざお客さんに対すると、どうしても役柄からちょっと抜け出して、生に近い自分を出しながら触れ合わなきゃいけないので」

笠原「そこで役者が困っちゃったりするのが面白さにつながるように演出されているというところもありますね。だから楽しいけど、やっぱりしんどい(笑)」

深山「肉体だけじゃなくて頭も疲れますよね? 常に何が来るかわからないし」

笠原「四方八方からずっとお客さんに見つめられたままなので、油断できない。と言いながら、あえて油断したりもするけど(笑)」

楢原「そうしないと、もたないですよね(笑)」

山本芳樹「僕は今回初めて出演します。過去の公演は何回か観させてもらっていますけど、役者が自分で作っていく即興の部分に、客席も巻き込んだライブという意味での即興がプラスされて、大変な芝居だなと思いましたね」


インタビュー写真

2チームそれぞれの個性にも注目

――― ボートに乗ってテムズ河を下る3人の男:ジェイ、ハリス、ジョージによる、英国的ユーモアにあふれた掛け合いも見どころのひとつ。

笠原「初演で僕がやったジェイはいわゆる進行役で、今回演じるハリスはどちらかと言うとツッコミというか、かき乱し役。後から遅れてやってくるジョージが天然癒し系みたいな、そういう特徴のある3人の集まりですね」

楢原「前回はジョージをやらせてもらって、今回はジェイを演じます。僕はいまいち進行役っていう性格ではないので(笑)、どうなるかなと思うんですけど、一度この舞台を経験している分、新しい形でジェイという役に挑戦できればいいなと考えています」

深山「僕は前回と同じハリスを演じます。初演ではジョージをやらせてもらったんですけど、当時は入団して2年くらいだったので周りに迷惑かけっぱなしで、本当に大変でした。公演のたびにビールを買いに行ってたんですけど……」

笠原「劇中で飲む本物のビールを買い出しに行く係だったんだよね」

深山「若手でしたからね。とにかく全然できなくてずっと怒られていたので、“これはアカンな”と思いながらスーパーに買いに行って、カゴにビールを入れて、気がついたらそのままお店を出ちゃってた(笑)。そのくらい初演は辛かったです。もちろん面白い作品なんですけど、そういう思い出があるので、ちゃんと気合いを入れてやらなきゃなと思っています」

山本「さっきも言ったように何回か観させてもらって、たぶん当時の自分だったらできなかったような作品だと思うんです。でも、今だったらどういうことができるかなという挑戦のつもりで参加します」


インタビュー写真

――― 公演ごとに全く異なる展開が期待できるのはもちろんのこと、2つのチームによる見え方の違いを楽しむのも一興だろう。この4人では、楢原と深山、笠原と山本がそれぞれ同じチームで出演する。

深山「台本は同じでも、2チームで全く別の芝居になるんですよ」

楢原「相手のチームがどんなことをするのかなって、すごく気になりますね。笠原さんや芳樹のチームの方が、ファンサービスの得意な人たちが固まっているし(笑)」

山本「そういう意味では、こっちのチームはだいたいどういう形になるのか想像できる感じがしますね。もちろん、実際に取り組んでみないとわからないですけど」

楢原「こっちのチームは同世代が集まっているんですけど、みんなお客さんと触れ合うのがそんなに得意っていうわけじゃないから、3人でテーブルに固まっちゃうかも。それで、海司(曽世海司/犬のモンモランシー役)がひとりで走り回ってたり(笑)」

深山「こんなに同期で固まってチームを作るのは珍しいですね。何かあるたびに一緒に飲んでる仲間なので、その延長みたいな感覚です(笑)。実は芳樹(山本芳樹)も同期なので、あっちのチームに行って寂しいなというのはありますけど(笑)」

笠原「先日メインビジュアルの撮影をしたとき、全然意識してなくても自然に2つのチームに分かれていたのは面白かったね(笑)」



インタビュー写真

楽しい時間と空間を共有

――― 公演期間中、劇場はロンドンのフリンジをイメージした“PUB THEATRE”に変身。空間そのものを楽しみながら、作品の世界を通してコミュニケーションが図れるさまざまな仕掛けも用意される。最後に、公演に向けての意気込みを聞いてみた。

笠原「3人の紳士と犬1匹が癒しの旅に出て、いろんなことをやってるうちに気心が知れて、旅を終えて自分の家に帰っていく。そんな他愛もない話ですけれども、終わった後にほっこりするものが残る、心の底からひたすら楽しんでいただける芝居だということを強くお伝えしたいですね。観客参加型と言っても、必ず絡まなければいけないわけではないですし、ロンドンのパブの雰囲気を味わってみたい方にもお勧めです」

楢原「本当に気楽に楽しめる作品なので、出演者と観客でそういう時間を共有できるような芝居をしたいなと思います。過去の公演をなぞることなく、少しでも新しいトライアルができたらいいですね」

深山「お客さんと役者の距離がこんなに近い芝居って、あまりないと思うんです。だから、役者と一緒に楽しめるという……(次の言葉が出ない)ちょっと、ごめんなさい」

笠原「謝った!(爆笑) 新しいインタビューやな!」

深山「……すみません、こんなので(笑)」

笠原「これ、そのまま載せてくださいね(笑)」

山本「自分の質みたいなものって、どんな役をやっても多少は出るじゃないですか。それが、特にこういう芝居ではもっと出ると思うので、そこでまた課題も見えてくるだろうし。僕の新たな挑戦になる作品だと思うので、そこを見ていただきたいですね」

笠原「NEW山本芳樹だね(笑)」

楢原「たぶん、芳樹が一番楽しんでやってるかもしれない(笑)」

山本「ぜひ、NEWなところを見ていただければと(笑)」


(取材・文&撮影:西本 勲)


キメ画像2

公演情報