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ほさかよう

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会話劇ならではの濃厚な空気と、記憶の中に秘められた謎に酔いしれる。

観る人の数だけ答えがある。
心の中を映し出す鏡のような芝居になれば。

PROFILE

ほさか ようのプロフィール画像

● ほさか よう
3月23日生まれ。京都府出身。06年、演劇プロデュースユニット「空想組曲」を結成。主宰を務める。07年、『小さなお茶会』で佐藤佐吉演劇賞・優秀脚本賞を受賞。「空想組曲」としてミステリー&ファンタジー要素のつまった作品を次々と手がける一方で、外部作品にも精力的に参加。多種多彩な作品を発表し続けている。14年の活動としては、CLIEプロデュース『うさぎレストラン』の脚本・演出、劇団プレステージ『ボーンヘッド・ボーンヘッダー』の演出、キャラメルボックス『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』脚本など。また、「空想組曲」としても、1月に番外公演vol.1『女王の盲景』、9月に番外公演 不揃いカトラリーシリーズ 『無意味な花園』を上演、好評を博す。

執事たちの集う夜会。それぞれの思惑が交錯し、物語は動き出す。

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「たとえどれだけ思い出の品が出てきても、どれだけ一緒の時間を過ごしても、死んでしまった人の心の中はわからない。でもわからないから切り捨てるんじゃなくて、どう付き合っていけばいいか。そんなことを、生きている人たちの心に響かせるような作品にしたかったんです」

――― そう話しながら、まっすぐに相手をとらえる眼差しは柔らかく、それでいて静かな湖のような深さがある。近年、精力的な活動で注目を集める「空想組曲」のほさかようが、この冬、挑むのは、自らが2年前に書き下ろした戯曲『眠れない羊』だ。2014年に結成したばかりのプロデュースユニット「LAUSU」とタッグを組み、ミステリー感覚の会話劇に新たな息吹を吹き込む。

「もともと男性だけでお芝居をするという前提があって。“だったら、全員執事なんでどうですか?”と軽い冗談のつもりで言ったら、採用になってしまった(笑)。だから、この作品はまず設定ありきでスタートしたんです。執事が狭いところに集まっているのを想像したら、それだけで怪しいし、何か事件が起こりそうな雰囲気がある。それで、ミステリースタイルの会話劇というアイデアが生まれました」

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――― 主の死から1年、屋敷に集った執事たちは主との思い出を語り合う。その中で、やがて主の見えなかった素顔が浮かび上がっていく。

「自分といる時はいい人だったのに、周りはみんなその人を悪く思ってた。そういうことってありませんか? でも、それってどちらの姿も本当なんですよね。どういう人だったかなんて、結局は自分の感覚や都合で決めるしかない。この作品も同じです。最終的に主はいい人だったのか。それとも極悪非道だったのか。答えは決まっているわけではないので、後はお客さんにお任せしたいんです」

――― 角度によって見え方が違うからこそ、人は面白い。演劇もまた、観客の数だけ見え方があるから面白いのだろう。

「僕は最近書いている作品に関してはお客さんの鏡になればいいなと思っているんです。コメディと見るか、サスペンスと括るか。ハッピーエンドと思うか、ドロドロとした後味の悪いものを感じるか。どう捉えるかによって今の自分が浮き彫りになる。そんな上等な鏡を用意できたらいいなと思ってます」


間違うことを恐れない。全員で実験を楽しめる稽古場にできたら。

――― 気心の知れたキャストが揃う中、注目なのは町田慎吾。ほさかとは初めての顔合わせとなる。

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「最近、別の現場の打ち上げで隣に座ることがあって。話してみたら、「空想組曲」の芝居を何本か観てくれていることがわかったんです。彼はすごく真面目なんだけど、とってもエネルギーが高くて、お芝居や好きなことを話すと二段階くらいギアが上がる。またその顔つきがカッコ良くてキラキラしているんです。お芝居の真ん中にいる人はやっぱりそういう人がいい。だから、今回、物語を引っかき回す役を町田くんにお願いしました」

――― 若手からベテランまでズラリと並んだ個性豊かな役者たちとともに、期待の注目株がどんな舞台をつくりあげるか。幕が開くのが、今から楽しみでならない。

「僕は最初から自分に明確なビジョンがあって、そこにみんなを固めていくタイプじゃない。それよりみんなで面白いアイデアを出し合って、ひとつひとつ実験しながらやっていく方が好きなんです。だから、この現場でもまずはみんなが発言したりトライ&エラーすることを恐れない空気をつくれたら。間違えたことを言って演出家に否定されるのは怖いけど、それよりもいいアイデアを持っているのに、それをお客さんに見せられないことの方がよっぽど怖い。だから、みんなが言いたいことを言える稽古場にしたいし、それができるメンバーが揃ったと僕は確信しています」
(取材・文&撮影:横川良明)

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