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ノエ・乾

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天才ヴァイオリニストが気鋭のピアニストと共に奏でる美しき調べ

有名曲だけではない、ヴァイオリン曲の豊かなレパートリーを体感できるリサイタル

ヨーロッパを中心に世界各国で活躍するヴァイオリン奏者、ノエ・乾。数多くの国際的なコンクールで首位に輝き、若き名匠と評される彼の演奏は、研ぎ澄まされた技巧と幅広い表現力で聴く者の心を打つ。日本での演奏機会も多く、来たる6月には東京文化会館でリサイタルを行う彼が、ヴァイオリンに向かう姿勢やリサイタルへの意気込みなどを話してくれた。

PROFILE

ノエ・乾(のえ・いぬい)のプロフィール画像

● ノエ・乾(のえ・いぬい)
1985年生まれ、ベルギー王国ブリュッセル出身。ドイツ・デュッセルドルフ在住。ブリュッセルの音楽アカデミーで学んだ後、ブリュッセル王立音楽院、パリ国立高等音楽院、ドイツ・カールスルーエ国立音楽大学をいずれも首席で卒業。2005年シベリウス国際コンクール特別賞、2006年ナポリ・クルチ国際コンクール第1位、2008年ニューヨーク・ヤング・アーティスト国際コンクール第1位、2011年ジーナ・バッカウアー賞、2012年ヴァルビエ音楽祭ユリウス・ベア賞各受賞。
ドイツ、フランス等欧州はもとより、アメリカ合衆国、アジア、南米等世界各地で演奏活動を行い、アルゲリッチ等著名アーティスト/オーケストラと共演。東日本大震災復興支援活動も積極的に行っている。

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5歳のときに人前で演奏して拍手を

――― ギリシャ人の母と日本人の父のもと、1985年にベルギーで生まれたノエは、幼い頃からヴァイオリンと共に暮らしてきた。

「父が趣味でヴァイオリンを弾いていて、僕も2歳の頃に小さなヴァイオリンを買ってもらったのが最初でした。普通のヴァイオリンは大きくてまだ弾けないし、触ったら壊されるんじゃないかと心配したのでしょうね(笑)。そして4歳から、スズキ・メソード(ヴァイオリニスト鈴木鎮一によって1940年代に創始された教育法で、世界46ヶ国に普及している)のレッスンを始めました。それ以外にも1日1回、決めた時間にちゃんと練習するという約束を親と交わして、レッスンを受けさせてもらえたんです。そうやって小さいときに毎日練習をしてきたかどうかで、大人になってからかなり違いが出るので、本当にありがたいと思っています」

――― その才能は早い時期から発揮され、グループレッスンでは10歳ほども年上の子どもたちと一緒に弾いたりしていたという。

「スズキの教本の最後はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲なんですけど、7〜8歳でそこまで全部終わってしまいました。そんなに成長が早いんだったら、もっと上の先生につけた方がいいんじゃないかとアドバイスしてくださった方がいて、そこから本格的に音楽の勉強を始めました」

――― 初めて大勢の人前で演奏したのは5歳のとき。福島県のとある幼稚園だったそうだ。

「親と一緒に1ヶ月間、父の実家がある棚倉町で過ごしたことがあったんです。それでベルギーに帰るとき、従兄弟が通っていた幼稚園でお別れ会みたいなものをしてもらって、当時レッスンしていた曲を200人くらいの前で披露しました。弾いているときはただ演奏に集中しているだけでしたが、終わった後にもらった拍手はとても覚えています。自分には何かができて、それを人が尊重してくれるということを、その頃から意識するようになったのだと思います」

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人生経験が音楽に深みを与える

――― ノエのレパートリーには、数あるヴァイオリン曲の中で特に難曲とされるナンバーも多い。「子どもの頃、最初に刺激を受けたのは超絶技巧でした」という彼だが、年齢と経験を重ねるうちに少しずつ意識が変化していく。

