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グループK&直也の会

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満員御礼で花道を飾った奇跡のタッグ、再び!

娘を探す男、運命に翻弄されていく狂おしくも切ない情愛物語

2015年6月、閉館してしまった笹塚ファクトリーにて好評を博した舞台『愚かもの梶鉄』が行われた。その公演こそが俳優の香川耕二が主宰「グループK」と俳優・脚本・演出家の石橋直也が主宰「直也の会」のタッグによる合同企画であった。そのタッグが2年の歳月を経て、シアターXにて新作を引っ提げて再結成される。前作を優に超える総勢47名が挑む物語は男と女、どちらの視点でも味わい深い情愛が描かれる父娘の物語。主演の香川、脚本演出の石橋、そして本作のWヒロインとして選ばれた高野璃奈、渡辺悠子、馬場玲乃、伊藤葉月に本作への想いを語ってもらった。

PROFILE

香川耕二(かがわ・こうじ) のプロフィール画像

● 香川耕二(かがわ・こうじ)
1958年8月28日生まれ。東京都出身。円演劇研究所卒業。劇団はみだし劇場、現椿組で全国各地で活動。大河ドラマ『武蔵』『おさんの恋』『太平記』、映画『隠し剣鬼の爪』、舞台『贋・四谷怪談』ほか出演多数。<グループK>主宰。

石橋直也(いしばし・なおや) のプロフィール画像

● 石橋直也(いしばし・なおや)
1985年8月14日生まれ。福岡出身。大衆演劇界で生まれ育ち、上京後は商業演劇を中心に活動。歌舞伎から現代劇まで、ジャンルを越えて様々な舞台演劇に出演。自身の脚本・演出作品を上演する<直也の会>主宰。

高野璃奈(こうの・りな)のプロフィール画像

● 高野璃奈(こうの・りな)
1992年7月13日生まれ。埼玉県出身。日本大学芸術学部で演劇を学ぶ。現在はフリーで活動中


渡辺悠子(わたなべ・ゆうこ)のプロフィール画像

● 渡辺悠子(わたなべ・ゆうこ)
1994年2月2日生まれ。千葉県出身。出演作にEX「黒服物語」、AKB48「KONJO」PV、「earth music&ecology」CMなどがある。

馬場玲乃(ばば・あきの)のプロフィール画像

● 馬場玲乃(ばば・あきの)
1995年12月15日生まれ。舞台や映像で活躍中。主な出演作としてTBS「確証〜捜査3課〜」、EX「おトメさん」などがある。

伊藤葉月(いとう・はづき)のプロフィール画像

● 伊藤葉月(いとう・はづき)
1991年9月16日生まれ。愛知県出身。出演作に「Redbull」広告、ファード「きぬさら」CM、ティアラ「とーたる」CMなどがある。

インタビュー写真

再タッグのきっかけ

――― 香川と石橋が初めてタッグを組んだ『愚かなもの梶鉄』から2年。再タッグの提案をしたのは香川からだと言う。

香川「『愚かなもの梶鉄』のような男の世界が描かれたテイストでもう1回新作をやらないかと、去年、石橋君に話を持ち込みました。」

石橋「実は、『愚かなもの梶鉄』以降、二度とはできないと思っていたんですよ。本当に奇跡みたいな公演でしたので。」

香川「口コミが多くて、当日券やキャンセル待ちを求めるお客さんの長蛇の列ができたんですよ。ちょうど笹塚ファクトリーもその年で閉めることが決まっていたのもありましたので。任侠道の作品を大勢のお客さんに観てもらったので、花を咲かして、これでスパッと終わるのも綺麗だなとも思っていたんです。」

石橋「こんなに素敵な公演ができたんだから、これで終わったら綺麗ですねって話していたので2回目はないと思っていたんですけど、香川さんの情熱とラブコールで決定しました。」

香川「前回は作品も然ることながら、芝居を作る段階から理想的なものができたのと、今回は47人という大所帯でメンバーもだいぶ変わり、1からまた同じようなペースで作れるので、それが僕としては楽しみなんですよ。」

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――― 前作は任侠道をメインとした男の無情さを描いた作品。今回は父娘の情愛に焦点を当てた完全新作である。

