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大西輝卓・樽谷佳典

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今を見逃すのはもったいない! 大阪出身・劇団現代古典主義の新たな一歩

ここにしかない新演劇「同時進響劇」。大阪で1500人動員した劇団が東京で始動

2007年の設立以来、大阪で活動を続けてきた「劇団現代古典主義」。脚本・演出の夏目桐利を中心に「同時進響劇(どうじしんこうげき)」という独自の演出表現を使った舞台が人気を集め、2014年に上演した『帝国の湖』では1500 人を超える動員を実現した。そんな人気劇団が上京後、遂に初公演を行う。シェイクスピア作品『ヴェニスの商人』を悲劇にアレンジした本作でW主演を務める劇団員の大西輝卓と樽谷佳典に、劇団について、同時進響劇について、本作について話を聞いた。

PROFILE

大西輝卓(おおにし・てるたか)のプロフィール画像

● 大西輝卓(おおにし・てるたか)
1989年1月9日生まれ。愛媛県出身。現代古典主義を代表する看板俳優。同時進響劇では『深海のBreath』『ジョルジュの木』『帝国の湖』で主人公を務める。激しい感情表現と深い声質で、各作品を牽引する。他劇団作品・映画作品への出演やモデル経験も。特技はホーミー(モンゴル歌唱法)。
 「上京するときは新幹線で移動しました。僕、そもそも実家が愛媛なので一回地元を離れてるんですよ。だから特に感慨もなく無感情で来ましたね(笑)。愛媛を離れるときも今回も『いつでも帰れる』って気持ちです」

樽谷佳典(たるたに・よしのり)のプロフィール画像

● 樽谷佳典(たるたに・よしのり)
1989年1月4日生まれ。大阪府出身。身体能力と演技センスに所属当時から恵まれ、どのような役柄でも演じる器用さが特徴。性格は明るく活発で、メンバーの中ではムードメーカー。
 「大阪から自転車で上京しました。新幹線じゃちょっと味気ないし、ここまでの道のりをちゃんと自分の足で感じたくて、まる6日かけて海援隊とか聴きながら来ました。そういうのに酔うのが好きなタイプなんです(笑)。『帰らないぞ』って気持ちで来たんですけど、結婚式やらなんやらでしょっちゅう帰ってます(笑)」

インタビュー写真

台詞の一音一音が決まっている“同時進響劇”

樽谷「初めてです、インタビュー。」

――― おふたりともですか?

大西「はい、初めてです。」

樽谷「緊張します!」

――― ではたっぷりうかがいますね! よろしくお願いします。

2人「よろしくお願いします。」

――― まずは「劇団現代古典主義」がどういう劇団かというところから教えてください。

大西「もともと大阪で立ち上げた劇団で、ヨーロッパの古典風のオリジナル戯曲を“同時進響劇(どうじしんこうげき)”という独自表現で上演しています。」

――― オリジナルで古典なんですね。

樽谷「そうです。なので台詞には、日常では使わないような古典調のきれいな比喩だったり言葉だったりが出てきます。」

――― “同時進響劇”とはどんなものなのでしょうか?

大西「例えば今いる部屋と隣の部屋、同じ時間にお互いの部屋で何が起きているかは見えないじゃないですか。それを舞台上で一気に見せてしまおうっていう手法です。交互ではなく同時で、テレビを2画面に分けて映像を流すようなイメージのお芝居ですね。」

樽谷「台詞も同時進行で、交互に重ねるようなイメージです。」

――― DJがうまいこと2曲同時に流してるような感じでしょうか?

樽谷「そうです! しかも全部がリンクしてるんですよ。」

――― それは台詞回しも大変そうですね。

樽谷「僕らは“オーケストラ劇”という言い方もしてるんですけど、演出家から「自分たちを楽器と思え」と指導されていて。ミュージカルではないのですが台詞に音が決められてるんです。(複数の物語が同時に進んでいる分、)大きい波をみんなでつくっていかないと、お客さんの耳に台詞が入ってこないので。」

――― 音まで決まってるんですか!

大西「文字一つひとつに音の指示がくるんですよ。」

樽谷「だからアドリブは一切禁止です。誰かの音が変わるだけでガタガタ崩れていくので。台詞を飛ばすとかもう絶対……。」

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――― でも舞台って何が起こるかわからないですよね。何か起きたらどうするんですか?

樽谷「彼(大西)がいつも主演をやっているので、大体仕切り直してくれますね。」

大西「どうしよう…とはなるんですけど、つなげないと大変なことになるので(笑)。」

――― 大阪での最後の公演は1500人を超える動員だったそうですが、アドリブ禁止でそれは、同じとわかっていても何度も観たくなるということですよね。

大西「やっぱり同時進響劇というのは大きいかなと思います。同時に進んでいる複数の場面を一回で全部は観れないので。だから毎回観方が変わるし、気付くことがあるし、そういう部分が楽しめるのかなっていうのは思います。」

――― 観に来た方の感想ってどういうものが多いですか?