「僕はちょっと負けず嫌いなところがあって(笑)、人の演奏を聴くと、“絶対にもっと上手く弾いてやる”みたいな気持ちでぶつかっていた時期がありました。先ほども話したように、テクニック的な部分はある程度早い時期から磨いておかなければいけないところがあるので、そういう性格には助けられましたね。でも、成長にもいろんな種類があって、今はテクニックよりも深みの方に移っていると思います。もちろん、スポーツマンが体力や技術をキープするように、毎日の練習は欠かせません。でも音楽の深みというものは、音楽そのものの練習ではなく、人生経験に大きく左右されます。例えば子どもが生まれたりとか、親しい人を亡くしたりとか、いろいろな出来事があって自分という人間が変わり、音楽で伝えたいことも変化していく。そういう成長には終わりがないと思うんです。僕自身、まだまだ若い方だと思うので、これからですね」

――― 今は演奏活動の傍ら、デュッセルドルフの音楽大学でアシスタントとして学生に教えてもいるという彼。その経験から得るものも大きいそうだ。

「教えていて、僕の方が学んでいるような気がするときはよくあります。教えるために言葉にすることでわかることって多いんです。学生のために考えて言った言葉に、自分自身が気付かされる。そして学生が帰ったらすぐ自分で練習して、次のレッスンのときには僕はもう自分のものにしている。そんなふうに、教えることと演奏家としての活動が良いコンビネーションになっていると思います」

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ヴァイオリンとピアノで1つに

――― そんな彼は、2010年に初めて日本でのコンサートツアーを実施して以来、毎年のように来日公演を行っている。日本の聴衆に対する印象を尋ねると、「どんなプログラムも素直に受け入れてくれる」という答えが返ってきた。

「ヨーロッパ人やアメリカ人の中には、特定の作曲家を挙げて“○○と○○は聴いていられない”とか、“シンフォニーは○○しか聴かない”と決めつける人もいますが、日本のお客さんは何でも受け入れると思うんです。よく“ちょっと緊張する”とか“どこで拍手すればいいかわからない”って言ったりしますけど、それでも素直に音楽の響きを感じようとしている。そういう姿勢はとても素晴らしいと思います」

――― その言葉を裏付けるように、6月のリサイタルでも意欲的なプログラムが組まれる。

「ベートーヴェンやラヴェルといった誰でも馴染みのある作曲家の作品に加えて、シュルホフのヴァイオリンソナタのように、演奏される機会は少ないけれど、とても印象に残る曲も選びました。そういうコントラストを楽しんでもらいながら、“こんなレパートリーもあるんですよ”と伝えるようなプログラムですね」

――― さらに、昨年『IDENTITY』というアルバムを共作した若手ピアニスト、マリオ・ヘリングもステージに上がる。

「マリオとは日本で出会って、ドイツで何度も共演しています。音色がすごくはっきりしたピアニストですね。彼の演奏を聴いて楽譜を見ると、本当にそのとおりに書かれているんですよ。そういうのって珍しいと思うんです。小さな音楽記号の1つ1つまで100%活かす演奏というのは、僕も学生時代からずっと先生に言われてきたことで、彼はそれを自然にやれる。そういう演奏家と共演することで、自分のレベルも上がると思います。目で相手を追わなくても、耳だけですぐに一緒に演奏できる間柄です」

――― 当日はそんな2人の音によるやり取りをじっくり体感できるステージにもなるだろう。

「オーケストラの音楽って、1人1人が別々に弾いているんじゃなく、全体で1つじゃないですか。それと同じで、ヴァイオリンとピアノを、いかに1つの楽器として聴かせられるか。皆さんにはそこを楽しんでほしいですし、僕も大きめのホールで演奏できるのを楽しみにしています。たくさんの人に聴いてもらいたいですね」


(取材・文&撮影:西本 勲)

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公演情報

「ノエ・乾 ヴァイオリン・リサイタル」のチラシ画像
ベルギー・日本 友好150周年記念
ノエ・乾 ヴァイオリン・リサイタル


2016年6月11日 (土)
東京文化会館(小ホール)
HP:公演ホームページ

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