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西田大輔

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長らく封印してきた愛情深い3作品を、怒濤の一挙同時上演!

DisGOONieでしかできないことをやろう。西田大輔史上最大の大冒険が今、始まる。

4度目の航海の汽笛が鳴る――演劇界を代表するヒットメーカー・西田大輔による演劇プロジェクト・DisGOONie。前作『Sin of Sleeping Snow(以下、SSS)』から1年のときを経て、今まさに次なる冒険へと碇を上げようとしている。今度の船旅の名前は、『From Three Sons of Mama Fratelli』。直訳すれば、フラッテリーママの3人の息子たち。そう、DisGOONieの由来であり、西田が最もこよなく愛する映画『グーニーズ』に登場する悪役ギャングのフラッテリー一家からその名を拝借しているのだ。 『真・三國無双』『さよならソルシエ』『煉獄に笑う』と話題作が相次ぐ西田だが、だからこそベースキャンプであるDisGOONieへの愛情は深い。高らかに帆を上げたこの船は、今度はいったいどんな航路を行くのだろうか。

PROFILE

西田大輔(にしだ・だいすけ)のプロフィール画像

● 西田大輔(にしだ・だいすけ)
1976年11月13日生まれ。東京都出身。脚本家、演出家、俳優。95年、日本大学芸術学部演劇学科演技コースに入学。そこで出会った仲間たちと共に、96年、AND ENDLESSを結成。主宰と脚本・演出を担い、『FANTASISTA』『美しの水』など数々のヒット作を生む。また、舞台『戦国BASARA』シリーズや『もののふ白き虎』など劇団以外の作品も多数手がける。15年3月、新たな創造の場として、DisGOONieを設立。

● DisGOONie(ディスグーニー)
西田大輔が「創ることは出逢うこと」をテーマに、演劇界のみならず広い視野でのエンターテイメント界で俳優たちとの新たな冒険を目指し、2015年に設立。11月、旗揚げ記念公演『From Chester Copperpot』で怒濤の3作同時上演を果たす。16年2月、『ジーザス・クライスト・サムライスター〜殿中でござる!〜』を上演。同年6月、新作『Sin of Sleeping Snow』を上演した。

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DisGOONieをやることが、僕の生きている意味だと思う。

――― 前作『SSS』は、DisGOONie初の完全新作。DisGOONieにとって挑戦の1作を終え、西田の胸に沸き上がったのは、ゼロからつくり上げることへのシンプルな喜びだった。

「もちろん原作モノには原作モノの喜びがあり、楽しさがあります。でも、敢えてはっきり言えば、このDisGOONieは、僕にしかつくれないものをつくる場所。出来不出来は別にして、僕という人間が存在しなければ生まれなかったものに挑戦することが、DisGOONieの意義なんだということを再認識しましたね」

――― 映画『グーニーズ』に出会った幼少期から変わることのない冒険への憧れ。DisGOONieの作品群には、西田の少年のような一途な想いがつまっている。

「大袈裟な言い方かもしれませんが、DisGOONieをやることが僕の生きている意味なんだなって。DisGOONieで作品をつくることが、僕にとっていちばん大切なことであり、これ以上のものはないと、そう思っています」

――― 演劇を始めたのは19歳。そこからANDENDLESSを超人気劇団へと成長させ、2.5次元の世界ではいくつものヒット作を手がけた。キャリアも実力もある才傑だが、このDisGOONieで新作をやり遂げたことで、改めて気づいたことがあると言う。

「自分は本当に頭がおかしいんだなってことですね(笑)。たとえばですが、僕は俳優のここを見せたいという欲が人一倍強い。その衝動に従って前作をつくっていたら、当初は休憩込みで3時間の予定だった作品が、初日には4時間の超大作になっていました…(苦笑)。こんなバカは、他にいない。当初の予定よりも、時間が増えてしまいました。非常に反省しています。(とても苦笑)その融通の利かなさというか、苦労するのがわかっていながら敢えて大変な道を選んでしまう一筋縄ではいかない性格が、作品を色気の孕んだものにしているのだとも思う。
 頭の中で想像した通りのものが出来上がるのも素晴らしいけれど、演劇は人と人が出会う場所。だったら、僕と俳優やスタッフが出会ったことによって起きる化学作用の面白さを僕は信じていたいんです。うまくまとめられるものを、DisGOONieでやる必要はない。DisGOONieでしかできないことを、これからもやっていこうという決意は強く持っています」


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過去の作品たちを、今の自分がどう演出するのか。

――― その言葉を証明するのが、本作『From Three Sons of Mama Fratelli』のラインナップだ。今回は、2005年初演の『GOOD-BYE-JOURNEY』、2010年初演の『枯れるやまぁ のたりのたりとまほろばよ あぁ 悲しかろ あぁ 咲かしたろ(以下、枯れるやまぁ〜)』、そして2006年初演の『SECOND CHILDREN』という過去作品3本を一挙同時上演する。3作同時上演は、旗揚げ公演以来2度目。「あんな無茶なことは、もう二度としない」と苦笑いしたはずの無謀な試みに再び挑戦する。