樽谷「まず「初めて観た」とは言ってもらえます。あとは「同時に進んでいた物語が寄り添う瞬間が気持ちいい」とか。でも「泣いた」とか「感動した」っていう風にも言っていただきます。」

――― 「泣いた」「感動した」っていうのは、独特の手法も超えて、物語が素晴らしいいうことですよね。どういう感じが好きな人に相性がいいですか?

大西「観ててズシッとくるようなのが好きな人は合うと思います。濃厚というか。音楽で言えば中島みゆきさんみたいな…。」

樽谷「そうね! 苦しい想いをしてる人にも観てもらいたいです。解決策というのではないんですけど、こちらも苦しんで演じるので、そこで引っかかってた涙がちょっとでも出るのであれば何かが変わるかなというような期待を込めています。」

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東京は“再スタート”

――― 大阪で7年活動して人気も確立してきた中で上京(2015年)されたのはどうしてですか?

大西「東京行こう、みたいなことは最初から言ってたんですよ。」

樽谷「ぶっちゃけ「売れたい」っていう。」

――― 劇団員全員で上京して来られたんですか?

樽谷「いえ、十数名いた団員の内3名+代表の計4名で上京しました。同時進響劇をイチからつくってきた人たちがみんな大阪に残ってしまったので、東京は再スタートみたいな気持ちで始まりましたね。」

――― その4人で上京されて翌年から新メンバーを募って、本格的な活動開始が今年。時間があいたのはどうしてですか?

樽谷「素直に言うと劇団員がなかなか集まらなかった。さっきお話ししたように“同時進響劇”は特殊な分、(客演ではなく)劇団員として一緒にやりたいと思ってくれる方じゃないとなかなか難しいんですよね。そういうのもあって時間がかかりましたね。」

――― 今回の公演が劇団員の増えるきっかけになるといいですね。

大西「そうですね。それを望んでいます。」

樽谷「強く望んでいます!」

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「現代古典主義」というジャンルを確立したい

――― 今回上演される同時進響劇『アントーニオとシャイロック』のお話も聞きたいのですが、シェイクスピア作品『ヴェニスの商人』にオリジナルの解釈を加え、悲劇として上演されるそうですね。『ヴェニスの商人』は喜劇ですが、それを悲劇として描くのは、例えばシャイロック視点では悲劇というような意味のアレンジなのか、話自体を変貌させているのか、どちらでしょうか?

樽谷「後者です。どちらかというと設定だけもらって、僕たちなりのド悲劇をつくる、というようなイメージで。(『ヴェニスの商人』の登場人物である)アントーニオとシャイロックの弱いところをどんどん剥き出しにして、見たくないものを見せる。そこから愛おしさや惹かれる価値観を拾っていただきたいという感じです。」

――― 『ヴェニスの商人』を知らない方は予習していったほうがいいですか?

大西「予習したらしたで楽しめますし、しなくても全然大丈夫だと思います。」

――― この作品ではいくつの物語が同時に進行するんですか?

樽谷「基本的にはアントーニオ(樽谷)とシャイロック(大西)の2つ軸ですね。」

大西「今まではしっかりとした舞台セットが組まれてて場所で分けてたんですけど、今回は人間で分けているので。新しいチャレンジでもあります。」

――― 他にどういうところが新しい公演になりそうですか?

大西「僕らのアトリエで上演するので、今までに比べて役者を近く感じられると思います。大阪では400人くらいのホールとかでやっていたんですけど、僕らのアトリエは20席くらいなので。」

――― 全然違いますね!

樽谷「本当に初めてです、こういうのは。」

――― ちなみにこれからどんな劇場に出たいとか考えていますか?

樽谷「最終地点は帝国劇場です! 大阪の居酒屋で帝国劇場の詳細を把握しないまま盛り上がって決めたんですけど(笑)。でも言ってしまったからには帝国劇場です!」

――― 素敵ですね!

大西「それに付け加えて、「現代古典主義」っていうジャンルを確立したいなっていうのも、もう一つの大きな目標です。」

――― 今、ジャンルの一つになるようなものをつくっている自覚があるということですね。

2人「そうですね!」

樽谷「だから今はまず僕らを知ってもらって、メンバーも募集して、できるだけ早く準備を整えて、定期公演として自分たちのスタイルの作品を上演していきたいですね。」

――― では最後にお客様に一言ずつお願いします。

樽谷「演出家によく「ちゃんと心を削ってお客様の前に立ちなさい」と言われるんですけど、それもただ自分を追い込むのではなくて、ちゃんとお客様の胸に響くようにやっていこうと思います。そんな僕らの姿をぜひ観に来ていただけたら嬉しいです!」

大西「同時進響劇っていう新しいことに挑戦している様をぜひ一回…いや何回でも観ていただきたいです。たくさんの方に僕たちが何をしているのか観ていただきたいので、よろしくお願いします!」


(取材・文&撮影:中川實穗)


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