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松居大悟・奥村徹也・本折最強さとし

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1年半ぶりの新作公演が3都市ツアーで決定!

劇団メンバー6人のみで「身近な人が愛おしくなる作品」を描く

TVドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』、映画『アズミ・ハルコは行方不明』を手掛けるなど今注目を集める若手映画監督の松居大悟。彼が主宰する劇団ゴジゲンは、2008年の設立から『不器用にしか生きられない人間達が紡ぎだす軟弱なシチュエーションコメディ』を軸に作品を発表し続け、その後の活動休止を経て2014年に復活を遂げた。
 この度、メンバーの目次立樹に加えて、新しく奥村徹也、東迎昂史郎、本折最強さとし、善雄善雄の4人を迎え、来年の結成10周年に向け新たな一歩を踏み出す。再始動から3作目となる今作は、ここ数年間の想いが詰まった作品になるようだ。

PROFILE

松居大悟(まつい・だいご)のプロフィール画像

● 松居大悟(まつい・だいご)
1985年11月2日生まれ。福岡県出身。2008年、慶應義塾大学在学中にゴジゲンを結成。映画監督としても活動中。主な作品に映画『アズミ・ハルコは行方不明』『私たちのハァハァ』『スイートプールサイド』、TVドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』、2011年〜Confetti「女性が好きな心理テスト〜今宵あなたを癒さない〜」連載中

奥村徹也(おくむら・てつや)のプロフィール画像

● 奥村徹也(おくむら・てつや)
1989年7月13日生まれ。岐阜県出身。2008年、早稲田大学演劇倶楽部にて演劇を始める。卒業後、サラリーマン生活を経て2014 年「劇団献身」を旗揚げ。主宰と全作品の作・演出を務める。ゴジゲンでは最年少であることを武器にジャックナイフ的な存在。主な作品に舞台『ロンドン発!! 新春 僕たちのコント2016』、ゴジゲン『劇をしている』、ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』ほか。

本折最強さとし(もとおりさいきょうさとし)のプロフィール画像

● 本折最強さとし(もとおりさいきょうさとし)
1983年7月7日生まれ。北海道出身。早稲田大学相撲部を経て、演劇活動をはじめる。「本折智史」「本折さとし」を経て 、2014年より「本折最強さとし」として活動。2015年春には長塚圭史演出「蛙昇天」の主演をつとめ、仙台でも活動の場を広げる。主な作品に舞台シアターコクーン・オンレパートリー2017「プレイヤー」、「トリスタンとイゾルデ」ほか。

インタビュー写真

物語をやりたいと思った

――― 素朴な疑問ですが、ゴジゲン的な作品作りの流れをお聞きしても?

松居「松居「活動休止明け以降は、そろそろ始めようか、あいつら何しているのかな、という気持ちからスタートします。舞台稽古ならみんな集まるので、おのずと何をしているのか話すんです。そこでみんなの状況を知っていき、作品に落とし込んだりしています」

――― では今作の生まれたきっかけは?

松居「物語をやりたいと思っていて、物語をやらざるを得ないタイトルにしたいなと。実は前回もそう思って「劇をしている」とタイトルをつけたんです。ところが劇をしている話がドキュメントでできてしまいました(笑)。今回はやりたいと思ったテーマがありまして、『くれなずむ』は太陽が沈みそうで沈まないギリギリで佇んでいる状態で、人が意志とは関係なく沈む方へ向かっているけどでも沈ませない、みたいなことを描こうと思ったんです」

――― 今回のキャッチフレーズ「一番近い人の大切さを思い出す」とキービジュアルが絶妙ですでに心にぐっと来るような、泣けそうな物語を予感させますね。

松居「そうなんです!(2人に)そうなんだよ」

最強「(笑)でもまだ台本は受け取ってないけどね」

奥村「いつもそうなんです、なかなか稽古初日も始まらないんですよ(笑)前回覚えているのが、1〜2時間しゃべってゴロゴロしてて、さすがに気になってきて。でも松居さんはいつもおもむろにと台本を出すので、カバンの方に転がって行ったので『あ、きたな!』と期待していたら、ガザガザっとかりんとうが出てきて(笑)『食べる?』って」

松居「台本を出すのが恥ずかしくて…」

最強「彼を全然知らなければ不安になってしまう所ですが」

松居「プロデュースものだったらちゃんとやるんですけど(笑)」

最強「どんな芝居かな〜と、かりんとう食べながら想像しました」

松居「書かなかったら出来上がるのかな?というのを試したことがありまして。演劇をやるのではなく、なんなら劇を作らないと決めて稽古を始めて、それぞれの近況を聞いていたら面白くて、それを書いてきてよと。気づいたら前々回の作品(『ごきげんさマイポレンド』)は出来上がったんです」

最強「なので、あまり心配はしていません」

――― 本人たちの日常が反映された作品ができてしまったと。

松居「前回、前々回はそうでした」

奥村「みんなで持ち寄りましたね」

最強「自分の人生を切り取ったんです。でももうね、はぎとるものはない!(笑)」

松居「(笑)物語を書くしかないと」

奥村「先日会った時に『書くよ!』って気合いが入っていて、やる気を目撃しています」


インタビュー写真

『くれなずめ』は時間がキーワードに

――― とはいえ、先にキービジュアルや作らなければならない物はある訳で、この「チラシ」の撮影エピソードをお聞きしたいです。

松居「もともと部屋でゲームをしている感じにしたいと提案されましたが、リラックスしてゲームをしていたら本人になってしまうなと。今作が結婚式にまつわるお話なので、『スーツを着て来て』と原宿駅に集合して。ところが『さぁやるぞ!』って時に警備員が来て一番夕日のいい時間に撮れず…。でも良い雰囲気にデザインしてもらえました」

――― 引き出物の袋を持っているので目立ったのでは?

