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松田岳

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劇団ひまわりとBSPが挑む、ダンス&アクション満載の王道エンターテイメント!

凍れる雪の世界に描く、平和への願い。大人も子どもも楽しめる壮大な冒険ファンタジー。

 1952年の設立以来、子役からシニアまで幅広い年代の役者を輩出し、日本のエンターテイメントを支えてきた劇団ひまわり。その記念すべき第一回公演『雪の女王』は、1959年、米ソ冷戦により緊張感の増す国際情勢のもと上演された。あれから56年、今なお世界各地で紛争は絶えず、日本もまた重大な岐路に立たされている。
 そんな中、『雪の女王』が装いも新たに再演される。アンデルセン童話『雪の女王』を原作に、世界平和を願って描かれた本作を今再び上演する意義とは。単純明快な冒険活劇の奥底に秘められた深いメッセージを、物語の核となるクリス役を演じる松田岳に聞いた。

PROFILE

松田岳(まつだ・がく)のプロフィール画像

● 松田岳(まつだ・がく)
1992年11月20日生まれ。兵庫県出身。2012年、『ミュージカル忍たま乱太郎第三弾〜山賊砦に潜入せよ〜』の潮江文次郎役で本格的に俳優デビュー。2013年、テレビ『仮面ライダー鎧武/ガイム』に仮面ライダーナックル/ザックとして出演、注目を集める。11月11日にはザックが主役のVシネマ『鎧武外伝仮面ライダーデューク/仮面ライダーナックル』がリリースされる。また、出演作「スマ恋シリーズ第2弾 恋弓」がスマートフォンサイト・スマートボーイズにて今秋配信予定。
BSPの舞台では、『ゼロ』『ゼロ・ファイター』『壬生狼』『零式ZEROSHIKI』『幸村−真田戦記−』に主演。チームの中心となってBSPメンバーを牽引している。

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人はみんないいところと悪いところを持っている。

――― 松田は初めて台本を読んだとき、「どんな感じになるか、明確なイメージは湧かなかった」と口火を切る。

「僕たちの力でどうにでもなるなって思ったんですね。僕の演じるクリスもそう。元気なやつにもクールなやつにもなるって」

――― これまで松田が所属するブルーシャトルプロデュース(BSP)では、武将・真田幸村を主人公にした『幸村』や、太平洋戦争下の若き飛行士たちの生き様に迫った『零式』などを上演してきた。

「『幸村』はBSPの拠点である大阪が舞台。大阪城も近くにあるから風景もイメージがしやすかった。でも今回は明確な風景というよりも、イメージがまるでディズニーのような世界。これを生身の身体で表現するのは難しいなって思いました。それこそ今、『雪の女王』と聞けば、みんな『アナ雪(アナと雪の女王)』を想像すると思う。その中で、どうガッカリさせずにこの世界観を舞台で体現するか。それが全体の課題ですね」

――― 松田演じるクリスは、5人の勇者のリーダー格で、行方不明となった弟を探している。クリスと、雪の女王にさらわれた妹・アンナを探すカレンが出会うことで、物語は一気に動き出す。

「クリスは女性が苦手っていうキャラクターなんです。アクションはもちろん、ヒロインのカレンと出会うことでクリスが右往左往する姿も楽しんでもらえたら」

――― クリスら5人の勇者には、それぞれ影となる役柄が用意されている。

「この5人だけに限らず、人間には少なからず影があるということを表現しています。人はみんないいところと悪いところをそれぞれ持っている。それが、この『雪の女王』の大きなキーワードなんですよ」

――― では、そう語る松田のいいところと悪いところとは何か聞いてみた。

「いいところは、ものすごくポジティブなところ。たとえマイナスの状況に陥っても、きっとこれがいつか自分のプラスになるって自然に思える。あんまりウジウジ悩んだりしないんです。悪いところは、自分が面倒だなって思うところを自然に他の人に任せることですね(笑)」



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今の僕たちの力が試される舞台になる。

――― 本作は、計2つのバージョンが用意されている。劇団ひまわりの将来性あふれる若いキャストがそろった「ひまわり版」。そして、「ひまわり版」では計37名のキャストで演じる物語を、たった13名で演じ切る「BSP版」だ。

「しっかりしたベテランの子どもたちが多いので、逆にこっちの背筋が伸びるような気持ちになります。顔合わせの段階から自分が想像していたよりずっと子どもたちからエネルギーをもらっていて。この子たちの演技を受けたら自分はこうなるんだって新しい発見がどんどん湧いてきた。いつものBSPメンバーとひまわりメンバーが合わさることで、すごく面白いものが生まれそうだなってワクワクしながら稽古を進めています」

――― もちろんこれまで築き上げてきた鉄壁のチームワークも「BSP版」ではますます磨きがかかっている。

「長年ずっとほぼ変わらないメンバーで一緒にやってきたっていう経験はやっぱりデカいですね。間のとり方にしても、カウントにしても、テンポにしても、長い時間をかけてここまで築き上げてきたものがあるし、芝居についてもみんなで考える時間が今まですごくありました。簡単に言うとチーム力ですね。特に僕たちはあまりセットや小道具を使わず、すべて僕たちの身体で表現しようという演出スタイルの集団なので、今回もそこが大きな見どころになるんじゃないかなって思っています」

――― そして最大の注目は、雪の女王役を演じる日向薫。元・宝塚歌劇団星組トップスターという偉大な先輩に、松田らは真っ向から挑んでいくこととなる。

「日向さんは、まさに個の力のトップのような方。そんな日向さんにどう立ち向かっていくか。僕たちの力が試されていると思います。きっと(BSPの活動を開始した)3年前の僕たちじゃ太刀打ちできなかった。でも今の僕たちなら力を合わせればどうにかなるかもしれない。雪の女王と立ち向かうクリスたちのように、僕たちも日向さんに立ち向かっていければ」

――― そこには、これまで一緒に公演を重ねてきたBSPメンバーへの信頼がある。

「前までは座長らしい仕事をちゃんとしようと考えてたんですけど、公演を重ねるごとに他のメンバーが頼もしく感じるようになって。今は“みんなすごいから、他のすごいところも引き出してあげられたらいいな”って思えるようになりました。そうした方が一人ひとりの新しい部分もたくさん見えてくるし、いつも観にきてくださるお客さんにもそういう新しい一面をどんどん見せてあげたいんです」

――― だが、松田自身は意外にも「成長の手応えを感じたことはない」と言う。

「幸運なことに、今回の日向さんとの共演のように、毎回、できるかできないかくらいの課題を絶妙なタイミングで与えてもらえている。それをクリアしていくことに必死だから、成長したなって手応えを感じることはあんまりないんですよ」

――― 若き成長株に、慢心の二文字はまったくない。常に自分の限界を超え、さらにその先の限界へ挑んでゆく。きっとこの『雪の女王』も、松田がさらに一段上へ進むステップとなるはずだ。

「ただ楽しかった、面白かっただけではなくて、人間の心の中にあるいいことや悪いことという作品のテーマが観る人の心に少しでも残ればいいなと思います。善悪のはっきりしたストーリーなので、大人も子どもみんな楽しめると思う。この『雪の女王』の世界観を楽しみながら、作品のテーマを受け止めてもらえたら」


(取材・文&撮影:横川良明)

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