石橋「今回も人間ドラマなんですよ。とても古典的なシナリオで懐かしさをイメージして作りました。大人の童話といったところですね。」

香川「主に親子をテーマにヤクザの親父が、離ればなれになってしまった娘を探し歩く旅みたいな話で書いてもらいました。」

石橋「また作品の中に男の視点と、女の視点があるんですよ。男の視点では、香川さんが演じる衣笠がヤクザゆえの苦しみが描かれています。女性視点として、Wキャストで芽衣子と蛍というWヒロインが登場します。女の子たちは両親のいない2人がどう生きてきたかというドラマを衣笠の物語と同時進行で描いているので、女性も楽しめる作品になっています。」

香川「台本を読ませていただいたときに、ヤクザである男の視点に合わせた人間ドラマにしようとしているのが分かったんですよ。なので、ドンパチして、「タマをとってやる!」というような話ではなく、本当に人間的なお話です。一人の視点から見た、親子の情愛や切なさを描いているので、心の機微を捉えたような作品になればいいなと思っています。」

石橋「実はこの作品は病室の中で書いたものなんです。僕が5か月前に脳梗塞になってしまい、口や手が不自由になり、記憶力も落ちている状態で書いた本なので、すごく思い入れが強いんですよ。」

香川「自分が一番苦しい思いをして、葛藤をしている中で作品を書いていると、作品のテイストが重くなったり、自分節になったりするのですが、自分の中の物語を自分の中で集約されて、しっかりと考えられているなと最初に思いました。自分の気持ちを大事にしてこういう物語を書きたいんだなと第一稿を見た段階でわかったので、「僕はこの本、好きだよ」と言えたんですよ。」

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オーディションで選ばれた4人のヒロイン

――― 主人公・衣笠の運命を翻弄するヒロインの芽衣子(高野・渡辺)、蛍(馬場・伊藤)はグループK史上初めてのオーディションで選ばれた。2度のオーディションを設け、妥協なき審査が行われた。

高野「ちょうど新しいことにチャレンジしたい時にお話を頂いたので、楽しそうだなという気持ちでオーディションを受けに行きました。オーディション中にワークショップも設けて頂き、ドキドキワクワクしながら、様々なエチュードをさせてもらいました。台本の一部を読み合わせする審査の時に、すごく自分の中では「芽衣子をやりたい!」と思っていたので、その役を頂けて嬉しかったです。」

馬場「私自身、活動が小劇場中心で、シアターXのような大きさの劇場でお芝居をしたことがなく、絶対にいい経験になるなと思ったのでオーディションを受けたんです。オーディションの内容も面白くて楽しいと感じたので、きっと稽古も本番も楽しいと思ったんですよ。受けている途中に石橋さんからいろんな話を聞いて、「甘い気持ちでは出来ないな」と思い、やるからには今までと同じ努力では板に立つことは出来ないと思い覚悟を決め、絶対にこの役を取ろうと思っていました。」

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伊藤「オーディションを受けたときに、どんな役であっても絶対この舞台に立ちたいと思っていました。この作品は、私にとって必ずいい経験になると感じています。作・演出の石橋さん、主演の香川さんをはじめ、まわりの素晴らしいスタッフ、共演者のみなさんに、たくさんいい影響をいただきながら、作品に全力であたっていきたいと思います。」

渡辺「たまたま、あるゲームの映像を見ていた頃に、オーディションの話を頂いたのですが、そのゲームで主人公のCVもしていらっしゃる大塚さんのお名前を観た時にとっても驚きまして、勝手ながら一種の運命的なものを感じていました。オーディションでは、正直とてもプレッシャーを感じていたのですが、葉月さんとペアを組ませて頂き、しっかり気持ちが入って、プレッシャーよりも、ずっと演技をしていたいという気持ちになれました。どんな役であってもこの作品に絶対関わりたい思っていたので、合格した時は正直、泣いてしまいました。」

石橋「オーディションのとき、実は演技だけでなくて、その子たちの向かう姿勢だったり、「何かを残さなきゃ!」という姿勢を見て判断をしているんですよ。今いい演技をしても、そのカンパニーに合流した時に、いい演技ができるかはわからないので。例えば、葉月ちゃんは、二人の演技を「うまいなぁ」と思いながら真剣に見ていた顔が良かったりするんですよ。渡辺さんだったら、ベテランさんの演技を横で見ているんですけど、その目がいいんですよね。この公演も直也の会も一緒に作っていくことが一番なんですよ。「乗りかかった船なんで、一緒に漕がしてください!」という子たちであれば、嬉しいんです。」