松居「そうそう、写真撮った帰りに渋谷を歩いていたら『2軒目どうですか?』とすごく勧誘された(笑)」

――― では結婚式の物語なんですね。

最強「この時なんとなく、薄々予想はしていました」

奥村「漠然と脚本を書くのは大変だから、今回は外側から埋めていってる感じがしましたね」

松居「僕は絵と雰囲気から考えていくので、ぼんやりとテーマを決めつつ。タイトルを決めてください、キャッチを書いてくださいとか、ビジュアルや取材で話しているうちに、言語化していくしかないじゃないですか。その作業で漠然としていたものが言葉になっていって、こういう取材を経て、これがやりたかったのかと整理されていくことも同時にありますね、そうして文字にしてみんなに伝えていきます」

奥村「始まると24時間体制みたいです」


来年10周年を迎えるゴジゲン。この作品は大きなターニングポイントとなる

松居「またゴジゲンを観たいなと単純に思ってもらえたら」

最強「10周年とは言いつつも休止をしていたので、これまでのゴジゲンを観ていた人が居ないのではないかと。今度来る方は初見だと思ってやればいいのかな。『くれなずめ』がゴジゲンなんだと捉えられてもおかしくない訳で。更にゴジゲンは今までこうだったけど、今回こんなのもできるよ!みたいな。今回がゴジゲンの作風と思われると思って俺は挑もうと」

奥村「みんな劇団員となって初のメンバーのみの公演で、ゴジゲンの再始動の様になっていますね」

松居「今回は自分を追い込んでいる感じもありますね。いつものメンバーを劇団員としたので。ゆるゆるとした関係も良いけど、10周年も見据えてはっきりさせていこうと」

――― 以前の取材で『永遠に続く放課後』とゴジゲンを表現されていて、とてもしっくりきました。そのコンセプトは今も変わらずに?

松居「それ俺が言ったのかな?いいですね(笑)それは今回の『くれなずめ』のタイトルにも通じるところです。漢字にすると意味が限定されるので。造語ですが命令形にして、『くれなず・む』だと状態だけど、『くれなず・め』はこっちが太陽をコントロールしている状態を表しているというか」

――― では時間がキーワードになるのですか?

松居「そうですね!時間は止まらないけど、でも感情や意志はコントロールできる。そうすれば時間なんて超えることができる。深くなってきたでしょ?」


インタビュー写真

6人が考えるゴジゲンという場所

――― ゴジゲン以外にも他の活動をされていますが、これはゴジゲンに生かし更に次へつながっていきますね。

最強「僕はいまシアターコクーンに出演していますが、次の駅前劇場でコクーンの芝居をしてやろうという気持ちです。あきらかに大きい!」(全員爆笑)

奥村「めちゃくちゃ声がデカくなる(笑)」

最強「おかしくなって帰ってきたぞ!と、悪い方に変わった自分を見せたいです(笑)変な方向行っちゃったぞって」

奥村「ぼくは自分が主宰の劇団(劇団献身)を持っていまして、そこでは演出などもやっているので、稽古中に思ったことを松居さんに言っていくという、演出面のサポートもできればいいなと」

松居「2人はゴジゲンの最年長(最強)と最年少(奥村)なんです」

――― 社会人になってから年齢差のある仲間とはなかなか巡り合えないので、この関係は貴重ですね。

奥村「実家みたいって言ってなかった?」

最強「温泉とか言ってた?」

松居「温泉は善雄(善雄善雄)でしょ!」

奥村「そうだ!普段がんばって、ここで羽を伸ばすと(笑)」

――― では今でも皆さんのゴジゲンに対する想いは変わらずでしょうか?

松居「実家の要素は強いですね。リラックスできて、何もしなくても許されるような」

奥村「うーん自分のホームもあるので、何だろう、おばあちゃん家?違うな、部室な感じかな?このメンバーだとそんなイメージですね」

最強「僕は具体的な物というよりは、イメージ的に言うと綱渡りのセーフティネットみたいな感じですかね。サーカスにあるような、ギリギリで受け止めてくれる、死なない所に張ってあるアミ。だから綱も渡れる。いつ落ちても大丈夫なイメージですね」

松居「みんなバラバラの方がいいね。全員が実家だったら気持ち悪い(笑)みんなにとって利用したり、救いになったり、それぞれ想いが違っているところがゴジゲンですね。適度な距離感でいる方がちょうどいい」

――― では最後にメッセージをお願いします。

最強「さっきと言っていることが真逆になりそうですが(笑)ゴジゲンが復活してからは、物語を演じている作品が少なかったので『こいつらちゃんと演じられるんだ、素人ではないぞ』という所が見せられたら」

奥村「劇団員になったことで変に力まず、今までの空気感は維持して1本筋の通った物を作れたらいいなと思っています」

松居「僕が演劇を休止していた時もカンフェティではずっと連載を続けさせてもらっていました。ずっと見捨てずにいてくれて、僕はこれがあったからこの世界に戻って来れたんです。これを読んでいる方は、きっと僕のことを『心理テストをやっている奴』と思っているかもしれないので、『劇をちゃんとやっているぞ』とわかってもらえるように。
ぜひ観に来て欲しいですし、観に来たら後悔させません。身近な人が愛おしくなる作品にしますのでお楽しみにしていてください」


(取材・文&撮影:谷中理音)

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