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西田大輔

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代表作の再々演と新作のダブルス公演で自身のオリジナル性を世に問う

自分にしか作れないものは何か、そこをつきつめていきたい

劇団AND ENDLESSの主宰であり、殺陣やダンスを取り入れたダイナミックな作風で知られる作・演出家/俳優の西田大輔が、坂口安吾の『桜の森の満開の下』に3度目の挑戦。舞台上で読み上げられる原作と、聖徳太子をモチーフとした青年ウマヤドの物語が交錯する同作は、西田にとって「自分の方向性の1つになった作品」だという。さらに今回は、書き下ろし新作を同時上演する形の意欲的な取り組みとなる。2015年、強い意志の下にスタートを切る西田に話を聞いた。

PROFILE

西田大輔(にしだ・だいすけ)のプロフィール画像

● 西田大輔(にしだ・だいすけ)
1976年生まれ、東京都出身。1996年にAND ENDLESSを旗揚げ以来、全作品の作・演出を手がける。俳優としてもAND ENDLESSに限らず外部公演に多数出演。現在はアニメ・ドラマ脚本、漫画原作など、演劇界以外にも知名度を広げつつある。主な作品は、『RE-INCARNATION』シリーズ(作・演出)、『美しの水』(作・演出)、舞台『戦国BASARA』シリーズ(構成・演出・振付)、『銀河英雄伝説 第二章 自由惑星同盟篇』(演出)、LIVING ADV 『STEINS;GATE』(脚本・演出)など。

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ーーー西田にとって初めて原作を取り入れた舞台となった『桜の森の満開の下』は、2005年に初演、2009年に再演され大きな反響を得た。

「もともとシアターX(カイ)のプロデューサーの上田(美佐子)さんから、坂口安吾のものを作ってみないかと薦められたのがきっかけです。『桜の森の満開の下』と言えば野田秀樹さんの舞台が有名ですけど、そういう尊敬している先輩たちに対して、ひとつ下の世代であり、時代と共に感じるものも違う自分たちが、何かできないかと思い、原作に選びました。原作自体は15分くらいで読めるような短編で、登場人物も3人しか出てこないこの物語をどう捉えるか、その上で、坂口安吾は桜というものをどう捉えていたのか。それを僕なりに解釈して、人にとっての本当の恐怖っていうのは何なのかを考えた全く別の話になりました」

ーーーそれだけに、西田の思い入れも強い作品であるようだ。

「昨今、アニメやゲームを原作にした舞台がすごく流行っている中で、オリジナルであることの意味を打ち出したいという思いもあって、逆にこういうスタイルの原作ものというのは新しい切り口なのかなと。最初は、笑って泣けて感動するエンターテインメントみたいなものとは真逆の方向のお芝居を作ろうと思っていたので、それを観客がどう受け取るのかという不安はありましたけど、そこで思いもかけない新たな反応を受け取って、作り手として自分の中では欠かせない作品になりました」

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ーーー今回は新作を加えての再々演。そこに込められた意図は。

「今までいろいろな仕事をしてきた中で、2015年は、自分のオリジナル……つまり自分にしか作れないものって何だろうということをつきつめていきたいという思いがあります。それを一番に考えたとき、新年一発目にその指針を出すべきじゃないかと思ったんです。そこで、自分の方向性の1つの始まりになった作品と、今の自分が考えるオリジナルを作っていこうという意思、その2つを並べてみようということでの二本立てですね」

ーーー新作のタイトルは『仄々明晰夢』(ほのぼのめいせきむ)。夢をテーマにした不可思議な世界を描くという。

「明晰夢というのは、自分が今夢を見ているということを自覚しながら見る夢のこと。それをテーマにして、どこまでが夢でどこまでが夢じゃないかを行き来する男の物語を書こうと思っています。人間の心にとって痛いことを、これは夢だと割り切れるのか、もし割り切れなかった場合はどうするか。夢の中に生きるか、現実に生きるか……今話せるのはこのくらいですね(笑)」

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ーーーそこに秘められた「自分にしか作れないもの」とは。

「今は特に、みんなが心のどこかで“癒されたい”と思っていて、それが昔よりも世の中に溢れている時代。その中で、癒されるということに対するアンチテーゼを考えていて、それが僕自身の作風なのかなと、今は思っています。ソーシャルメディアなどで個人の思いを吐き出すことが簡単になっているからこそ、観客席と舞台がしっかり対峙して、えも言われぬ緊張感の中で、お互いに抱えているものをさらけ出す。そういう行為をあえてしていくことが、何か新しい作用を生むんじゃないかという思いがあります」

ーーー年末年始には、三国志をモチーフにした『RE-INCARNATION』のシリーズ3作目を上演して大盛況。そんなエンターテインメント性の強い一面を見ると、“アンチテーゼ”という言葉は意外に思える。

「そこは僕という人間の二面性なんだと思います。自分も間違いなく“癒されたい”と思っている人間の1人なので。舞台の面白いところのひとつは、ダイレクトに感動を受けること。それももちろん素晴らしいことなんでしょうけど、自分がそれだけを求める作り手であってはいけないという思いもあります。観客が家に帰って一人になって、舞台を思い出して何かを思う。それこそが表現者にとって一番幸せなことなんじゃないか、もしかしたら満場の拍手よりも尊いことなんじゃないかなと思うんです。だからやっぱり、そういう意味で攻撃的な作品を作っていきたいですね」

(取材・文・撮影:西本 勲)

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