香川「47人というメンバーが出ることに対しての意味としては、親子の話を集約したドラマじゃないっていうことなんですよ。一人ひとり生きていく人間が浮き彫りになる。なので、群像芝居だよねって、石橋くんと共に話しています。群像劇は、みんなで作るというのが要になるので、それを踏まえると、そういう人たちが選ばれていくんだと思います。」

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懐かしさを感じる人情劇

――― オーディション後、改めて役と台本を渡されたときに、話の展開に皆が驚いたという。そして読み合わせでは、周りの気迫と厚みに圧倒されながらも、必死に演じようとする姿勢が4人のヒロインにはあった。

高野「読んだ時に一人ひとりが生きていて、生きなきゃ成り立たない本だなと感じました。読み合わせのときも、周りの方々の人としての厚みですごくて圧倒されたんですよ。Wキャストなので、お互いに持ち上がれるように、みんなで頑張りたいです。」

馬場「最初読んだ時は、最後の展開にびっくりしたんですよ。みんなとのつながり、感情の機微を繊細に演じたいと思っています。読み合わせでは、まだまだ自分が浅く感じたのと自分の役に奥行きがあることを改めて知ったので、みなさんと一緒に追いかけていきたいです。」

伊藤「一人ひとりのストーリーが見える話になっています。読み合わせでは、一発で「あ、こういうイメージなんだ!」と自分の中ではすごく明快になった部分がありました。他の素晴らしいキャストのみなさんからたくさんの影響を受けながら、自分がどんな風に演じられるかが、今から楽しみです。」

渡辺「自分はまだまだ経験不足ですが、自分でできるアプローチは?と考えたときに、当時の時代背景を知るために、色んな所を巡り、勉強をして、足りないところを補うことならできる、と思いました。できる事の一つとして、作品に没入できるようイマジネーションを高める作業をしていきたいと思っています。」

香川「人間らしさがあり、風俗とかを表で表現していくので泥臭さも感じられ、そういうところのリアリティが本を見て感じます。そういうものが今後も必要なのかなと自分の中では思います。」

石橋「昔帰りしたいんですよ。最先端の演出・脚本・演技を作る素晴らしい方々がいる中で、人情や一人ひとりのドラマといった大昔からある懐かしさを舞台に出しつつ、一人ひとりを素敵に書きたいんです。役者さんが、いかに素敵に板の上に立てるか、香川さんの良さである男という部分をいかに出せるかとかを考えています。47人の人間ドラマなので、それを一つの作品として板の上にあげるということしか考えていません。クライマックスには47人が舞台の上で芝居するわけですから、それには一人ひとりにドラマが必要ですので。」

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――― 47人の人間ドラマであり群像劇。一人ひとりに物語があるからこそ、脚本にも深みが増される。キャリアや年齢関係なく、一人の人間として舞台の上でぶつかり合う、そんな光景が目に浮かぶ。

高野「がむしゃらに自分の壁を破っていって、新しい自分を探したいなと思っています。みんなで作っていく作品にしていきたいです。」

馬場「みんなでやるというのはもちろんですし、その中で自分がどういう色を出せていけるかというのも考えつつ演じたいと思います。」

伊藤「他の共演者のみなさんのパワーに負けないエネルギーを出して、私なりの色を出せたら良いなと思います。」

渡辺「不思議なことに、この作品に出会えてから、色々素敵なご縁や機会をいただいたりしています。ある意味自分にとっても大きな転機となる作品との出会いだと思いますし、見てくださる方にとっても何かしら印象に残ったり、支えになったりするような作品になるよう、全力で役にぶつかっていきたいと思います。」

香川「全員一人も欠かさないで全員で作れるまとまった良い群像劇をができればと思います。」

石橋「実は、今回、金曜日のお昼のみ僕が出演することになりました。病気から復帰後、俳優の感覚というのを忘れたくなくて出演することにしました。周りの方々をどうやって困らせてやろうか考えています(笑)テレビ、映画、商業演劇といったところで、最近は見れなくなった古き良き懐かしき物語を47人の仲間と一緒に作り上げていこうと思っています。」


(取材・文:熊谷洋幸/撮影:安藤史紘)

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