「『GOOD-BYE-JOURNEY』の主人公はジャンヌ・ダルク。彼女が魔女裁判にかけられるまでの物語です。女性が主人公なのは、僕の作品の中ではこれだけ。もともとジャンヌ・ダルクに興味があったのと、魔女裁判という題材にすごく惹かれるものがあったんです。
僕の中でも極めて王道の、わかりやすいストーリー。ですが、上演当時、何となく時代にハマッていないような感覚がありました。そんなこともあって、以降、自分の中で少し小難しいダーク路線に舵を切った時期もあったんですけど、ここ数年、『もののふ』シリーズを筆頭に当時の作品を再演する機会に恵まれて。今ならこの作品がどう届くのかを確かめてみたい気持ちが沸き上がってきた。そこで、まずはこの作品を再演することを決めたんです」

――― 作品を語るときの西田の表情はいつも柔らかい。その眼差しは、子を持つ親のそれとまったく同じだ。

「『枯れるやまぁ〜』は天下の大泥棒・石川五右衛門が題材。五右衛門と言えば一般的に庶民のヒーローというイメージがありますが、ここで描かれる五右衛門はそれとは正反対のどうしようもない男です。
 物語をわかりやすく解説すると、西田版・清洲会議。主人公は、茶々(淀殿)が飼っていた猫です。猫がネズミを追いかけるように、五右衛門が、当時ハゲネズミと呼ばれていた秀吉のもとへ押し入り盗みを働く物語を、猫の視点から見つめます。五右衛門が狙ったのは、秀吉がいちばん大切にしていたもの。果たしてそれは何なのかを描く、ちょっと一風変わったダークファンタジーですね」

――― 3作目『SECOND CHILDREN』は発明家・平賀源内と、蘭学医・杉田玄白の友情物語だ。

「平賀源内の発明品で最も有名なものと言えば、エレキテル。木製の小箱で、電気の発生装置だったと言われていますが、実はこれ自体、源内が何のためにつくったのかは証明されていないそうなんです。この物語のもう一人の主人公は、まさにこの小箱。いったいこの箱は何だったのかを描く物語です。そういう意味ではこれほど演劇的なことはないな、と。
 僕の中では、最初にこの作品を書いたときから、大人が見て涙するものをつくりたいという想いがありました。僕もそうですが、年をとるほどに何を見てもどんどん騙されなくなっている自分がいる。一方で、ものすごく涙脆くなった自分もいるんです。そんな年代の大人たちのために描いた物語を、今、40代を迎えた自分がどう演出するのか、自分でも楽しみではあります」


これぐらいの無茶をやって、初めて見える場所がある。

――― 本公演が3本立てになった理由のひとつを、西田は「一緒に作品をつくりたい俳優を挙げていったら、自然と1本や2本ではおさまりきらない人数になったから」と照れ笑いを浮かべながら答える。盟友・田中良子や村田洋二郎をはじめ、中村誠治郎、谷口賢志、萩野崇、伊阪達也など「西田組」と呼ぶべき常連メンバーが、今回も顔を揃えた。さらに『枯れるやまぁ〜』では、前作『SSS』で織田軍を演じた俳優陣が役柄もそのままに再登板する。

「その中で初めてご一緒するのが、女優の文音さん。彼女には『GOOD-BYE-JOURNEY』のジャンヌ・ダルクを演じてもらいます。彼女にとっても、知っている人が誰もいない現場になりますが、その感じが、ドンレミという村で暮らす平凡な少女だったジャンヌ・ダルクが国の救世主として祭り上げられていく姿と上手く重なれば」

――― また、DisGOONieとしては初となる大阪公演も控える。一隻の船が進む先は、まだ見ぬ水平線の向こうへと確実に広がっている。

「大阪公演は目標でもあったし、できるならこれを当たり前にしていきたい。やっぱり演劇にはDVDでは味わえない魅力がある。それを多くの方に感じていただくためには、つくり手側が東京以外の地域でも上演できるよう努力をしていくことが大事なんだと思います」

――― 船を出すということは決して容易いことではない。嵐に見舞われ、船が難破し、乗組員が散り散りとなる可能性だってゼロとは言えないのだから。それでも、西田は覚悟をもって帆を上げる。4度目の航海は、きっと今までで一番の大冒険になるだろう。

「劇場のスケールも大きくなって、まさにここが正念場。ここを成功させなければ、目標の航路を見失うような危機感もあります。きっと、DisGOONie史上最大の難所となる。と言うよりも、毎回公演をやるたびに自分で勝手に難易度を上げている気もします(笑)。たぶんそうしないといけないという自覚があるんでしょうね。それぐらいやって初めて見える場所がある。そこへちゃんとみんなで辿り着けるように、今回も精一杯頑張ります」


(取材・文:横川良明/撮影:友澤綾乃)


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公演情報

DisGOONie Presents Vol.4
『From Three Sons of Mama Fratelli』


2017年6月9日(金)〜18日(日) ※他、大阪公演あり
Zeppブルーシアター六本木
HP:公演ホームページ
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